「実は小説の構想を練っているときに、地球を救うための7隻の戦艦【ビッグ7】が出発するというアイデアを得てね。その際、突然、『大銀河シリーズ 大ヤマト編7vs7』というタイトルを思い出してね。アイデアが被っていると困るから確認のために大ヤマト零号をネットでオーダーしたのだ」
「見たことないの?」
「初見だ」
「見ようと思ったことはないの?」
「最初に見ようと思ったときは時間が無かった。2回目はかなり価格が高騰していて見送った。三度目の正直」
「それで、まずはVol.1を見たんだね?」
「見た」
「それでどうだった?」
「7隻の特別な戦艦という要素は無さそうなのでほっと一息だ」
「話はそれで終わり?」
「いや、ここからが感想の本題」
「どんな感想だよ」
「良く出来てる」
「は?」
「時代状況や置かれた立場等を考慮すると、完成度は非常に高い。復活篇よりは落ちるがヤマト2199よりもずっと高い」
「どのような点を見てそう思うのだい?」
「こういったところだな」
- 物語的な構成がちゃんとプロの仕事である
- キャラクターの描き方が年齢相応、立場相応でなされている
- 登場人物が人間くさい。感情移入できる
- CGのカメラアングルが上手い。というか、本来期待される平均レベルである
- ヤマトに小さな窓がたくさん付いていて巨大感が表現されている
「なるほど」
「そもそも、大ヤマト零号にはそれほど期待はしていなかった。しかし、成り行きで買うにあたって、あることに注目した」
「それはなんだい?」
「監督勝間田具治という名前」
「それにどんな意味があるんだい?」
「わが青春のアルカディアは好きな映画なのでな。それの監督であれば、もしや……という気がしたのだ」
「その予感は当たったわけだね?」
「そうだ」
「で、結局Vol.1を見てどうだったんだ?」
「以下のようなことを言ったばかりだがね」
「いや、そもそももうヤマトというタイトルの新作は作らない方が良い。あるいはせめて、ヤマトという名前を借りただけの別物を作れってことだな」
「確かに言ったね」
「まさに、ヤマトという名前を借りただけの別物がそこにあった。自分の意見が十年以上前に既に実現していたのだ。素晴らしいではないか」
「喜んでる……」
「中身も良かった」
「後発でそれ以下と見なされたヤマト2199以降の立場が無い……」
これはヤマトなのか? §
「でもさ。これは本当にヤマトなのかい?」
「ヤマトではない……と思った」
「どのあたりがヤマトではない?」
「雰囲気的にはアルカディア号に近い。ただし、りんたろう版アルカディア号ではなく、勝間田版アルカディア号だ。これは、りんたろう版ハーロックよりも、わが青春のアルカディア、無限軌道SSXが好きな人にはジャストミートだろう」
「ちょっと待て。話がややこしくなってきたぞ」
「そうだね」
「ヤマトじゃなくて、勝間田版アルカディア号だっていうのか?」
「だが、それだけではない」
「じゃあなんだよ」
「後から付いてきて強引に乗りこむ少年というのは、実はオーディーン的な表現なんだよ」
「はあ? あれは松本零士系というより西崎義展系じゃないのか?」
「ところが、オーディーンも【プロデューサー:勝間田具治】という形で関わっている。勝間田具治作品という切り口で見ていると、整合してしまうのだ」
「えー」
「しかも、多民族国家的な表現は松本零士世界観とも少し違う」
「つまり、なんだい?」
「オーディーン的な味付けを加味したわが青春のアルカディア的な雰囲気を備えつつ、実は全く異なる世界観を付け加えた独自性も高い野心的な面白い作品だ。はやく続きが見たいと思うよ」
「DVD-BOXを買った以上続きはもう手元にあるだろう」
「だから見るよ。ゆっくりとな」
オマケ §
「これで多数派のりんたろう版ハーロックファンを敵に回したな」
「とっくの昔にそうだよ。無限軌道SSXの方が好きと言った時点でな」
「その前に、わが青春のアルカディア好きって時点でもうダメだろう」
「ダメだな」
「じゃあ、おしまい?」
「いや。WikiPediaで面白い記述に気付いた」
「それはなんだい?」
全盛期の日本映画界で実写の助監督経験を持つ希少な演出家である
「これにどんな意味があるんだ?」
「今のアニメをダメにしている人たちはアニメを見てアニメ業界に入った人で、知識経験が狭いからアニメのスケールが小さくなる。アニメ以外の経験があれば世界が広がる」
「特に【全盛期の日本映画界】なら経験は極上ということだね」
「極上なのか地獄なのかは知らないけどな」