「さらば宇宙戦艦ヤマトのマルチ隊形の話は前に書いたことがあるけどさ」
「うん」
「あの隊形はおそらく意味がない。というか、あれだけの軍艦を並べる必要性はなかったはずだ」
「波動砲1発で彗星ぐらい吹き飛ばせるはずだったものね」
「結果として効果がなかったのは、あれがズォーダーの兵器であり、防御力も高かったからだ」
「それは予想されていなかったことだね」
「そうだ。予測されていないからこそ、あれだけの兵器を並べる必要は無かったはずなのだ」
「じゃあ、なぜ並べたのだろう?」
「実は復興した地球の実力を示すデモンストレーションではなかったか、という気がしてきた」
海軍力の誇示方法 §
「海軍力を誇示するには、観艦式という方法がある」
「ガンダム0○83に出てくるアレだね。ガ○ダム2号機の核の一発で集まった艦隊が大損害」
「でもさ。あれはよく考えると変なんだ」
「変?」
「観艦式というのは、イギリスでは王様、日本では天皇が見るものだったのだよ」
「そうか。艦を観る式典だから観艦式」
「国民主権の時代には国民に見せるもの、という発想に変わるのかもしれないが、軍人しか見てない式典にさしたるアピール力はない」
「なるほど」
「そこでマルチ隊形だ」
「ええっ? そこにつながるの?」
「白色彗星戦役の開始で、地球の民衆はみんなテレビを見ていた」
「そうか、艦隊の力をアピールする好機だね。でも、あれほど並べる意味はあったのかな?」
「復興期に金がないのに全世界で波動砲装備の戦艦だけでも数十隻を作る正当性を示すためだろう」
「そうか、税金はきちんと価値のある使われ方をしていますよ、とアピールする必要があったのか」
「だから、過剰に多すぎる艦を並べて撃つ必要があったのだ」
「まさに平和ぼけの作戦だね」
「敵を知らず、己を知らず、一戦すら危ういわけだ」