「さて、世の中にはFirefoxというブラウザがある」
「あのウザいやつね。迷惑なんだ。対応するプラットフォームが増えるとテストの工数と予算が増えるけど、ぎりぎりの予算で勝負を掛けたい弱小にそれだけの予算や時間のゆとりがあるわけない。かといって、増えた分のコストを推進派が自分たちで出すという発想もない。金は出さないが対応しろって言われてできるか!」
「まあまあ。御怒りはごもっともで。でも、ここでの話題は違うんだ」
「しょうながい。赤い眼鏡を青に掛け直そう」
「おお、王蟲の攻撃色が消えていく!」
「それで?」
「ヤマトファンがFirefoxを使いたくなくなる理由についてだ」
「そんな理由があるのかい?」
「ある。ともかく、Firefoxを開いてアドレスバーに about:robotsと入力すると分かる」
「何かロボットが出てきたね」
- ニンゲンノミナサン、ヨウコソ!
- ロボットは人間の友達です!
- ロボットは良心回路を持っているので、人間に危害を与えません。
- ロボットは航空力学を無視して空を飛べます。
- ロボットは持ち主の脳波レベルを測定できます。
- ロボットとアンドロイドは違う、と主張しているロボットもいます。
「で、何が問題なんだい?」
「アナライザーだ」
「へ?」
「いいかい。アナライザーは人間である森雪のスカートをめくって、性的な危害を与えているんだ」
「うんそうだね」
「だからこれは、ある意味でアナライザー否定だ」
「そうか。なるほど、これはヤマトファンには面白くない」
「ネタがヤマトではなくカールビンソンだしね」
「そもそも、人間の友達ってなに? 良心回路って何? ライダーWみたいに左右別の色になれってこと?」
「話が見えないよね」
「見える、ゴーゴー!と言わせろ!」
「それはそれでネタが分かりにくいよ」
「太陽電池も関係ないし、話を戻そうか」
「無理があるよね。全ての人間に友達と思って貰うなんて無理だし」
「矛盾した要求が突きつけられたらどうするのかね」
「行動できなくなってフリーズかね」
「良心回路だって問題ありだ。見て見ぬふりも良心が咎めるが、手を出すことも良心が咎める時はどうするのだ?」
「さあ大変だ」
「そういう意味で、アナライザーはそういった空虚な理想のしがらみから最初から解放されているという意味で価値があると思うね」
「というわけで、本当はここからが本題なんだね」
アナライザー論 §
「アナライザーはロボットに投影された登場人物でしかなく、シナリオ上の存在意義は人間と変わらない……と思えば、むしろロボットへの無理解が人間くさいアナライザーに結実したようにも思えるけど、本当にそうだろうか?」
「SF的なガジェットを積極的に使っていこうと言う作品で、ロボットだけ手ぬるいとも思えないね」
「だから、もっと意図的に描かれているのではないかと思うのだよ。つまり、ロボット三原則とか言わないことも意図的ではないかと」
「酒を飲んでスカートめくって人間を模倣しても人間になれない苦悩という感じかな」
「だから、アナライザーの物語はビーメラ星で終わってしまうのだ。そこで、人間と並ぶ存在という幻想が破壊されてしまう」
「そうだね」
「しかし、あるとき気付いたのだ」
「何を?」
「ヤマト2になると、アナライザーはむしろ浮ついたムードメーカーなのだ。スカートもめくらないで」
「うん」
「かつては、それを物足りないと思ったのだが、実はそうではないと気付いた」
「ほう? それはどういうことだい?」
「艦内の緊張をほぐすために、ムードメーカーという役割を自ら自発的に演じているのではないかと」
「どういう意味?」
「実は機能としてのアナライザーの能力は、ヤマトに不可欠というわけはないし、人格としても必ずしも必要とされていないわけだ」
「それで?」
「そういうアナライザーが居場所を見つけるにはどうしたらいいと思う?」
「なるほど。それがムードメーカーなのだね」
「そうだ。彼は、人間のふりをすることの愚を学び、そしてもっと価値のある存在になろうとした」
「なるほど。軽く浮ついているように見えるのは実は演技だと」
「反乱して飛び出したヤマトは暗くなりがちだから、長い航海の志気を維持するにはムードメーカーが不可欠ではあるが、それに気付いてその役目を買って出たのがアナライザーであると」
「たぶん、アナライザーが大人になるとは、そういうことじゃないかと思うよ」
「そうか」
「そう思って見るとさ。実はヤマト2って奥が深いかもしれないよ。新米だって故郷に帰れば神童と煽てられるほど優秀かもしれないけど、真田さんの前では霞んでしまうだけかも。だから、ギャグ担当になってしまうだけで、本当は心の中で泣いているのかも」
「そうだね。ヤマトに乗れるというだけで、平凡ではない何かを発揮できた筈だものね」
「ははは。あのあと婿養子に入りまして、今は古株という姓です。とか言いながらまた出てきてくれるといいね」
「おーい、フルカブ!」
「僕はコカブです!」
「でも、ヤマト2で戦死しちゃったから無理」
「じゃあ、新米の弟ということで」
「弟ならまた新米でも構わないな」
「新米四郎です!」
「新米の弟か! でも、シロウでは上司の真田さんと名前がかぶってしまうぞ」
「そこが部署が違う加藤と違って痛いところだね」
「って、加藤の四郎か!」
「弟は四郎だろう。長男なら太助で、娘ならみで始まる名前。澪とか美雪とか」」
「しかし、真田さんも地球で見守ってくれる役目になったし、青い制服の副長もシナノで突っ込んでしまったし、やはり登場して欲しいよな。青い制服の後継者が」
病院ごとき場所、私の能力発揮できない、と言ったアナライザーが復活編では病院にいるのはなぜか? §
「というわけで、佐渡の助手をやりながら酒の相手もして古代と雪の娘も見守ることが、自分の仕事だと気付いたんだろう」
「別に大気や海の分析はアナライザーでなくても解析装置があれば済むことだしね。彼が必須というわけでもない」
「しかし、佐渡の助手ができるロボはそうそういない。人間でもね」
「あの先生、ロボにまで酒を飲ませようとするしね」
「ガ○ダムでも無理。酒を飲めないから」
「やはりアナライザーは凄い」
「酒の相手をしてスカートもめくってくれるアナライザーこそ最強だ。別の意味でね」
「そ、そうかも」
「だから、病院ごとき場所、私の能力発揮できない、という言葉からスタートしてヤマトに乗り込んでいるけど、結果的に発見した居場所は病院ごとき場所になってしまうわけだね」
「幸せの青い鳥は最初から手の中にあったの?」
「いや。僕は優秀だという幻想がある限り、病院は安住の地ではなかっただろう」
「つまり、ヤマトの航海でその幻想が取り除かれて、病院が安住の地であることが明らかになった」
「それも、佐渡の病院がね」