「ヤマト1974の物語構成には不満が多い」
「矛盾が多いかい?」
「それは物語構成というより設定の問題だからね」
「じゃあ、どのへんが不満なんだい?」
「大きなところでは、このへんだな」
- カットされた展開が多い
- やたらバラン星までが長すぎてバランスが悪い。帰路も短すぎる
「なるほど」
「しかし、編集の美学、カットすることの美学を意識すると、少し違った風景が見えてくる」
「というと?」
「カットされた展開とは、裏を返せば放送期間の短縮で弾き飛ばされた要素であって、26話の構成を考えるなら最初から仕切り直して新しい物語を構成することになる」
「つまり、どこをどう叩いても収まりようが無い要素だってことだね」
「そうだ。では、カットされた要素を1つ1つ検証していくと、確かに物語を構成する上で要らない要素、邪魔になる要素、冗長な要素ばかりだと分かった」
「つまり、実際に放送されたヤマトは適切?」
「そうだ。かなり出来が良い。関係ない要素を突っ込む余地が存在しない」
「しかし、バランスの悪さという問題はあるね?」
「そうだ。どうしてもバラン星を強調しすぎてアンバランスだ」
「それじゃ君の考えはどうなんだい?」
「バラン星前のエピソードからドメルとの結びつきが弱いエピソードをいくつかバラン星後に持って行くと良かったのではないか」
「たとえば?」
「宇宙要塞とビーメラ星はバラン星後に持って行っても良かったような気がする」
「じゃあ、帰路がたった1話しかない問題はどうするのさ」
「そこは問題だな。ともかくヤマト1974の全エピソードはガミラスと密接に結びついている。ガミラス崩壊後にやっても良い話はラスト2話(イスカンダルとデスラーの復讐)しかないのだ」
「ひぇ~」
「ヤマト2199は最終回を2つに分けるという選択肢を使ったけれど、あれはあまり上手い手ではなかった」
「デスラーの襲撃と、森雪の復活は不可分だってことだね」
「そうだ。デスラーの襲撃と、森雪の復活は別エピソードにしない方が良いような気がする」
「じゃあ、帰路の増量は難しい?」
「いや、最初に提示した主題の回収という意味では、他にやりようがあったのではないかと思った」
「やりようとは?」
「ヤマト1974とそれを踏襲したヤマト2199では、第1話で沖田が宇宙から目撃した赤い地球を受けてそれが青く戻ることで話を終わらせた。しかし、これは少々短すぎて分かりにくい」
「じゃあどうするんだ?」
「いろいろ考えた。夕日に眠る大和を見上げるシーンを受けるなら、最終的に元のドックに収まったヤマトを見上げて終わるのも良いかもしれない。ヤマトはもう海の底、ということで青い映像なら説得力がある」
「ふむふむ」
「でなければ、第1話冒頭。冥王星付近をパトロール中の旧沖田艦率いる地球艦隊がワープアウトしてくる未知の物体をキャッチする。ガミラスならもう闘う力は無いと緊張するところに出現するのがヤマト。【地球艦隊に告ぐ。ただちに砲口を納められよ。こちらは宇宙戦艦ヤマト、放射能除去装置を受領して帰投せり】と通信が入る。歓喜の表情に変わる旧沖田艦ブリッジ」
「それも主題の回収のやり方だね」
「その亜種バリエーションとして、第1話冒頭にガミラス艦隊が二列で話を描くカットに戻って、ヤマトと平行に航行する地球艦隊というビジュアルも良いかも知れない」
「それで話が終われるわけだね」
「あるいは地下都市の光景を主題と見なして回収するなら、青い地球で復興が開始されて新しい都市を建設中の光景で終わるのも良いかも知れない」
「それだけ?」
「建設中の都市を背景にして、古代が雪にプロポーズしてもいい」
「確かにプロポーズは結末たり得るね」
「ヤマト1974は物語としての完成度が非常に高いから、いくらでもラストの構成案が浮かぶ」
「裏を返せば、完成の高いヤマト1974だが、最終回だけは苦しいわけだね」
「まあ、確かにその通りだ」
「ああ、苦しい。本当になぜ生き返ったのか分からない森雪など、まさに苦しい」
「まさかと思うが」
「まるで、ヤマト2199でなぜヤマトは平気なのにドメルの船だけイオン乱流に巻き込まれたのか分からない展開みたいで、凄くヤマト2199っぽいよ」
「こらこら。ヤマト1974が2199を真似できるわけがないだろう」