「実は突然【明日は14日だ】と気付いた」
「映画が安くなる映画館も多い日だね」
「というわけで、どうしても見たい映画があったら見ても良いかと思ったのだ。というか、マイティ・ソー バトルロイヤルだね」
「それで?」
「実はTOHOシネマズ府中の上映リストを見て愕然とした」
「なんで?」
「マイティ・ソー バトルロイヤルの上映は今日まで。しかも1日1回だけ。しかも、いちばん小さいプレミアスクリーン」
「えー」
「じゃあ、見ようかと決意した」
「ふむふむ」
「プレミアスクリーンは椅子が良いし、最前列でもさほど破綻無く画面が見える最良のスクリーンだし」
「なるほど」
「しかし、もう1つ理由ができた」
「それはなんだい?」
「原題がThor: Ragnarok。それなら見たいと思うようなタイトルだ。なぜ邦題がこんな変な名前かは分からない」
「えー」
「というわけで見てきた」
「それでどうだった?」
「これは良く出来た良作。見て良かった」
「どこが良かった?」
「全部良かったが、特徴的なのが予測を完全に裏切りつつも話がきちんと収まるべきとことに収まるところ」
「裏切るってどういうこと?」
「たとえば、この成り行きだとムジョルニアが復活することを期待するが復活はしない。ロキが黒幕であることが暗に期待されるが実は黒幕にはならない。ハルクやヴァルキリーなどの正義の属性を持っているはずの者達もなかなか味方にならない」
「じゃあ、きちんと話が収まるとは?」
「ムジョルニアは復活しないが、それに匹敵する超最終兵器は映画の冒頭で伏線がきっちり敷かれている。見たら納得」
「なるほど」
「それに、アスガルドが滅んでしまい、みんな船で脱出する結末はソーの物語が持つ神話性からすればむしろすっきりと収まる」
「普通のハリウッド映画ならアスガルドが救われて終わるわけだね」
「でも、この【神話性】の高さゆえに、エクソダスは馴染む結末なのだ」
「良く出来てると思うわけだね」
「もう1つ良いのは、意外と【間抜け】なシーンが多いこと。【間抜け】をきちんと使いこなしている。物語作りのスキルが高い」
「間抜けとは?」
「たとえば、冒頭、吊されてぐるぐる回っているソー。シリアスな話をしているのに相手に向き合い続けることができない」
「間抜けな光景だね」
「あと、格好を付けてもすぐ助けが飛んでこないところもね」
「それは重要?」
「もちろんそうだ。ここで緩急を付けなかったら物語が平べったくなってしまう。派手な見せ場に突入する前には、緊張を解放するような【ため】があった方が良い。そうしないと、盛り上がりが足りない」
「俺の正体を見せてやると格好を付けて飛び降りたら、正体を見せる前に地面に激突して伸びてしまうとか。そういう部分だね」
「そうそう。そういう間抜けさを使いこなせている作品とそうではない作品は意外と露骨に差が出る」
「たとえば? 上手い作品ってどんなの?」
「1974年の宇宙戦艦ヤマトなんて上手いぞ。間抜けな顔をした古代進の顔がけっこう見られる」
「じゃあ下手なのは?」
「印象に残らないとすぐ忘れちゃうからあまり例示できない」