「デスラー総統はシュルツに対して、戦って死ねと伝えた」
「それがどうした」
「では、【戦って死ね】はガミラスの文化だろうか。それともデスラーの思想だろうか」
「ガミラスは兵士をゴミのように使い捨てではないの?」
「実は、シュルともガンツも【戦って死ね】を驚きを持って迎え入れているので、ガミラス人の常識ではなかった……つまり、【戦って死ね】という文化はガミラス固有ではないと考えられるのだ」
「ではデスラーの思想?」
「ところがだ、デスラーが誰かを処刑したり、誰かを助けたりするといちいち周囲に驚きが発生する」
「つまりなんだ?」
「生かしても殺しても驚きが起こるということは、予測不可能、つまりデスラー自身の行動にも一貫性がないことを意味する」
「思想ですら無い?」
「そうだな。これはデスラーの思想ですらない。生かすも殺すもデスラーの気分次第。そういうことだ」
「だから、一度負けたらシュルツには死を命じるが、ドメルは助けるわけだね」
「そう。デスラーを不快にさせた人間には死を。デスラーを気持ち良くさせた実績のある者は多少の失敗があっても許してしまう。そういう甘さがある独裁者だ」
「ダメな独裁者?」
「独裁者というのは、たいていダメなんだがね」
「ぎゃふん」
「しかし、そのダメさこそが、デスラーを魅力的なキャラクターにしていると言えるな」
「完全無欠の独裁者に人気など出ないって事だね」
「でも、為政者には欲しくないタイプだね」
「国を滅ぼす亡国の支配者だね」
「負けを経験して人格が丸くなってからが勝負だろう」