「ヤマトの世界には【嫌古代】問題が存在する」
「古代進の主人公性を否定したい人たちが存在する問題だね」
「そうだ。そもそも古代をどう解釈するかという問題以前に古代を活躍させないケースがある」
「それで?」
「実は、D51の炭水車を研究しているうちに【嫌重油】という問題に突き当たってしまったのだ。蒸気機関車の重油タンクは間違ったものであり、可能な限り見せたくないというものだ。静態保存機の大半からは取り外され、動態保存機のD51 498ですらタンクがテンダー内蔵型に改造されている。ともかく重油タンクを見せたくないという思想が根強いようだ」
「でも重油タンクが見たい人もいるのだね?」
「そうだ。1970年代のSL終焉期には重油タンク付きの蒸気機関車も多かった、当時を懐かしめば当然重油タンクは付いてくる」
「彼らからすれば、【なぜわざわざ重油タンクを否定するのか】と思うわけだね」
「そうだ。まるで【なぜわざわざ古代進を否定するのか】と同じように思えたよ」
「つまり、今の日本は何かを無かったことにしたい思想でいっぱいなのか?」
「そうだな。歴史的に言えば、昭和20年代を無かったことにしたい人たちは多いし、復興の踏み台にした朝鮮戦争を無かったことにしたい人たちも多いようだ」
「なんてことだ」
「ちなみに、都立多摩図書館で時間待ちがあったので朝鮮戦争の本を見たが良かったぞ。まだ戦艦が現役で、航空機もコルセアが飛んでいる。敵もT-34だ」
「ひぇ~」
「まあそれはともかく。何かを無かったことにしたい思想は根強いものがあると気づいた」
「それがヤマト世界では【嫌古代】として噴出したわけだね」
「そうだ。しかし、そういう否定は否定される側からすれば溜まったものではない。不満が噴出する。D51に関してはもう終わった話だから致命的な問題には発展していないと思うし、鉄道模型の世界のD51にはいくらでも重油タンクがあるからそれで良いと言えば良いのだろうが、【嫌古代】はそういうものではなかったようだ」
「本来主流派だった古代ファンの不満が根強いわけだね」
「だからヤマト世界は強制的に古代を活躍させざるを得ない方向にシフトしつつある」
「重油タンク愛好家はそこまで強くないからD51 498の重油タンクはテンダー内に隠される方向で改造されてしまうわけだね」