「なぜこれを作ろうと思ったの?」
「子供の頃、航空自衛隊に来た新鋭機がファントムだった。プラモデルも出てきた。その時、親爺が作ったファントムはこれじゃないかと思ったので」
「それだけ?」
「そして、完成品を子供部屋に吊したが、すぐ落ちた。何度も落ちて最後に諦めた。思い出のファントム」
「実際に作ってどう?」
「スパロー4発のみだがタンクが多くて下面は淋しくない。たぶん、このファントムが親爺が当時作ったファントムそのものだろう」
「同じ金型?」
「おそらくそう」
「全く同じと考えて良い?」
「垂直尾翼のマークが違った気がする」
「デカールは金型とは別だね」
「まあ、そうだと思うがグレーで下面が白いカラーリングは同じだから些細な問題だ」
「実際に作った感想はどう?」
「凄く作りにくいよ。翼と胴体の間に隙間できるし。流し込み接着剤がまだ無い時代に、律儀にヤスリとパテで、これを丁寧に作った親爺は忍耐強かったと思う」
「他に気付いたことはある?」
「スパローがね、4方向全ての翼が付いているのかと思ったら3方向だけだった」
「自分で作ると分かるわけだね」
「それから、これこそが自分のファントムだと分かったよ。グレーで下が白の1/72ファントム。これがいちばんしっくりきた」
「子供の頃に刷り込まれているからだね」
「それに、このキットならおかわり何杯でも行けそうだ」
「新金型は?」
「パーツが多すぎる上に分割しすぎて段差ができやすい」
「旧金型ならすぐ組める?」
「すぐ組めない箇所もあるが、ずっと楽なのは確かだろう」