「ヤマト完結編は特に神話みたいにみえるのだが、それ以前の作品が神話ではない、という感じでもない」
「どうなの?」
「比率の問題だと思う。完結編は神話9割なのだろう。それ以前の作品は神話の比率が低いような気がする」
「たとえば?」
「第1シリーズはイスカンダルが100%神話の地なのだが、比率からすれば1/26でしかない」
「なるほど」
「さらばだと、テレサが神話の世界だが、出番は少ない」
「そうだね」
「あるいは永遠にだと、二重銀河の向こうが神話世界なのだが、実は偽装された神話世界なのだ」
「偽物ってことだね」
「しかし、地獄の悪魔が神を偽装したり、愛に触れて浄化される話だとするとやはり神話のたぐいになる」
「わはははは」
終わらない神話とは §
「神話になれば終わってしまう。話が続かないという論はある」
「完結編は神話だからその先に続けようが無いってことだね」
「でもさ。そこから別の話題が派生する」
「なんだい?」
「終わらない神話とはなんぞや」
「は?」
「言い換えれば、神の領域に行って戻れるのは何者なのか。何回も神の世界と現実を往復できるのは何者なのか」
「普通の人間では無理そうだね。勇者?」
「いいや。死者だよ」
「えーっ」
「だからさ。ヤマトは死者の船なんだよ。1回死んでいる船だ」
「まさか」
「そして、ヤマトが現世とつながる根拠として生きている若者達が乗る」
「そうだね」
「しかし、完結編では既に死んでいる沖田が艦長として座ったことにより、ヤマトは死者の属性を深める。最後に、若者が全員退艦したことにより、死者の船は死者である沖田によって墓場に戻る。これが完結編だ」
「復活編は?」
「生死をも司る科学の司祭である真田の命令により死者の船は復活する。地球に戻れる根拠として新しい若者達を乗せてな」
「そうか」
「最後に乗る人間が美雪であるのも象徴的だ。美雪は生死を司る巫女なのだ」
「それに意味があるの?」
「ある。生死を司る巫女が地球を離れることで、地球もブラックホールに飲み込まれて死者となる。本来の地球滅亡エンドならな」
神話の輪廻 §
「そして、第18代ヤマトも、既に死んでいる第17代ヤマトを強制的に現世に引き戻すという形で結実する。やはり第18代ヤマトも死者の船だったのだ」
「ぎゃふん」
スターウォーズと未知との遭遇 §
「ヤマトの影響をかぶった可能性のあるSF映画ブームの2本だが、いずれも『宇宙で神話』という基本文法を守っているという意味で興味深い」
「宗教的なフォースとか出てきたりするわけだね」
「未知との遭遇だって、まるで信仰を守る話だ」
「そうだね」
「ただ、未知との遭遇は宇宙から来た何かが出てくるだけで、宇宙そのものは舞台にならない点でインパクトが弱い」
「神話になるのはクライマックスだけってことだね。あとは信仰を守る話」
「もう一方のスターウォーズだが、続編がどんどんつまらなくなっていくのは必然となる。普通の方法では神話は続けようが無いのだ」
「ヤマトに相当する死者の船は無いのね」
「死者の星デススターも第1作(エピソード4)の最後で壊れてしまうしな」
「たしか、また別のが出てくるじゃん」
「そもそも、デススターは名前が『デス』というだけで自らが死者では無い。だから、現世と神の世界を往復する機能性は持っていない」
「スタートレックはどうなんだろう?」
「歴代エンタープライズは奇跡の幸運艦で沈められたことが無い。やはりそういう機能は無さそうだ」
「でも、TOSの後でかなり続編が長いよ。というか、既にTNGがスタートレックとして認知されているよ」
「既に宗教になってしまった。神話の世界から戻れなかったのだ。宗教の世界と割り切れば、いくらでも説話は続くよ」
「でも、それはもう違う世界ってことだね」
「そうだ。何かの理由でガミラスボーグと言う言葉が出てきても、それは結果的にそうなっただけで本来は違う名前で呼ばれていた」
「生きている世界が違うってことだね」