「以下の『ちょっと前』というのはかなり前だ」
「書いてからのタイムラグが長いってことだね」
「あたり前だのクラッカー」
本題 §
「ちょっと前にこんなことを書いたわけだが」
「うん」
「ではアニメブームは?」
「一過性の流行。社会の気の迷いと感じられる」
「そうか」
「だからおいらは常に『ブーム終焉の時』が来ることを信じて疑わなかった」
「それは当たり前に思えるけど?」
「そうじゃない。もっと若い世代はアニメが滅びる日など考えたことも無い」
「アニメを信用しないという価値観を提示した時点で、実は決定的に違う2つの方法論を分ける分水嶺になると気付いた」
「えっ?」
「以下に簡単に分類を示す」
- アニメ以外の価値を導入し、アニメからの突破を指向する
- アニメの価値に特化し、アニメごとの突破を指向する
「なんか分かりにくいな」
「じゃあ、もっとざっくばらんに言おうか」
- オレの作品は素晴らしいと言わせたい
- アニメは素晴らしいと言わせたい (アニメの担い手のオレも素晴らしいと認められる)
「ざっくばらんすぎるぞ」
「しかし、このように分類すると見えてくるものがある」
「なに?」
「ヤマトも宮崎駿も押井守も、同じ側に立つということだ」
「どうして?」
「たとえばヤマトはアニソン歌手が主題歌を歌わない。宮崎駿は、あくまで映画をアニメという手法で作っているだけで、あるべきアニメよりもあるべき映画であろうとする。押井守に至っては、アニメでは無い映画もバシバシ撮る」
「うーむ」
「だからさ。アニメが素晴らしいものであると社会に承認されることを通して、アニメを見ている僕も承認されたい人たちから見て、アニメの価値観を承認しない彼らはあるべき秩序を犯した犯罪者となり、徹底的なバッシングを行うことになる」
「宮崎駿は裏切り者ってのは、けっこう見る表現だよね」
「でも。実際は方法論の全く違う者達に、やるはずのない行為を期待して裏切られただけなんだ」
「期待することがそもそも違うってことだね」
「そうだ。ヤマトにせよ宮崎駿にせよ押井守にせよ、秩序をぶっこわしてスカッとさせて欲しいと思うわけだが、彼らは逆に自分たちに都合のいい秩序を作って欲しいと願うわけだ。でも、そんな秩序は作り手には何の意味も無いから作るはずも無い」
「ははは」
「だから、社会的な評価は高いのにオタク的な評価は徹底的に落ちる」
「でも、評価を落としたところで問題は解決しないよ」
「その通りだ。依然としてオタクを褒め称えるオタク向けアニメよりも、宮崎アニメの方が客を呼べたりする」
「じゃあ、問題の本質はどこにあるんだい?」
「ヤマト的な解釈をするなら、何もせずに俺たちを褒め称えてくれと願うようなご都合主義的なあまっちょろいガキどもは、遠洋航海の練習船にまとめてぶち込んで、鍛え直してやれって感覚だろうな」
「わははは」
「それで、ぶち込まれる側から好意的に見てもらえるわけがない。でも本当に鍛え直されたら感想が変わるかも知れない」
「そうか」
「そうそう。昔、ダーティーペアFにいい話があったよ。あまっちょろいガキが、あまっちょろいガキを部下として任せられると、部下のあまっちょとさにぶち切れる。でも、周囲のひそひそ声でいかに過去の自分もあまっちょろかったのか自覚させされる」
「そうか。だからヤマトとか宮崎アニメの方が対象年齢層が高いってことだね」
「おそらくな」
オマケ §
「その通りだ。依然としてオタクを褒め称えるオタク向けアニメよりも、宮崎アニメの方が客を呼べたりする」
「それで?」
「そう言ったのは遠い昔」
「今なら?」
「今ならこう言う。依然としてオタクを褒め称えるオタク向けアニメよりも、SPACE BATTLESHIP ヤマトの方が客を呼べたりする」
「復活編はあまり客を呼べてないみたいだけど」
「広報不足で潜在顧客の多くが上映を知らなかったらしい。だからDVDが売れているという話もある」
「なるほど」
「それに、いくら復活編に客が入っていないと言っても、全国規模で大々的にロードショーをやった映画だ。全国数館でアリバイ的に僅かに上映しただけの映画とは全く基準が違う」
オマケ2 §
「もっとも、『全国数館で僅かに上映しただけの映画』に興味が無いわけではない」
「萌えに興味があるとは思えないが」
「当たり前だのクラッカー」
「じゃあ何?」
「昔見たシティーハンターの最初の劇場版もそんな感じだったし、そもそも芸術映画の多くはそんなものだろう」
「そういえば、シティーハンターの最初の劇場版はわざわざ池袋の小劇場まで見に行ったと言っていたね」
「でも、芸術映画という意味では下高井戸シネマという地元の映画館のウェイトが大きい」
「あ、それも気になるわけだ」
「下高井戸駅で乗り降りすればイヤでも目に付くからね」
「そりゃそうだ」
「あと、下高井戸シネマで何を上映するか、というのも気になる」
「なぜ?」
「ここで上映されるとやはり『異質の証明』になるからだ」
「そうなの?」
「普通の映画はほとんどやらないからね」
「ドラえもん映画とかやってたというじゃないか」
「ドラえもん映画もはやり異質だったのだろう。今から思うとな」
「そうか」
「あと、イノセンスも上映したことあるな。DVD発売直前の時期だった。その時に見てしまったので、DVD買ってもあまり見る意欲がわかなかった」
「わははは」
「しかし、『全国数館で僅かに上映しただけの映画』のとどめはこれだ」
「なに?」
「そもそも70mm版完結編もそれに当てはまるのだよ」
「ええっ?」
「ヤマトだってそういう事例が無いわけではない。むげに否定しないには当たり前だろう?」
「分かった。オチは分かった」
「当たり前だのクラッカー」
オマケIII §
「当たり真田のラッカーパテ」
「え、なんですか? 真田さん」
「このシームレス戦闘機は、つなぎ目にはラッカーパテを流し込んで水ペーパーで平滑に仕上げてあるからつなぎ目は見えない」
「つなぎ目がいくら見えなくてもマグネトロンウェーブで壊れますって!」