「ボツ原稿からここだけサルベージしよう」
「で、そういう観点から行くと追憶の航海ってなに?」
「ヤマト2199で追憶の航海だけは普通の映画として評価可能な作りだった」
「予習は必要無いわけだね」
「そうだ。地球の危機からコスモリバースの受け取りと地球の復活までが描かれ、予習は必要無い。上映時間内に全てが始まって決着が付く」
「この【上映時間内に始まって決着が付く】ということが映画としては大切なんだね?」
「そうだ」
「でも、その常識が当てはまらない映画もあるんだね?」
「そういうことだ。それは一般的に良くある話だ」
「で、決着が付かなかった銀河鉄道999エターナルファンタジーの決着はいつ付くの?」
「それは言わない約束で」
「それで?」
「終わりは大切。上手く始まって上手く終わることは物語の必須条件。その点で、人気が出るとすぐ伸びて、人気が落ちるとすぐ切られる出版やテレビには絶望している。今はもう、映画が中心だが映画は特殊な例外を除いて一定の時間で終わる。売れても売れなくても終わる時間は同じ。終わり方が健全だ」
「それで?」
「実はその観点でヤマトよ永遠にを見ると引っかかることがある」
「それはなんだい?」
「この映画、実は【地球の危機】という物語と、【引き裂かれた古代とユキ】という2つの物語が存在している」
「うん」
「で、地球の危機は取りあえず二重銀河を吹っ飛ばして回避された。そこは無茶ではあるが物語に決着が付いている」
「それで?」
「ところが、【引き裂かれた古代とユキ】の物語に決着が付いていない。他の男に心を許してしまったユキと、他の女に心を許してしまった古代は、単に再会すれば決着するとは思えない。しかし、イメージシーンで再会するだけ。話が決着していない」
「浮気の後ろめたさを持った男女の再会を経ないと話が終われないわけだね」
「本当は、二人でアルフォンとサーシャのお墓に墓参りするシーンでもあれば良かったのだろう。そこで気持ちを吹っ切って、二人の新しい出発にすれば良い」
「同じ心の傷を持っているがゆえに古代とユキは寄り添って生きられるという結末だね」