「実は、【ヒス君、君は馬鹿かね?】だと思っていたが、確認のためにBDで当該シーンを再生したら【ヒス将軍、君は馬鹿かね?】だった。そして、割とヒスは沖田に感服して興奮している感じで話をしていた」
「つまりなんだい?」
「ヒスはね、結構真剣に一連の経緯を見ていて、艦長沖田の采配にかなり感服していたのではないかと思う。将軍という軍事指揮官の立場としてね」
「ヒスは文官ではない?」
「将軍と言われている以上、武官だろう」
「八方美人の柔和な武官というのはあり得るの?」
「あり得るとも。軍隊は女々しい体質の組織だ。派閥も多い。そういうものから距離を取って等距離外交でバランスを取ることに専念する生き方もあるだろう」
「そういう人は必然的に【自己主張の少ない柔和ないい人】になるわけだね」
「そうだ。どの派閥にもけして敵対しない。敵とは認識されない。そのためには能力をひけらかしてはいけない。自己主張は表に出さない」
「表に出すとどうなるの?」
「デスラーに射殺される」
「自己主張が少ないって、馬鹿でもいいってこと?」
「馬鹿だとエサが投げられると食いついてしまう。エサがあっても気づかなかったふりができる賢さだけが、ヒスタイプの人間を作りうる」
ブレーキ役の問題 §
「結局、ヒスは本来ならデスラーのブレーキになるべき立場だった」
「行きすぎたら引き戻す役だね」
「そうだ。でも、ブレーキとしては十分に機能できなかった」
「結局【遅まきながら地球との和平を】と言ったときは既に遅かったわけだね。とすれば問題はどこにあるの?」
「ヒスは知性を無駄遣いしたよ。人畜無害なイエスマンに自分を仕立てるために使ってしまった。その結果、副総統になれたが、結果としてガミラスの崩壊を阻止できなかった」
「じゃあ、もっと自己主張を出すべきだった?」
「出していたら副総統にはなれなかっただろう。そうなればデスラーと上手くやっていけない。デスラーは異論など許さないからだ」
「難しいね」
「難しいのだ」