ずっと以前に「斎藤にしても本当に味方だったのか、本当は古代とヤマトの監視役だったのではないか、という解釈もできる」と書いたわけですが。
そこではたと思いました。
実は斎藤の立場はミルと同じです。
実は白色彗星内に不信の火種があって監視者が出るのと同じように、地球側にも不信の火種があって監視者が出ると考えるなら。
もはや単純な善悪論が成立しません。
両勢力内に保守派と革新派があって、勢力は計4つ。
従って、以下の同じ構造が平行して出現します。
- 首謀者藤堂→仲介者佐渡→監視者斎藤→被監視者古代→監視者斎藤死亡
- 首謀者ズォーダー→仲介者サーベラー→監視者ミル→被監視者デスラー→監視者ミル死亡
ところが、両者は同じ経路を辿りません。
- ミルは被監視者に殺される
- 斎藤は被監視者を生かすために敵に殺される
実はこの相違点にこそ、言いたいことが込められているのかもしれません。
残忍で好戦的な敵よりも友愛の地球こそ優れている?
そうではありません。
実は監視者は最後まで忠実であるという特徴を共有します。ミルもそうですが、斎藤も最後まで秘密を知っている紹介者の佐渡のためにカクテルを作ります。
しかし、斎藤が奉仕する佐渡が現実の存在であるのに対して、ミルが忠誠を尽くすズォーダーは実在しません。本物のズォーダーはデスラーの監視を望んでおらず、それを望んだのはサーベラーでしかありません。
そこで、デスラーはズォーダーの意図通りの戦いを行おうとしているのに、大帝の意思に反しているという糾弾を受けねばなりません。このディスコミュニケーションのタイムロスが敗北の要因であり、弱点です。
一方で古代は、斎藤から糾弾されることはありません。実は斎藤はテレザートで「宇宙の愛」についての話を一緒に聞いたことにより、古代の意図を正確に把握しています。つまり、藤堂が持っている計画の範疇から古代がずれていないことを正しく把握しているため、ミルのような糾弾は不要であり、それどころか仲介者佐渡が死ぬと、自発的に古代の協力者になってしまい、都市帝国への同行を申し入れます。
つまり、他人を理解できるかの差がここにあると言えるでしょう。
そして、最終的に古代とデスラーは相互理解に達して、デスラーが古代を支援する形になります。
「おまえの恋人か、許せ、古代」
この場面にもはや斎藤が立ち会う必要はありません。既に理解しているからです。逆にミルは無理解者として殺される必要があります。