「事前に分かっていたこと」
- 英国仕様のC-47(ダコタ)が主役メカ。本物のDC-3を撮影に使っている
- 昭和21年の終戦後
- 佐渡が舞台の日本映画
「なるほど」
「本物の輸送機でしかも英国仕様。それにも関わらず舞台が日本。こんな夢のような映画があるのものかと思った」
「零戦の映画よりもいいの?」
「個人的には、どんな零戦映画の百倍はワクワクしたね」
「実際に見てどうだった?」
「実際はそれ以上だったよ。更にその何倍も面白かった」
「へー、どうして?」
「輸送機の魅力炸裂。RAFの魅力炸裂。しかも日本。そこまでは予想通りで文句も無い。ところがその先が凄い」
「どう凄いの?」
「傷病軍人、戦死した息子の帰りを待つ母なんてものが出てくるし、闇米のモトジメになって成り上がろうとする男までいて、クライマックスは傷病軍人の母と戦死した息子を持つ母の対決。さあ、どっちが悲惨だ!」
「ひ~」
「結局さ、細かいことを言えばきりが無いけれど、珍しく昭和21年の空気感が描かれていた映画だったと思うよ。あの当時の人間らしい表情で演技していたと思う」
「なら良かったね」
最大のメッセージ性 §
「最終的に、イギリス人がいい人だと分かって、おばちゃん連中が『軍に騙された』というが、村長だけこの戦争は『自分達も含めてみんなで始めた』という。でもおばちゃん達は理解できない。ここに、この映画の最大のメッセージ性があると見た」
「でもさ。村長の言い分はおかしいじゃない。戦前は女性に選挙権無いから、政策に影響を与えることもできないぞ」
「いいや、そういう意味ではないんだよ。確かに村長はいいことを言った。でも、おばちゃんは理解できない。おそらく観客の大多数も理解できない」
「なんのこっちゃ」
「これはね。これから始まろうとしている戦争になぞらえた『今』を描いているとも言える」
「『今』ってどういう意味なんだよ」
「今も戦争の前段階の準備行動にいそしむ人達が多い。選挙権のあるなしは関係ない。しかし、彼らはそう思ってない。彼らは『戦争に賛成などしていない』という。しかし、明らかに戦争の準備行動に他ならないことを行動として行っている。そういう連中はいくら口で『戦争に賛成などしていない』と言っても顔に『戦争やりたいです』と書いてあるようなもので、当然発言に信憑性なんてない。でも本人はそれを分かっていない」
「なんで分かっていないことをするわけ?」
「拡声器として使用されいるだけだからだ」
「他人の意見を拡大する道具ということだね」
「そうだ。道具は自分の行動の意味なんて理解しちゃいないよ」
「それにも関わらず開戦の責任を担うべきなの?」
「相手から見たら、本心かただの道具かなんて分かりゃしないよ。ただ開戦の準備行動をしているとしか見えない」
「じゃあ、我々みんなが今は戦争を始めようとしているってこと?」
「必ずしも多数派が準備しているとは思わないが、マスコミやネットに誘導されて協力してしまっている場合がけっこうあると思う」
「君はどう思うんだい?」
「自分の行動の意味が分からずに行動しているような人に参政権を与えても意味が無いと思うけど、結局戦争の準備行動を行うのに参政権は関係ないので、結局あまり意味は無いだろうな」
結論 §
「じゃあ結論はなんだい?」
「この映画はたぶん今の日本人が見るにはちょっと難しすぎる」
「なんで?」
「昭和21年の常識がベースになっているが、それは今の日本人から見ると未来の話だからだ。感覚として未来を先取りするのは難しい」
「ちょっと待て。なんで昭和21年が未来なんだよ」
「昭和21年は戦後だからだ。特に歴史に興味も無い日本人にとって、今は戦前だ。戦後は未来の価値観なのだよ」
「君はどうなんだ。昭和21年が解釈できるのかよ」
「おいらは、昭和20年代頭で見たよ。すぐにどういう時代かありありと思い描けるからね」
「ひ~。歴史マニアが来たよ」
「でもね。歴史マニアだから分かるとも言えないよ」
「なんで?」
「歴史を『戦国武将は誰が好きですか?』という問題だと認識している人達は分からないかもしれないよ。要するにミーハーなキャラの問題になっているわけだから」
「ひ~」
余談を言うなら §
「余談を言うなら、今は昭和20年代、30年代の映画にどんどん興味がシフトしている」
「なぜなんだい?」
「それは戦後であり、今の日本から見れば未来だからだ。もっと新しいんだよ」
「昭和20年代、30年代の映画って、その時代に作られた映画? それとも、その時代を舞台にした映画?」
「両方だ。ダコタは後者だが、人間魚雷回天とかイー57降伏せずとか世界大戦争は前者だ」
「他に何か例はある?」
「永遠の0って映画はさ。昭和20年代の話が含まれていて、自分はそこが最大のポイントだと思うが、たいていの人はゼロ戦がどうしたとか赤城がどうしたとか言わない。大阪のバラックこそが見どころだと思うおいらとは話が全く合わないよ」
「ひ~」
まとめ直せ §
「もうちょっと明るい話でまとめ直せよ」
「本物のDC-3使ったシーンの素晴らしさはもう何も言えない。CGとVFXで誤魔化した映画とはそこが違う」
「でも、飛んでるシーンはCGじゃないの?」
「た、たぶんな。飛んでいるシーンはやはり地上シーンよりも見劣りする」
「そうか」
「特に大人数で飛行機を引くシーンなんて感涙ものだ。本物の飛行機を本物の役者が大人数で引いているからな。あれだけ生々しい映像は今やなかなか撮れないだろう」
オマケ §
「トモネコさんからのお便りだ」
お疲れ様です。
ダコタの舞台は佐渡なので、地元の新潟では話題になっていました。
(私は観なかったのですが)
ダコタのC-47について詳しく記録紹介しているサイトです。
https://ssl.alpha-prm.jp/dc3pub.com/filename45.html
撮影御の機体は佐渡には保存出来ずに売られてしまったそうです。
トーノ様がダコタを御覧になって面白ければ私も観なければと思います。
(新潟での公開は終了ですが、DVDが告知されています)
「君はどうアドバイスする?」
「片足を失った傷病軍人の母と、息子を失った母の対決が見たいと思えるのなら見てもいいと思うぞ」
「ひ~」
「石を並べて突き固めて滑走路にする工事現場とか」
「地味」
「生魚かよ、って刺身を邪険に扱って食えないイギリス人とか」
「食い物を粗末にしている」
まさに余談 §
「あ、思い出した。風呂の浴槽を泡だらけにしちゃう外国人ってネタは、ブースカにあったようなかすかな記憶がある」
「ひ~」