「そうそう。最近気付いたことがある」
「それはなんだい?」
「フィクションの映像作品で、艦隊の各艦の位置が極端に近すぎるように感じられる場合が昔から意外と多い。その原因じゃないか、と思う問題に最近気づいた」
「なるほど。では、原因かも知れないものってなに?」
「写真の圧縮効果」
「それはなんだい?」
「遠い物体間が近くに見える効果。望遠レンズで起こりやすいが望遠レンズだけで起こるわけではない。標準レンズで撮って一部を切り取っても発生する効果だ」
「つまり、航空機が激突しそうに近くを飛んでいる写真の発生原因だね」
「そうそう」
「それが艦隊描写と何の関係があるの?」
「艦隊の写真は遠距離から撮影されることが多いから圧縮効果の影響を受けやすいのさ」
「なぜ遠く?」
「近くから撮ろうと思っても、そこはほとんど海だぜ」
「ぎゃふん」
「そういう写真を参考に描いた場合、距離感を見誤ってしまう可能性があったのではないか」
「それが君の仮説だね」
「そうだ」
「君は艦隊各艦の距離をどうやって理解した?」
「昔の本にあった南雲艦隊の第1警戒航行序列とかの配列の説明図を見てね。そこに書き込まれている距離の数字が思ったより大きいことに驚いた」
「写真ではなく数字で理解したのか」
「そうだよ」
「じゃあさ。実際にどれぐらいの数字なの?」
「すぐ出てこないが、ネットを検索して出た数字だと、真珠湾攻撃時の南雲艦隊の第1警戒航行序列で、赤城と後続する加賀の距離は1.85kmだな。赤城から艦隊先頭で警戒している駆逐艦までの距離は20kmになる」
「1.85kmとは?」
「赤城の全長は約250m。だいたい全長の7倍の距離を取っていると思えば良いのではないか?」
「ヤマト的に言うとどうなんだ?」
「ヤマト2199の冒頭で正面から見た沖田艦隊が針路を変えるカットはあまり気にならない。各艦は近いが、圧縮効果が利いたような映像になっているからな」
「じゃあ、失敗事例は?」
「すぐには思い付かないな。ヤマト2199は、距離感については割と上手くやったんじゃないか?」