「というわけで、ハッチだ」
「今更、夏に映画になるらしい」
「ヤマトだって今更復活したんだし」
「まあな。他人のことは言えない」
「ところで、ヤマトに出てくるぞ。しかも、松本先生らしく、グレートに大が付いて大ハッチだ。大地球とか大四畳半のように大が付く」
「まさか」
「オレの記憶は当てにならないが、確かに出てくる」
「あ、もしかして松本先生はマーヤにご執心だったらしいから、実はマーヤとか?」
「いや、ハッチ」
「ビーメラ星で雪を襲っている現地人の中にさりげなくいるとか?」
「いや、ビーメラ星ではないし、作画のお遊びではなく台詞にもちゃんと出てくる」
「どこだか教えてくれよ」
「いいぜ」
「ドメルのフネは自爆するつもりだ。艦底部の乗組員は上部に避難せよ。急げ!」
「上下隔壁、第6、第7、大ハッチ閉鎖。対放射線防御壁注水!」
どかーん
「うわっーっ」
「それ、大ハッチやのうて第8や!」
余談 §
「でもさ。今になってやっと分かってきたよ」
「何が?」
「松本先生は本でみつばちマーヤの冒険をアニメーションにしたいということを言っていたように思うが、そういう願望が屈折した形で表出したのがビーメラ星なんだ」
「そうか。異星人がみつばち型の女王社会でローヤルゼリーをガミラスに上納しちゃうわけだ」
「それに、この構造は人間とみつばちにも当てはまる」
「というと?」
「働き蜂がせっせと集めた蜂蜜を、巣箱を所有する人間が持っていってしまうだろう?」
「なるほど」
「森雪が、私たちだって野菜泥棒じゃない、って叫ぶのはみつばちを前にしたら地球人もガミラス人も無く、どちらも人間側だってことだ」
「ガミラス人はむしろ被害者」
「現地人を武力で制圧するのはヤマト側だ」
「結果的にガミラスの占領政策の失敗の尻ぬぐいをヤマトがやっているようなものだ」
「でも、どうして今頃そんなことを思うの?」
「そりゃ、アナライザー最大の見せ場ということで、それに目を奪われていたからさ」
余談2 §
「さて問題は第8の発音だ」
「うん」
「実はずっと大ハッチだと思っていた。結局、DVDの音声を何回も聞いてそれでも決着せず『宇宙戦艦ヤマト全記録集 TVシナリオ版』の現物を入手して、やっと確定できた。第8だ」
「どうしてそこまで悩んだの?」
「声優の発音に少しなまりがあったからだ」
「もっと詳しく説明してくれよ」
「いいか。ここの台詞は『第6、第7、第8閉鎖』だ」
「うん」
「しかし、発音をひらがなで表記すると以下のように聞こえる」
「だいろっく、だいなな、だいはっちへいさ」
「なるほど。6と8の発音がはねているね」
「そこで、第6ではなく第6区だと誤解した。これが誤解の始点だ」
「うん」
「そこで、音質の悪いラジカセで音質の悪いTVからの録音を聞いて、第7も同じように区が付いていると思いこんだ」
「なるほど。第6区、第7区と。6に区が付いているから7にも付いているはずだと」
「しかし、第8区はあり得ない。『はっち』という音が聞こえたからだ。しかも、ここは丸いハッチが閉じる映像が付いている」
「まとめると、すべて合わせて第6区、第7区、大ハッチ閉鎖と聞こえるわけだね」
「うん、そういうことになる。しかし、DVDの音声を聞くと第7に区は付いていない」
「しかし、第6にも第8にも付いてないよね?」
「だから、ここでなまりの問題が出てくる。『ろっく』は『ろく』であり、『はっち』は『はち』であるという解釈が付いて、初めて決着できる」
「そのための証拠はもはやDVDの音声では不十分ということだね」
「うん。だから、わらをもすがる思いでシナリオにまで手を出したけど、当たりだったわけだ」
「良かったね」
「本当に良かった。すばらしい史料だよ、これは。これ1冊でヤマト研究が増進するぞ」
「年上のヤマトファンなら持っていて当然の本だろうけどね。何を今更と思っているに違いない」
「世の中、まあそんなもんだ」