「ダーティ・ママ!が終わった」
「ダーティ・ママ!って何?」
「TBSのテレビドラマ。子連れの刑事もの」
「子連れの刑事っていうと、別に珍しくないような……」
「珍しいのは、そこじゃない」
「じゃあどこ?」
「装甲シャッター付きのカスタム乳母車に赤ちゃんを連れて事件現場に連れて行く。銃撃戦とか始まると乳母車の装甲シャッターを閉めて赤ちゃんを保護する」
「装甲シャッターってなんだよ」
「最終回になると自分で乳母車を改造する。母親刑事が刑事ドラマのオフィスの中で、半田付けするんだ」
「それでどうするの?」
「赤ちゃんを遠隔地のパソコンから監視できるようにしたり、リモコンで装甲シャッターを閉じるように改造する」
「それにどんな意味があるの?」
「犯人が赤ちゃんを人質に取って銃を向けても、リモコンでシャッターを閉じれば犯人は赤ちゃんを撃てない」
「確かに普通の刑事ドラマならあり得ない怪作だな」
「しかも母親刑事自ら半田ごてを握って自分で乳母車を改造してるんだぜ」
3世代論として §
「このドラマは結局、現に赤ちゃんの母親である者と、これから母親になろうとする者と、かつて赤ちゃんの母親であった3人女性の物語ということだ。立場の違いを超えてこの3人が共闘した時点で、敵は無くなる。周辺をウロウロしている男どもは、最初から最後まで論外で終わり」
「えー」
嘘つきセンサー論 §
「このドラマが怪作である理由がもう1つある」
「それは何?」
「赤ちゃんは嘘つきを見ると『だぁ』と言うのだ。そういう設定だ」
「犯人を暴くわけだね」
「最初はそうだ」
「えっ?」
「次第に犯人では無いが他の理由で嘘をついている者に『だぁ』と言う」
「それじゃ犯人分からないじゃないか」
「そうそう。しかもそれで終わりじゃ無い」
「なんだよ」
「最後は主人公に向かって『だぁ』と言うようになる」
「えー」
「もちろん、主人公は母親であり刑事であり犯罪者では無いが、本心では無いことを口にすることもある」
「それは怪作だ」
オカマ論として §
「このドラマ、ともかく男が徹底的に当てにならない」
「それで?」
「実は最大の支援者として登場するのがオカマという皮肉な構造なのだ」
「母親の味方は男ではなくオカマかよ」
必殺武器 §
「必殺武器は腐ったタマゴと鼻クリップ」
「鼻クリップがなんて武器なんだよ」
「腐ったタマゴを投げつけると臭いから自分の鼻を挟む」
「かっこいい銃撃戦は?」
「無い」
「なんて臭い怪作だ」
まとめ §
「一応最初から最後まで見てしまったのだから、それなりに破壊力はあったと認めよう」
「えー」
「ともかく、男が考える格好いいという概念をぶち壊したのは爽快でいいね」
「ポリマーよりホラマーが好きという君らしい言い分だ」
「あと、東京タワーが見える麻布三田方面という地域性が分かる舞台もいいね」
「家政婦の三田?」
「いや。地名の三田」