2010年05月10日
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海派と山派の腸捻転現象とハイジとヤマト

Written By: トーノZERO連絡先

「ははあ。だんだん分かってきたぞ」

「なにが?」

「1974年10月の19:30は、新興勢力によるイノベーションの季節だったのだ」

「どういうこと?」

「一時期流行ったスポ根は、侍ジャイアンツのイマイチな成果と、現実の長島の引退で収束したわけだ」

「うん」

「それで、スポ根路線をけ落として後番組に座ったのがヤマト。やはりスポ根路線と一線を画して別の世界で勝負に出たのがハイジ」

「なるほど」

「そして、ヤマトが海派で、ハイジが山派の作品となる」

「宇宙の海とアルムの山だね」

「そうだ」

「更に、この2大派閥の間で行き場を失って損をしたのが猿の軍団」

「間が悪かったとしか言えないね」

「そして、海派のヤマトも、山派のハイジも、大物の若い才能をフィーチャーして挑んだわけだ」

「誰?」

「つまり、松本零士と宮崎駿だ」

「なるほど。まだ無名だった2人だね」

「ところが、ここで妙な屈折が起こる」

「というと?」

「実は、海派のヤマトを支えた松本零士は山派であり、山派のハイジを支えた宮崎駿は海派ではないかと思える」

「ええ!?」

「従って、どちらも蜜月は長く続かず、ヤマトを離れた松本零士はスタンレー山脈越えという陸の話を映画にして、ハイジの後継となるアンを離れた宮崎駿は海の冒険となる未来少年コナンをやることになる」

「なるほど」

「ここに、単純に割り切れない屈折の宝庫がこの僅かな期間に凝縮して見られることになる」

「とんでもない複雑な話だね」

「そういうことになる」

「ならば、こういう腸捻転が起きなかった方が良かったのかな?」

「そうとも言えない。今のヤマトは、その腸捻転の中で生まれたものだからだ。可能性としてあり得た他のヤマトはともかく、今のヤマトはそうだ」

オマケ §

「ははぁ。分かってきたぞ」

「なんだい?」

「松本作品が超えるのは山脈。でも、宮崎作品が超えるのは海峡なんだ」

「スタンレー山脈かドーバーの白い崖かってことだね」

「同じように飛行機に乗っていてもまるで違うわけだ」

「従って、海のモチーフはヤマトからは排斥されていくと言えるのかも知れないね。海らしいエピソードといえば、おそらくオクトパス星団の海峡待ちぐらいまでで、もはや海は主要なモチーフではなくなっていく」

「ビーメラ星にもバラン星にも海は出てこない」

「冥王星のように海に潜る展開はもう無い」

「バラン星の海から戦車隊で上陸するひおあきら版的展開ももうない」

「更に進むと……」

「七色星団も、もはや星団であって、星も水も意識しにくくなってくる」

「やっとたどり着いても地下空洞」

「やっと海に浮かんだと思ったら濃硫酸の海でフェイクの海だ」

「そういう恨みを晴らすように、イスカンダルは海の惑星だ。大陸も崩壊して沈んでいく」

「従って、ヤマトは帰らねばならない。海派なら海さえあれば留まれたかも知れないが、山派の監督としてはヤマトを地球に返すしかない」

「それを言ったら海が干上がった赤い地球とは、ある種の山派のパラダイス?」

「そういう意味で、一切の海が排斥されているのが『永遠に』だ。逆に、海が濃厚に感じられるのが『新たなる旅立ち』と『完結編』だ」

「海派と山派の綱引きが見えるようだ」

「ただし、日本アルプスというれっきとした山から発進しているのに、ヤマトIIIは海派に思えるところが屈折しているね」

「しかし、復活編になると水の惑星アマールが移住先になる。厳密には衛星らしいが」

「つまり、海派の監督なら移住先が水だらけでも良いわけだ」

「地球が滅んでも移住できる」

オマケ2 §

「なんか分かってきたぞ」

「何が?」

「松本零士のロマンは劇場版千年女王で関東平野を浮上させるが、これは平野ごと宇宙に持っていく山派の発想なんだ」

「それで?」

「そこから発進するのは零戦52型とP-38だ」

「ワルサー?」

「ライトニングだ。つまりだね。山本長官機を撃墜したP-38とは、大型の陸上機だ。だから浮上した関東平野は、不沈空母ではなく、空飛ぶ陸地なんだ」

「陸地だから、陸上機も発進できると」

「コミック版でスタンレー山脈を越えた陸上攻撃機も海軍所属であるが陸上機だ」

「ということは?」

「松本零士は零戦52型が陸上で運用されることを想定している可能性がある」

「なら、宇宙零戦52型も?」

「空母艦載機ではなく、母機から発進する子機のような感覚なのかもしれない」

「ああそうか。太平洋戦争をモチーフに考えれば、戦闘機、爆撃機、攻撃機の混在が想定されて、実際のドメル艦隊はその3機種があるわけだけど……」

「そうだ。子機だと思えば、必要な時に母機から離れる戦闘機だけで良い」

「だから、不必要に艦載機が万能になりすぎる」

「ガミラスの艦隊を簡単に撃破してしまうブラックタイガーとかね」

「とすると、復活編は……」

「現代的な思想が入ってフレームは1機種だが、戦闘機も攻撃機も搭載していて、宇宙零戦も21型で折りたたみ機構もあってヤマトが空母的になっている」

「そうか。それが見たかったヤマトということか」

「うん。そうだ。それが見たかったヤマトだが、かといって昔のヤマトが見たくなかったヤマトというわけでもない」

「屈折してるね」

「そうさ。この屈折がヤマトだ」

オマケIII §

「更に分かってきたぞ」

「何が?」

「艦載機格納庫が小林さんお勧めの見所になる理由さ」

「なぜ?」

「たぶん松本ヤマトの弱点がそこだからだ」

「どういうこと?」

「海派なら、空母の格納庫は特に熱心にデザインすべきポイントだ。エレベーターで上がってくる搭載機も見せ場の1つだ。何層にしてどういうレイアウトにしてどう機体を収納し、エレベーターを何基どこに付けるかがどうしても気になる」

「うん」

「でも、陸派ならそこは見せ場ではない。陸上航空基地なら、滑走路の周辺にいくらでも航空機を偽装して隠せる場所があるし、そこから引っ張り出して滑走させるのはそれほどの見せ場でもないよ。見せ場は上空で集結して大編隊を組んでいくところだろう。でなければエンジンをまわすところだ。まわせ、まわせっ!」

「ということは?」

「格納庫の設定はもともと甘かった可能性があり得るわけだ」

「でも別にいいじゃん。どのみち最初から矛盾の多い設定だし」

「ダメだよ。曖昧では3Dの映像にならない。モデリングする人が困っちゃう」

「なるほど」

「実際、テレビ第1シリーズでも甘いような気がするよ。波動エンジンの描写に比べてやはり格納庫はね。密度が低い気がする」

「そうだね。始動にいちいち長い手順のあるエンジンと違って、ブラックタイガーの出撃はあっさりしている」

「エレベーターで下がったりするシーンも無いわけではないのだが、かなりあっさりしている」

「第3話の艦内図でも、艦首や第2副砲の下に何か機体が格納されているように見えるけど、艦首や副砲の下から何かが発進した描写も無いし」

「古代らのお出かけはカタパルト経由か、艦底のハッチが多いよね」

「そうさ。ゆけゆけ古代、みなしご古代」

「それはみつばちハッチ」

「いや、古代もみなしごだし、嘘は言ってないよな」

「で、空想上の宮崎版ヤマトだと?」

「艦底のハッチじゃなくて、片目のパッチが沈んだ大和を引き上げてくれるさ」

「で、グッチ裕三といったら?」

「艦底のハッチじゃなくて、ハッチポッチステーション」

「いい加減にしなさい」

オマケ復活編 §

「この原稿も書いてから時間がかなりたっているのだが、公開前にはたと気づいた」

「何が?」

「宮崎駿の仕事はハイジから母をたずねて三千里に行きアンで降板する。そして、海のアニメであるコナンに取りかかる」

「うん」

「なぜハイジの後、かなりの時間、独自行動を取らなかったのだろう? アンまで降板しなかったのはなぜだろう?」

「というと?」

「実は、母をたずねて三千里の序盤は海の作品なんだ。港町ジェノバと航海の話なんだ」

「ええっ? じゃあ海派でもいいわけじゃん」

「うん、だからこれは一種の才能の引き留め工作だったのかもしれない」

「でも、そんな話をしてヤマトの感想と何の関係があるの?」

「ヤマト2だ」

「え?」

「つまり、ヤマト側でも松本零士に配慮したヤマト2をやって才能を引き留めようとしたのではないか、という気がする」

「なるほど。そこでもまた、両者に似たような構造が見られるわけだね」

「結果として、三千里の後半は海と縁が切れ、アンも海と縁がなく、ヤマトは新たなる旅立ちでまた海の話になってしまい、やはり引き留め工作に失敗してしまうのかもしれない」

「難しいね」

「まあ、全ては思いつきの仮説だ。信じてはいかんぞ」

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