2016年11月19日
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【困った人】の類型としてのパターン・リアクション型人間

Written By: 川俣 晶連絡先

発端 §

「以前、AIで人間が不要になる未来は当面来ないが、現状でもAIに置き換えられてしまう程度の人間達も存在するだろう、という話をしたと思う」

「そうだったかな」

「以下の記事を見てハッと目から鱗が落ちた」

「つまり、はっきりと【現状でもAIに置き換えられてしまう程度の人間達】の存在が示されているからだね」

「そう。それもあるのだがね。それはそれとして、置き換えられてしまう人たちの類型の1つが明快に示されているからだ」

「その類型とは?」

「文章を読んだ気になって実際には読めていない人たちだ」

「君はそういう人たちが存在すると思う?」

「思うぞ」

「理由は?」

「実は書かれたことを読んでいない人がけっこういるからだ。書かれているにも関わらず質問を受けて改めて説明を行うという事態は割と繰り返し発生している」

「読み落としじゃないの?」

「そういう事例もあるだろうが、総合的に考えるとそもそも読めていない人たちがいると思うと納得できることが多い」

定義 §

「というわけで、ここでは【文章をパターンに当てはめることで解釈してから反応し、実際には読めていない人】を、パターンリアクション型人間(PR人間)を呼ぼう」

「それが定義だね」

「ちなみに余談だが、PR人間には定義という概念が存在しないか希薄だ」

「それはどうして?」

「その場その場の定義に対応するパターンを豊富に取りそろえることは不可能だからさ」

「前提条件がその場で定義される議論も不得手ということだね」

PR人の特徴 (順不同、重複あり) §

  • 定性的
  • 文章を読まない/読めない 特徴的なワードからリアクション
  • お前もな、であることも多い
  • 前提条件を付けて議論できない
  • 裏付けが取れないことも多い
  • 論争が一方的 (論争中に相手が提示する新情報に対応できないことも多い)
  • 相手が既に書いていることを、相手が知っているはずがないという前提で持ち出す
  • 因果関係を把握できない、予測できない (正義の戦争に賛成するが、その結果として自分の真上に爆弾が落ちてくる可能性を想定できない)
  • 自分に不利な選択をしがち
  • 損得の比較が不得手 。よい悪いが最初から明瞭
  • 自分の論旨が破綻していてもわからない
  • その場その場で正しいことを言う。全体が整合しない。
  • 議論には勝敗しかない。第3の結論などない
  • 新しい概念が不得手。処理するパターンがないから。既存パターンにも矛盾するから否定しがち
  • 物理現実を無視する
  • 安易に結論に飛びつく
  • 因果関係が存在しない
  • 議論には勝敗しかない。第3の結論などない

PR天才 §

「実はPR人の上位概念としてPR天才というものを想定しうると気づいた」

「PR天才とはなんだい?」

「PR天才は以下の条件を満たす人だ」

  • 基本的にPR人である
  • 常人ではあり得ないほど莫大な知識を記憶している
  • 常人ではあり得ないほど莫大なパターンを記憶している
  • 常人ではあり得ないほど高速に膨大なパターンを検索できる
  • 成績も優秀で、世間からは高度に知的な人間と見なされている
  • 多くの問題に対して、常人よりも素早く答えを出せる
  • しばしば、常識的におかしな言動が見られる場合がある (とてもつもなく単純な何かを見落とす)

「PR天才に心当たりがあるのかい?」

「過去であった人間の中に、あの人とあの人はPR天才の類型にまるまる当てはまるなあ、という感想を持った」

「それは誰?」

「内緒だ」

「それで君はこれに対して何を思った?」

「PR天才は、頭が良いのは事実だ。なにしろ常人以上の情報を処理しているのだからね」

「良いことじゃないか」

「そうでもない。昔はね、自分より素早く答えを出せる人には勝てないと思っていたのだがね」

「自分の能力はこの程度だと思っていたわけだね」

「そうだ。でもね、PR天才は結果を出せるが、知的に振る舞っているわけではないのだよ」

「知的に振る舞うとは、どういうことなんだい?」

「たとえばね。Aという論とBという論をぶつけあって、議論の結果AでもBでもないCという結論が出るのが知的な論争。勝つか負けるかだけをやっているのが知的ではない論争」

「まさに、勝ち負けだけを問題にするのがPR人の特徴ってことだね」

「そうだ。だからね、おいらの場合、ある結論を結論として提示するには踏まねばならない手順というものがある。別に特殊なことはやってない。根拠を添えて検証可能しなければ、それは断言できるレベルの結論たり得ない」

「天才が直感で結論に至るのはだめなのかい?」

「直感で仮説を得ることはできるが、仮説を検証せずに事実とは提示できない」

「でも、PR天才は検証を飛ばしがちなのだね?」

「そうだな。自分がアイデアを1つ1つ検証しているうちに、PR天才は既に結論に達していて、それはかなりの割合で正しい」

「正しければいいじゃん」

「ちちち。100%ならそれでも良いが、たまに間違いが混入しているのでね。安心して鵜呑みにはできない。結局、地道に検証しなければならない」

「あとから別の誰かが検証していたら、いくら素早く結論が出ても意味ないじゃん」

「そうだ。間違いは誰にでもあるが、腋が甘いという理由でボロを出すのはちょっとかっこ悪い。そういう意味でPR天才がいくら素早く結果を出せるとしても同じにはなりたくない」

PR人の例 §

「どんな人がPR人だい?」

「一番分かりやすい層として存在するPR人の事例はオタクだろう」

「どのあたりがパターンなんだい?」

「オタクが大切にする【お約束】という概念そのものがパターンそのものだよ」

「たとえば、戦争アニメなら必ず巨大人型ロボットが登場するのがお約束なのだね」

「そう。いかに実際の戦場に巨大人型ロボットがいないとしても、そのことは全く問題ではない。この場合、パターンはそれ自体で意味を持つからだ」

「物理現実を無視するってことだね」

「そうだ。それが顕著に出ているのがスチームパンク的な世界だな」

「他に例はある?」

「夏に流行った怪獣映画もね。あれもPR人的な内容。いきなり【あれは未知の巨大生物だ】と分かってしまう人物が主人公になっていて、情報がないと判断できないという学者は無能扱いになっている。でも、本当は情報抜きに判断なんかできなくて当たり前。直感で行けるのは仮説まで。検証を経ずして事実には至らない。でも、そのあたりのニュアンスが消し飛んでいきなり直感が事実の把握になってしまっている。そこにはリアリティがないトンデモさんがいるだけなのだが、実はこの映画はオタクに大人気なのだ」

「そうか、PR人のオタクはパターンへの合致イコール正解だから、このプロセスに何も問題は無いのか」

「おそらくそんな感じだろう」

「他に何か事例はある?」

「一般的にトンデモにはまる人たちもPR人であることが多いと思うよ」

「それはなぜ?」

「物理現実を無視してパターンへの合致を優先するからさ」

「つまり、自分が持っているパターンに合致していれば説得力があると感じるわけだね」

「そうさ。いくら目の前でトリックを暴いても妨害だと思って信じない」

「すると、フクシマ問題とかも?」

「そうだ。個々のPR人は自分の内部に持つパターンに最も合致するものを真実として承認しがちであり、それが正しいかを検証する手順を持っていない。そもそも検証が必要だと思っていないだろう」

「自分の正しさを盲信するわけだね」

「そこで、最も良くパターンに合致する結論が【フクシマは危険】だとすれば、いくら実際の福島県で普通の生活をしている人が山のようにいても、その物理現実は無視される」

「じゃあ、その現実を目の前に突きつけたら?」

「語れなくなって消える。それだけだ」

「もしかして、あっさり極論に行ってしまう人たちってみんな……」

「彼らの中にPR人がいる可能性はけっこうあるだろうね」

「明らかに無理のある主張を繰り返す左翼にも」

「扇動者は違うかもしれないが、美辞麗句に釣られた人たちはPR人が多いのかもしれない。構造的に、右翼も同じだけどね」

「じゃあ、中庸な意見の持ち主なら安心?」

「そうとも言い切れない。PR人の特徴は、あくまでパターンへの合致にリアクションする人であって、思想とはあまり関係ないからだ」

PR人以下 §

「ちなみに、概念としてはPR人より下という知性も想定できる」

「PR人より下とは?」

「以下のような人たちだ」

  • パターンを持つこともできない
  • 判断基準となるパターンが無いので、一定の基準で判断を下すことができない
  • 個々の知識はあるが、知識を関連づけることができない

「実際にいると思う?」

「いるだろう」

まとめ §

「では長くなったからまとめてくれ」

「パターンに対してリアクションする仮称PR人は実際には社会に多くいる。彼らは文章が読めていない。しかし、その自覚はない。多くの場合、社会生活を送るのにそのレベルで十分だからだ」

「PR天才は?」

「優秀なPR人は、社会をリードするのに十分な力を持った存在だが、必然的に死角を持っている」

「実際にPR人と思われる人は典型的にいるわけだね」

「そうだな。検証という手順を経ずに直感から結論に至って違和感が無い人はPA人の疑いがある」

「それで、最終的な結論は?」

「AIによって全て人間が不要になる未来はかなり遠いと思うが、現時点でもAIで淘汰されうる人たちは存在する」

「それがPR人だね?」

「PR人より下もな」

「どこに問題があるの?」

「多くの人は、人間を脅かすAIの知性が、人の形をした機械としてやって来ることを想定していた。しかし、別にそんなことはなかった。人の形には何の特権性も無かったのだ。現実問題として、既に四角い箱に駆逐された人間の職種は存在する」

「では社会的に不要になった人間はどうすればいいの?」

「さて、どうするかねえ。現状で【おまえら、要らないから死んでくれ】とも言えないしねえ」

「答えは無いのかよ」

「かつて鉄腕アトムでは、人の仕事を奪うロボットの製造が禁止された未来が描かれた。しかし、人間が成果を受け取ることを前提にロボットを量産する大英断が下されたと描かれた。ああいう描写の意味を考え直す時期が来ていると思う」

「鉄腕アトムに話が回帰するのか」

「おそらく、鉄腕アトムの時代とは、機械が人間の仕事を顕著に奪い始めた時代だろう」

「その当時は肉体労働だね」

「そう。それが今度は頭脳労働まで奪いに来た時代だと思うよ」

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