「ああ。この話題に触れておくか」
「なんだい?」
「基地問題。実は宇宙戦艦ヤマト2199のヤマトをデザインした玉盛さんは沖縄の人なので、沖縄の基地問題に言及する。そこからの連想で」
「つまり沖縄の基地だね」
「いいや。調布」
「え? なんで?」
「子供の頃ね。オヤジの車に乗って甲州街道を西進すると、調布のあたりでものものしい鉄条網に囲まれた地域があった。調布基地だ。現在は日本に返還されているが、幼少の時代、日本とアメリカの共同利用だったらしい。ともかく、日本っぽくなくてものものしかった」
「つまり、君に取っての基地問題とは子供の頃に米軍はそこにいた、という話なんだね?」
「そうだ」
「でもさ。調布は返還されたんだろう? もう民間空港なんだろう?」
「そうだ」
「ならいいじゃないか」
「良くないよ。調布は返還されただけで同じような場所は他にも残っているんだ」
「どこに?」
「たとえば福生。拝島のあたりに基地があるわけだが、実は箱根ヶ崎まで行ってもまだ基地なんだよ。同じ基地が続いていることにビックリしたことがある。かなり遠くまで来たはずなのにまだ同じ基地なんだ」
「つまり、君が生で見た調布と福生の基地こそが君の基地問題ってことだね」
「そうだ。沖縄の問題ではなく、郷土の一部を未だに占有する巨大な強制力だ」
「話は米軍憎しで終わり?」
「そうじゃない」
「鬼畜米英を追い出せで終わらないの?」
「追い出して済む問題じゃ無いからな」
「じゃあ何だよ」
「調布の飛行場はそもそも日本軍が使っていたものだからな。今でも飛燕を入れていた掩体壕が近くに残る。ここから飛燕が離陸して、B29に体当たりを敢行したわけだ。近くの国領で不発弾が見つかったこともあるね」
「それで?」
「実は日本軍の問題にまで話を進めていくと、昭和22年頃の航空写真を見ているだけで、郷土に高射砲陣地の跡がいつくも発見できる。それらは当然民間の私有地を接収して作られたものが多く、今は痕跡も無くなっているケースが多い」
「つまり、いきなり軍人が来て戦争に必要だからおまえの家を接収して取り壊すって言われるわけだね」
「そうそう。そんなことをいきなり言われても対応できるわけがない。しかし接収は強行され、住人は途方に暮れる」
「それが予測される未来ってことだね」
「過去にありありと存在したはずの光景だからね。10年後に同じことが起きても驚かないよ」
「それが君の基地問題かい?」
「結局そういうことだ」