「さあ、子供は帰った帰った」
「大人の話をするってことだね」
松本ヒロインのパターン §
「実は、無の黒船ではたと気づいたのだ」
「なんだい?」
「松本漫画にはいわゆる『寝取られ』展開が多い」
「なんだいそれは」
「WikiPediaの定義は以下のようなものだ」
自分の好きな異性が他の者と性的関係になる状況・そのような状況に性的興奮を覚える嗜好・そういう嗜好の人に向けたフィクションなどの創造物のジャンル名、などを指す
「えー、なんて大人の話だよ」
「だから最初にそう言っただろう」
「それで?」
「松本的に再定義しよう」
「善良な子供が読む漫画では性関係はありえないしね」
「そうだ。だから、もうちょっと精神面に寄って再定義が必要だ」
「どう再定義するの?」
- ヒロインが主人公以外の男のものになる
- ただし、「男のものになる」とは、ついていく、拉致される、恋人になる、犯される等の多様な行為を示すとする
- その際、ヒロインは積極的な拒絶を示さない (主人公への好意があることとは別問題である)
「松本漫画に即して具体例を示してよ」
「たとえば、銀河鉄道999。山賊アンタレスにメーテルが拉致される」
「でも、あまり『寝取られ』っぽくないよ」
「そうだ。ここはまだ水みたいな水割りだ」
「もっと濃いのは?」
「男おいどんになると、ヒロインが他の男のものになってしまう、という展開が頻出する」
「ひぇ~」
「ヒロインは主人公に好意があっても、他の男を選んでしまうのだ」
「そうか」
「もううろ覚えだけどな」
「ひ~」
「ワダチでは、メインではないヒロインの女性の大群が海岸で外国人に走って地球に残留してしまう」
「海岸かよ」
「聖凡人伝になると、ヒロインが主人公の隣の部屋のセックスカウンセラーとセックスするという展開すらある。主人公はそれを覗くわけだ」
「とんでもない」
「同じように過激なのはガンフロンティアだ」
「拉致されて犯されるのは毎度のことなのね」
「しかもヒロインは拒絶しない」
「えー」
「そもそも、ガンフロンティアの主人公はトチローだが、実はトチローの相棒のハーロックと最もよく寝てしまうのだ」
「ひぇ~」
「そして、無の黒船でも、拉致されて、拉致した相手の男と自分からセックスしてしまうヒロインが出現してしまう」
「ひぇ~」
「松本漫画とは結局、そういうものなのだ」
「とんでもねえ! 屈折してる!」
「でも、話はそれで終わりじゃ無い」
「えー」
「そこから、スターシャと森雪が似ている謎が解けるのだ」
スターシャの問題 §
「スターシャと森雪は似ている」
「サーシャもね」
「そうだ。しかし、理由づけが分かってきた」
「なんだよ」
「松本パターンで言えば、ヒロインは他の男に寝取られてしまうべきなのだ」
「パターンはそうだね」
「でも、健全さが要求され、その要求はストレートに叶えられない」
「ガミラスが森雪を拉致するという展開も無いね」
「辛うじて藪が誘拐するだけだ」
「うん」
「だからさ。どうしても、ヒロインが他の男のものになる展開を入れるとすれば、影のヒロイン(シャドウヒロイン)が必要とされるのだ」
「それって、2人ヒロインってこと?」
「そうだ」
「それがスターシャと森雪ってこと?」
「森雪は古代の物にならざるを得ない。健全なドラマである以上、ヒロインは主人公と結ばれねばならない。しかし、ヒロインにそっくりなシャドウヒロインは他の男つまり古代守のものになる」
「でもスターシャは森雪じゃないよ」
「実は当初両者は同じなんだ」
「えっ? 別人だろ?」
「でもさ。そっくりなんだよ。雪に似てるなと真田さんも言ってる」
「えー」
「当初、古代のイメージとしてサーシャと森雪は同じに見える。スターシャも同じに見えるということだ。つまり、青春の日の幻影として2人は同じなんだ」
「一緒に過ごす時間が増えて別人だと認識されるようになるわけだね」
「でも原点は1人なんだ」
「そうか。原点では、森雪への愛と神秘なるスターシャへの憧れが分離されない混乱状態にあるわけだね」
「そうだ。そして、その半分は古代進のものにならない。兄貴が持って行ってしまう」
「なるほど」
「だから松本色が濃い永遠にになると、再び森雪がアルフォンのものになってしまうという『寝取られ』に隣接した展開が押し寄せてくる」
「寝取られてないだろ。古代のところに帰るだろ」
「でもさ。雪は自分からアルフォンのところにいるんだよ」
「重核子爆弾の秘密が知りたいからだろ?」
「動機はどうでもいいんだ。自分から他の男のところに行ってしまうという表面的な行動がここでは重要なんだ」
「そうか。演技でもいいから、他の男のものに『自発的になってしまう』のが『寝取られ』的な展開なのか」
「そうだ。そもそも、『寝取られ』趣味の夫を持つ妻は、夫を喜ばせるために他の男に抱かれてそれを夫に見せつけるわけだ。夫への愛は存在するが、表面的な行為としては夫への裏切りになる」
「屈折してるね」
「そうだ。森雪のアルフォンに対する行動も同じような意味で屈折している」
「地球を愛するがゆえに、敵であるアルフォンに接近して献身的に尽くすわけだね」
「その通りだ」
「なるほど。『寝取られ』から、そこまで見えてくるのか」
「そうだ」
「ヤマト2はどうなの?」
「実は、テレサは島を置いて1人で行ってしまうのだ。最終的に島のものにならない、という点では『寝取られ』に隣接する」
「ひぇ~。恐るべし、松本零士の寝取られ趣味」
「でも、そこがイイ!というマニアもいるだろうから、それはそれでいいんだろう」
「スターシャが進のものにならなくても、それはそれで健全でいい話ってことだね」
「森雪とスターシャが両方とも進のものになったら、重婚になって、むしろそれが不健全だ」