「ふむ。つまり、「遅刻しそうな女の子が食パンを咥え、走って登校している途中で曲がり角で男の子とぶつかり…… 」も「眼鏡を外して美人」も、原典が存在しないままパロディだけが産み出されていくとすれば、我々も1つだけ追加を必要とする」
「それはなんだい?」
「真田の【こんなこともあろうか】だ。もともと真田は言っていないのに、いつの間にか真田の名台詞扱いされている」
「それで?」
「【おそらく1920年代ハリウッド映画から1950年代アメリカンホームドラマへの流れが鍵を握っていると推測する】という示唆は、この問題にも適用できるのではないか」
「というと?」
「昔の映画やTVドラマのスーパー科学者は、こんなこともあろうかと凄いメカを用意していることが割と多かったのではないか。そういう万能性を、科学者が持つことを盲目的に信じられる時代だったのだよ」
「では、過去に元ネタが既に用意されていたとして、なぜ真田につながった?」
「シームレス戦闘機を用意し、手足も爆弾入りで、最後は空間磁力メッキ。まさに最強の万能科学者だからな。それ以前に存在した漠然としたイメージと合体したのではないか。あくまで仮説だが」
「ではこの先は?」
「だから、【こんなこともあろうかと】と言った前例の調査が重要だな」
「それは、ヤマト研究はヤマトを見ているだけでは完結しないという意味かい?」
「そうだ。そして、ヤマト研究は過去に対して開かれている。ヤマトは突然ヤマトだけが出てきたわけではない。過去の積み重ねがあって、ヤマトは産まれた。過去は否定できない」
「唐突感があるのは過去を見ないからだね」
「せめて、丸や少年倶楽部ぐらいは射程距離に入っていないと話にならない世界だろう。子ども番組を当時熱心に見ていたぐらいでは太刀打ちができない」
「でも、丸や少年倶楽部は前提であって、話はその先にあるのだね?」
「おそらくそうだろう」