「世の中には海派と山派がある」
「うん。とりあえず、戦艦にロマンを感じる人と、戦車にロマンを感じる人は違うね」
「そこで、はたと気付いた」
「なんだい?」
「海派は船だ。船というのは、狭い閉鎖空間に人間が詰め込まれて濃厚な関係が作られる」
「そうか。陸はいくらでも外に出て息が抜けるわけだね」
「そうだ。戦車には常に外に出るという選択肢がある。戦艦には無いかも知れない」
「すると、どうなるんだ?」
「だからさ。狭い閉鎖空間に人間が詰め込まれる状況は家族に近いわけだ」
「えっ?」
「家族も逃亡できない人間関係だからね」
「血は争えないわけだね」
「どれだけ縁を切っても、あいつは誰それの子供だから、という評価がつきまとう」
「そうか。だから、船の話と家族の話は相性がいいわけだね」
「うん。だからヤマトでヤマトという宇宙船を描きながら中で家族の話をやったのは成功だったのだろう」
オマケ・ワンピース冒頭 §
「海派と山派の対立を考えると、ヤマトと空間騎兵隊の対立を考えてもいいのだが、いちばん分かりやすいのはワンピースの冒頭だな」
「どんな内容?」
「山賊が海賊に喧嘩を売るが、海賊は買わない。でも、まだ子供の主人公に手を出した時点で海賊は凶悪な本性を見せて山賊を圧倒する」
「そうか」
「実際、戦車対戦艦はほとんど話にならないぐらい戦艦の勝ちだ」
「乗ってる砲がそもそも圧倒的に違うってことだね」
「203ミリもあれば陸上ではかなりでかいんだが、海に行くと第2次大戦ですら戦艦ではなく巡洋艦の主砲に見えてしまう口径だ」
「はははは」
「でもそういうスペックの問題は別として、結束が違うんだよね」
「結束?」
「だからさ。仲間としての絆の深さだよ。海の方がずっと深くなる」
「なるほど。大嵐が来たら一蓮托生だから、結束は固くなりそうだね」
「だからワンピースでは船長(シャンクス)が先頭に立って挑発して部下が撃つ。これが仲間に対する信頼ってことだ」
「なるほど」
「もちろん、それがいいか悪いかは別の話で、そういうべたべたした関係は嫌だ逃げたいと思う人もいるだろう。そういう意味で好き嫌いは人それぞれだろう」
オマケ・譲歩の問題 §
「だからさ。海的な世界はまず譲歩から始まるわけだ」
「どういう意味?」
「古代は将棋でまったを掛けたが、島は譲歩しなかった」
「でも、それは古代が待ったしすぎるからだろ」
「そうだ。だからゲームをゲームとして成立させるためには、古代も譲歩しなければならなかった。不利な手を打ってしまったらそれは受け入れねばならない。かといって島の態度も強硬すぎた」
「でも、最後は一緒に頑張ったよ」
「それがあるべき状態だ。結局さ。海的な価値観とは譲歩と協力なんだよ」
「小さな船で1人で船出すればいいじゃん」
「ダメだよ。それでは大自然に脅威に勝てない」
「そんなに?」
「大嵐で戦艦大和は前進できるのに、護衛の駆逐艦は大波に煽られてスクリューが海から出てしまい、前進できないということがあったとかないとか。小さく軽い船は不利なんだ」
「そうか」
「だからさ。ヤマトファンにもそういう気質があって、たとえばさる人は思想性が強くて誰もが付いていくタイプではないが、実際はイベントを企画すると参加者が集まる。なぜだか分かるかい?」
「なぜだい?」
「結局、ヤマトファンと言っても価値観は多様だし、とても一枚岩とはいえないけれど、ヤマトを見る、ヤマトを語る、といった部分だけは1つになれるからだよ。そして、それ以上は誰も要求しない。逆に、過剰に『私』を出し過ぎると排斥されてしまう部分も存在する」
「どうして、自分を出したらダメなの?」
「ヤマトという価値観以外ではどのみちまとまらないいんだ。それ以外の価値観を出す奴は、どのみち上手く折り合えない。いじめて放り出すわけじゃない。勝手に排斥されてしまうのだ」
「難儀だね」
「それで、『自分は受容されない』と思って山にこもると山賊になるわけだ」
「でもそれは間違っているわけだね」
「そうだ。受容されなかったのは、彼の態度であって、彼ではない。みんな少しずつ譲歩しているんだ。なぜ君はそれができないのだ、と思われて終わるだけだ」
「みんなと同じになればいいわけだね」
「でも、僕はみんなより賢いと思っているとそれができない」
「賢いつもりの僕という問題だね」
「本当はそれは違うんだ。たいていの場合、3人寄れば文殊の知恵というが、譲歩して寄り集まった方がいいアイデアが出る」
「なるほど。たとえ絶望的でも仲間が多ければ徳川太助が考える人に気付いてくれるわけだね」
「そうだ。大人数が乗っているヤマトだから可能だ。1人で乗っている巨大ロボではこうはいかん」
オマケ2 §
「なるほど。たとえ絶望的でも仲間が多ければ徳川太助が考える人に気付いてくれるわけだね」
「そうだ。大人数が乗っているヤマトだから可能だ。1人で乗っている巨大ロボではこうはいかん」
「5人乗ってるロボなら?」
「いるのかいないのかも良く分からない下の方の3人の中で特に影が薄い北小介がどれい獣の弱点に気付いてくれる!」
「太助じゃなくて小介か。ケロット作るぐらいの天才少年だしな」