ヤマトIIIで、ヤマトと同時に第2の地球探しに出て行く艦の名前はアリゾナ、プリンス・オブ・ウェールズ、ビスマルク、ノーウィック。このうち、アリゾナ、プリンス・オブ・ウェールズは日本海軍に沈められた戦艦の名前。ノーウィックは日本で引き上げて使用した巡洋艦。同盟国だったドイツ艦のビスマルクだけは例外となりますが、後は「日本にやれた艦の名前ばかり」ということで、国家の威信をかけて出て行くフネではないな、と当時思いました。まるで「日本えらい! 外国は日本の引き立て役」と言っているようです。
しかし、今になってあらためて考えて見ると解釈が変わりました。そのあとでヤマト以外の探査船はやられているらしい、という設定と合わせて考えるとどうも違うのではないかと思えてきました。
つまり、「最初からやられるために出て行くフネ」であれば、国家の威信を背負ったフネよりも、無様にやられた実績のある名前をもらって出て行く方が、よほど他国人の心情を傷つけないのではないか……と思えてきたわけです。(名前を出した時点で悪感情を呼び起こすという可能性は横に置くとして)
そもそも、日本人が知っている確率の高い名前でもあるし。
とすれば、それらのフネにとっての日本の役割はボラー連邦が担うことになります。ここで日本にとってのボラーと他国から見たボラーの位置づけが違うという捻れが生じています。
更に言えば、実は「ビスマルク」だけ位置づけが違うというのも興味深いところです。ナチスは「国際的に悪」であり、ドイツ海軍の名誉も背負う「ビスマルク」はやられ役に担ぎ出しても良い名前なのかも。
また、ノーウィックだけ戦艦ではないのは、ソ連を入れたいがもともと陸軍国でメジャーな戦艦も少ないと言う苦悩が見えるようです。
更に言えば、第1シリーズ冒頭でこそ世界が分かれている描写はあれど、さらばや永遠にでは地球は1つです。それを今更IIIで世界各国の戦艦が出てくるのは不自然であり、イマイチな箇所だと思っていました。
しかし、むしろそこがヤマトIIIのヤマトIIIらしさを示しているのかも知れません。
つまり、複数勢力があり、敵と味方も明確ではなく、いろいろな相手と交渉しなければならない世界観と一致します。さらば~2が武断的な統一復興だとすれば、永遠に以降のIIIでの復興は地方分権的な復興だったのかも。さらばの地球艦隊や永遠にの無人艦隊が地球統一規格で負けたのなら、各国が独自色を出して戦艦を造った方がいいという発想にもなるのかも?
オマケ §
「実は今回は没原稿が山ほどあるぞ」
「どうして?」
「やはり、いろいろあるからな」
「いろいろね」
「よく、好き放題相手の気持ちを考えずに書いていると誤解されるがそうではないぞ。やはりネタは検討した上で、取捨選択しているのだ。好き放題にはほど遠い」
「そりゃそうだね。ところで没ネタの1つぐらいは教えてよ」
「しょうがないなあ」
「なになに?」
「ビスマルクよりビスマルクの舵を破壊したソードフィッシュが好き」
「皮肉屋め」