あるところに、合理的に何でも考える合理国と、怠惰な怠惰国がありました。どちらも、辺境の小国だったので、領土的な野心の対象にもならず、しばらくは平穏に暮らしていました。
しかし、周辺の主要国家を全て飲み込んだ超大国が領土的な野心を合理国に向けるようになると、話が変わりました。
合理国は合理的に判断し、戦っても勝てないと思うと敗北を宣言し、賠償金を払って併合されました。しかし、誰も死なないで済んだので、これが合理的な解決だと思いました。
一方の怠惰国は徹底抗戦を決めたものの、兵士がみんな怠惰だったので、ろくに戦いも起こらず、そのまま超大国に占領されました。資産もないので、賠償金も取られず、ただ占領されました。
元合理国の人々は、超大国に税金を払って生活を続けました。無駄な抵抗をしないで良かったと彼らは思いました。
元怠惰国の人々は、怠惰だったので、超大国の国民になると生活保護を受けてお金をもらいました。彼らは情けないことだと思いましたが、怠惰なので改善もできません。
ある日、超大国のジャーナリストが2国のあった地域を訪れました。
そして、感嘆の声を上げました。
「合理国の人は金を払って不自由を手に入れたが、怠惰国は不自由と引き替えにお金をもらってるじゃないか! どっちが合理的な判断なんだ!?」
(遠野秋彦・作 ©2010 TOHNO, Akihiko)