「これはなんだい?」
「モノクロトーキーの1949年のフランス映画だよ」
「なんでこれを見ようと思ったわけ?」
「大学生ぐらいの時、昔テレビで見たんだよ。今の目でもう一度見ておく価値はあるかなと思ったので」
「それで?」
「うん。実はこの映画手袋をして鏡の中に入るシーンが、ウルトラセブンそっくり」
「セブンの元ネタなんだね」
「そして、今改めて見ると、ラジオから流れてくる謎の言葉が、ギャラクティカ(新)のサイロン艦の水の中にいる人に似ている」
「やはり元ネタ?」
「良く分からないが、いろいろな意味で影響を与えた原点的な映画ではないかと思えてきたよ」
「ジャン・コクトー侮り難しってことだね」
「まあ同時代の映画をそれほど多岐に渡って見てはいないので、あまり積極的には断言できないのだけどね」
「他に何か気づいたことは?」
「昔は結構オルフェに感情移入できた。謎の言葉にすがってしまうオルフェの心情などにね。でも、今はむしろオルフェをマヌケな若者として見てしまう」
「なんで?」
「客観的に見ると、彼には間抜けな振る舞いが多い。それがよく見えてきた」
「それは過去の自分も間抜けってこと?」
「そうだろう。若者は目の前にある肝心なものが見えないものさ」