Subject: 続・もしも古代守が生還したら
Keyword: 【▲→トーノZERO→アニメ感想→宇宙戦艦ヤマト】
URL: http://mag.autumn.org/Content.modf?id=20160712083617
名前: どん
本文:
こんばんは。
ひおあきら版ヤマトではイスカンダル到達直前に沖田艦長が死亡していますからあのタイミングで艦長に死んでもらえば初期シナリオの要素を拾い上げる2199のスタイルとも合致するので、ある意味で元鞘に収まる円満解決になるかも知れませんね(笑)
余談ですがひおあきら版スターシアは自爆装置という抑止力でガミラスの侵攻を防いでいた上にヤマトが出港した後で実際に使用したりと、2199のスターシアとはほぼ正反対の主義になっているのはちょっと面白い所かも?
「君の意見を頼む」
「実はひおあきら版のラストを読み直したのだが、いろいろ面白かった」
「というと?」
「気づいたのはこのあたりだ」
- ヤマトがガミラスを爆撃する際、ちゃんと総統府を狙っている
- その割に周辺部も含めてかなり吹っ飛ばしている
- 罪も無い人々まで死んでいるのは悪い為政者をもったせいだ、とされる
- ガミラスは滅んでいない。総統府と総統府周辺が爆撃されているだけ
- ガミラスが滅んでいない状態でヤマトはイスカンダルに向かっている
- イスカンダルが滅んだ理由はガミラスの攻撃
- スターシャがまだ生きている理由は、星を自爆させる最終兵器の存在による
- スターシャはコスモクリーナーの設計図をヤマトに渡すとイスカンダルを自爆させる
- ガミラスも道連れ。つまり、ガミラスを滅ぼしたのはスターシャ本人
- 古代守が死ぬ場面はない。単に放射能で命は短いと言われるのみ
「面白いところはどこ?」
「悪い為政者を持つと殺されても文句は言えない。まるで明日の日本を見ているようだ」
「まさに自分クビを締めるような間抜けな選択を現在の日本人が自ら行っているという感想だね」
「あの突っ込みどころ満載で子供の作文みたいな自民党の改憲案とかね。欽定憲法ですらないよ。あれで良いと思っちゃう人たちに付ける薬は無い」
「それはいいから。ヤマトの話をしてよ。スターシャはどうなんだよ」
「そうだな。結局、ガミラスとイスカンダルの問題は、【すぐ目の前にあるにも関わらずなぜイスカンダルはガミラスに占領されていないのか】という点にある」
「そうだね」
「作品ごとの解決策を簡単に列挙してみよう」
- いくつかの作品・本質的にガミラスとイスカンダルは同じである
- ヤマト1974 理由は示さない。ただ単にそういうものだと描かれる
- ヤマト2199 宗教上の理由
- ひおあきら版 星を自爆する最終兵器が抑止力
「これらを君はどう評価するのだい?」
「【本質的にガミラスとイスカンダルは同じである】という選択肢は矛盾が少ないが、分かりにくい問題がある」
「二重人格ものの1バリエーションだね」
「そうだ。地球を攻めた人格と地球を助けた人格が存在することになる。しかし、どちらかといえば理屈の解決策だ。直感的には少し分かりにくい」
「特定の立場を特定の登場人物に割り当てる方法論との相性は良くないわけだね」
「ヤマト2199の方法は、自らが神になろうとしたヤマトIIIのデスラーとの解離が著しい」
「本当なら、デスラーが単にスターシャを嫁さんにしたいだけなら奪ってくれば良いだけなのだね」
「ヤマト1974の方法は、見る側に理由を考えさせるという意味で悪くない選択肢だがやはり不親切で分かりにくいのも確か。まあ、物語の本筋からは関係ないので、あえて遠景に追いやるのは間違いではないと思うがね」
「で、ひおあきら版の選択肢は?」
「みんな殺されたが、最終兵器で恫喝してなんとかスターシャだけ生き延びたという説明はそれなりに分かりやすい。かなり良いやり方だと思う」
「ヤマト一隻でガミラスを滅ぼしたという無理のある展開も回避できるね」
「結局、この星を自爆させて戦う戦意ある女性というイメージは、ヤマト2のテレサとなってフィルムに出現し、更に新たなる旅立ちのスターシャで再度リフレインされる」
「しかし、本当はひおあきら版の段階で既に用意された1つのアイデアなのだね」
「実は、ひおあきら版は【戦車隊まで搭載しているヤマト】のような無茶もあるのだが、割とストーリーや設定は上手くまとまっていると思った」
オマケ §
「だが恐い考えに至ってしまった」
「なんだよ」
「抑止力という概念が理解できない人がけっこう多い」
「えー」
「よく【もしいきなり敵が攻めてきたら】という論法で話す人がいるだろう?」
「うん。でも敵が攻めてきたら酒を飲んで話し合うというのはアホだよな」
「そう。上官に命令されて仕事で攻めてきた前線兵士と酒を飲んで話し合ったって何も解決しない。彼らは日本に不満があるから来ているのではなく、命令されたから来ているだけなのだ」
「むしろ、酒を持って出てきたら仕事の邪魔になるから殺されるよね」
「そう。本質的にアホなのだよ」
「じゃあ、もし敵が攻めてきた時に備えて軍備が必要?」
「問題はそこだ」
「どこどこ?」
「戦争が発生する前には必ず兆候がある。【もしいきなり敵が攻めてきたら】というのは本来ならあり得ない前提。そもそも大軍はいきなり動かせない。大義名分を付けて予算を付けて実際に物資や人員を集積してそれからやっと攻めることができる。【もしいきなり敵が攻めてきたら】と本気で主張しているなら、それは我が国は戦争の兆候も察知できないボンクラ集団ですと日本を貶めているのと同じなのだ」
「愛国者の振りをしているが、本当なら日本を愛する者の敵だね」
「ところが、そんな穴だらけの論法で説得されてしまう人がけっこういる」
「えー」
「当然、彼らは【もし敵が攻めてきた時に備えて軍備が必要】だと思っている」
「つまり、仮想敵国と全面戦争をやって負けないだけの戦力が必要なんだね」
「そう。でも、本当はそれだけの戦力は必要ない」
「なんで?」
「【たとえ勝っても割に合わない】と相手に思わせるだけの戦力を持っていれば、それだけで攻めてこないのだよ」
「憎いだけでは攻めて来ないのだね?」
「戦費に見合った成果を説明できないと、そう簡単に開戦のコンセンサスは得られない。全ての関係者が戦争をやりたいわけではないのだ」
「つまり、戦争に見合った成果が保証できない状態を維持することがが抑止力だね?」
「そう。だから【もしいきなり敵が攻めてきたら】という論法を安易に語る人、それを納得しちゃう人の心には【抑止力】という概念そのものが存在しないのかも知れない」
「つまり、抑止力としての最終兵器を持つスターシャという設定そのものが、彼らには理解しがたい可能性があるわけだね」
「そうだ。スターシャの抑止力はイスカンダルも消えるがガミラスの全てを消せるわけではない、という意味で完全ではない。だからガミラスを倒す決定力としては弱い。しかし、ガミラスの侵攻を止める効力はある」
「まさに抑止力だね」
「でも2199のスタッフやファンも絶対不可侵の聖域の存在は分かっているようだ」
「だから、宗教的崇拝対象としてのスターシャは理解できるのだね」
「そういう意味で、ヤマト2199のスターシャの設定は理解できるのかもしれないが、ひおあきら版の設定は理解できない可能性がある」
「じゃあ2199の方が優れているの?」
「さあ、それは知らない。あくまで仮説だ。だが、核の抑止力を前提とした冷戦時代を生き延びたおっさんにはつまらんなあ」
オマケ2 §
「そこまで行くと、【割とストーリーや設定は上手くまとまっていると思った】ひおあきら版の評価も揺らいでしまうわけだね」
「そうだな。やはり撃てない超兵器を互いに向け合って悶々としている話の方が面白いと思う。撃ってしまえば話が安っぽくなる」
「安っぽくなるというのは、惑星を壊す威力があるはずの波動砲を単に火山活動を発生させるためだけに撃つとかだね」