「懐かしい。自分の金で最初に買ったビデオデッキだ」
「VHS?」
「そうだ」
「HQ?」
「HQになる前にホワイトレベルのクリップアップだけ実行したHDというのがあってね。丁度それに当たった機種なんだ」
「それは珍しい」
「テレビが音声多重対応ではなかったのでね。音声多重チューナー入りのビデオデッキは重宝した。おに蔵のひみつトークもこれで聴いたよ。ユ鬼ちゃんサイコー」
「それはいいから」
「結局、いろいろな教訓を残したマシンであった」
「どんな教訓?」
- 画質を改善したければ、テレビのブラウン管を拭くか、ビデオデッキのヘッドを交換せよ。新型に買い換えるのはちょっと待て
「えー」
「ヘッドは何回交換したか分からないね」
「そんなあ」
「それどころかビデオデッキは最盛期に7台ぐらい稼働していたかな」
「なんでそんなに……」
「だって、ビデオテープを自動交換できないから番組ごとにテープを分けるにはデッキを複数持つしか無い。簡単に整理分類されたメニューが出てくる今とは違う」
「ひ~」
「しかし、初代Akaneと一緒に処分してしまったよ。トラックでドナドナされて行った」
「勿体ないじゃん」
「そうは言っても、もうこいつで録画できるアナログ放送はそもそも放送してないんだね」
「た、確かに……」
「デジアナ変換でもさ。コピーガード信号が入って上手く録画できないケースがあるし、実質的にもうこいつが役には立てない時代なんだよ」
「記念品として残すという選択は?」
「無いな。さすがに」