「偶然というのはあるものだねえ」
「何があったの?」
「今日は映画館に行ったのだが、その際、移動中に読もうと思って日経サイエンス2011年2月号を鞄に入れていたのだ」
「それで?」
「でも、新クロサギの新刊を買ってしまったので、そっちを読んでいた」
「だからそれがどうしたの?」
「で、映画館で『塔の上のラプンツェル』の予告を見た。なかなか面白そうじゃないかと思った」
「だからそれがどうしたの」
「家に戻って、日経サイエンス2011年2月号を見るとだな。『塔の上のラプンツェル』が載っていた」
「ええっ? エンターテイメント雑誌じゃなくて科学雑誌でしょ?」
「3DCGの髪の毛と衣服の物理シミュレーションの話が短い記事になっていた。p28だ」
「なるほど。確かに科学雑誌の切り口だ」
「鞄の中に短いとはいえ、写真入りの記事が載った雑誌を入れたまま予告を見るとは驚くべき偶然だ。しかも何ら予測できていなかった」
「なるほど」
「でも、まだ甘かった」
「まだ他に何か載ってたの?」
「ヤマトだ」
「ええっ!? やはり物理シミュレーションの話?」
「いいや」
「いったいなぜ?」
「Front Runnerのページ。p12だ。探査機の『はやぶさ』の関係者である宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所准教授山田哲哉先生の話が載っているのだが」
「それがどうした? ヤマト関係無いだろ? その先生がヤマトの監修したとかいう話も無いだろう?」
「そうじゃない」
「ええっ?」
「小学生の時に見たテレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト』に熱中したのが、宇宙に行けるシステムを作りたいと思った切っ掛けだと書いてある」
「なんと」
「びっくりしたねえ、これはどうも」
「こんなところにもヤマトは影響を及ぼしているのだね」
「それより、日経サイエンスに『宇宙戦艦ヤマト』の文字を見たことに驚いた」
オマケ §
「日経サイエンスなんて読んでるんだ」
「定期購読している」
「なぜ?」
「世の中の動きに遅れたくはないからな。だから意味が分からなくてもヘッドラインぐらいは見ておきたいと思っている」
「それだけ?」
「強いて言うなら、本当にぶっ飛んだ非常識な世界はここにあると思う」
「ええっ? トンデモ記事がそんなに多いの?」
「そうじゃない。トンデモなんて可愛いものだという意味だ」
「どういうこと?」
「トンデモっていうのは、実はバリエーションが限定的なんだ。UFOとかUMAとか霊魂とか幻の古代大陸とか無限エネルギーとかアインシュタインは間違っていたとか、まずほとんどがリピートされているに過ぎない。おそらく簡単にカタログ化できる。その範疇に収まらない項目は滅多に出てこない」
「そうか」
「ところが、日経サイエンスのような最先端の科学雑誌になると、全く予想外の話が次々出てくる。団体さんでやってくる」
「本当に?」
「たとえば2月号の見出しから拾ってみようか?」
「確かに、普通のトンデモ本では出てこないような話だ」
オマケ強酸 §
「ということで終わるはずであった」
「まさか……。そんな偶然が何回もあるわけ無いだろ」
- リン採掘が生んだ強酸の湖 地を削って国を肥やす フロリダに見るその代償 (p86)
「強酸のって、地を削るって、ガミラスですか」
「ph3の濃硫酸どころではない。phは1から2だそうだ」
「ひ~」
「しかも、緑色っぽい綺麗な写真だ」
「なんとリアル・ガミラス」
「フロリダ州に本当にあるそうだ」