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2007年10月21日
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アーニャ・ネカネ論・作品を崩壊させかねない危険なキャラと20巻における見事な扱い

Written By: 川俣 晶連絡先

 前から思っていた問題を、20巻では見事に処理していたので、その点について簡単に書いておきます。

ネギとクラスメートの関係 §

 クラスメートの少女達の複数がネギに好意を持っています。

 しかし、以下の2つの理由により、そのことが決定的な問題とはなっていません。

  • 複数の者達がネギを好きだという事実を相互に知っているため、誰も深入りできない
  • ネギ自身にまだ恋愛意識がない

 たいへん微妙な均衡状態が維持されていると言えます。

アーニャとネカネの特異性 §

 アーニャは幼なじみ、ネカネは姉というネギに対して特別な立場を持っています。それは、ネギに対して、いくらでも好きなだけ距離を短くできることを意味します。

 特に、姉弟という禁忌による制約を持たないアーニャにおいて、その傾向は顕著です。

均衡の崩壊 §

 この状況下で、ネギの世界にアーニャやネカネが入り込んでくることは、均衡の崩壊というリスクをもたらします。崩壊した均衡は、最終的にアーニャの心が傷つくという形でしか決着しようがないでしょう。アーニャは良い娘であるがゆえに、そのような結末は気持ちの良いものにはならないでしょう。

 それだけではなく、ネカネはクラスメートの中のお姉さんキャラ、アーニャは子供キャラと、キャラがかぶるリスクも持ちます。

 たとえキャラがかぶらなくても、ただでさえ人数が多すぎて把握しきれない女の子達の数が増えることになり、読者の意識が破綻しかねないリスクがあります。

崩壊の事例 §

 アニメの「ネギま!?」は、実際にアーニャとネカネを深くストーリーに関わらせてしまったために、作品世界が実質的に崩壊していたという感があります。つまり、これはアーニャとネカネの扱いに失敗した事例として評価するか、あるいは、作品世界を崩壊させるがゆえに(特にアーニャに対して)、崩壊をもたらす悪としての役割しか背負うことができなかった……と見ることができるような気がします。

20巻における崩壊の回避 §

 崩壊に対する懸念は、19巻の最後にアーニャが登場した時点で感じました。

 しかし、20巻を読み始めてすぐに、それが杞憂であることが分かりました。

 ここでアーニャは「パンツを見せながら全力で跳び蹴りする女の子」というキャラを与えられて登場します。

 これは、アーニャとネギの関係が、アーニャにとって深刻な心の問題ではなく、子供っぽい勝ち負けの問題であることを示します。(そのあとの背丈の問題も、同じ傾向を示唆します)

 つまり、これは恋愛というよりも、恋愛未満の恋愛ごっこに近い感覚と見ることができます。

 真剣に悩んでいるクラスメート達とは立場が違います。

 恋愛の担い手という立場を持たなくなったアーニャは、それとは別に、日本とイギリスをつなぐ「ブリッジ」という立場を与えられます。ネギ達と読者達は、イギリスの空気を盛大に引き連れてやって来たアーニャというキャラを通して、徐々にネギ達が向かうイギリスに馴染まされていきます。そして、イギリスに行くということが何を意味するのかを、アーニャは身体で示しています。

 更にもう1つ。アーニャとクラスメート達は、それぞれ自分が踏み込めない「敬意を払うべき領域」を互いに持つことを確認しています。アーニャにとってのそれは石にされた村人達であり、クラスメート達にとってのそれはエヴァによる修行によって得た力と絆です。

 これにより、アーニャとクラスメート達は、ライバルではあるが互いに敬意を払うべき良好な関係を築き上げることができたわけです。

 「恋愛未満」「別の役割」「敬意を払う良好な関係」という条件を積み重ねることで、崩壊は綺麗に回避されています。

 ちなみに、ネカネに関してはストーリーの前面に一切出てこないという形で崩壊を回避しています。

 実に見事な作品構成です。

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