「子供の頃は、アニメのジャングル大帝を見ていたよ」
「それで?」
「でもね。ずっと昔、若い頃にジャングル大帝を似非ヒューマニズムと批判する言葉を見てショックを受けたことがある」
「それで?」
「とあるアニメを見てそのことを思い出した」
「似非である理由は?」
「感動的なアニメを偽装していたからさ。まさに、似非ヒューマニズムだろう。あれに感動したり泣いたりしてはいかんだろう」
「でも、感動しちゃう人も多いのだね?」
「多いよ。ジャングル大帝に感動した人が多いことと同じだ」
「なるほど。でも、それは偽装された感動なんだね?」
「そうだ。表面的に偽装しているだけだ。本当に重要なことからは逃げ続けている。それが何を意味しているのかはジャングル大帝を見れば分かる」
「見ても分からない人も多いと思うよ」
「だろうね」
「で、この話はこれでおしまい?」
「いいや。実はさらば宇宙戦艦ヤマトの感動もそれに近い。上映当時から批判は多くあったが、確かにラストの涙は安っぽかった。まあ、今見た、とあるアニメよりも遙かに出来は良いけどね」
「どのあたりが似非?」
「やはり勝つために死ね、と沖田が語るのは沖田らしくないし、古代の特攻は雪が死んでやけになっただけにも見える。テレサが真実の愛を古代に見たと言うから、そこに理想の愛があるように思えるが、実際にはけっこう疑わしい」
「ひぇ~」
「でも泣いた人は多数」
「そんな客を冷ややかに見ている目があったのかい? つまり君は冷ややかに見ていたのかい?」
「いや。映画館では泣いてたよ」
「ダメじゃん」
「やはり経験と知恵が足りないガキはダメだな」
「自分の子供時代だろ」