「ヤマトでは全員一致というシーンがしばしば出てくる」
「乗組員全員、欠員ありません、とか、退艦者ありません、とかだね」
「でも、それはせいぜい百人ぐらいの規模だから説得力がある話。千人近い人間が全員一致で行動したらむしろ気持ちが悪い。何らかの行動の強制が伴っている個性抑圧とセットではないかと思えてしまう」
「それはディストピアだね」
「それに、さらば宇宙戦艦ヤマトに関して言えば、地球の多数派には背を向けるわけで、【みんな仲良く・みんな一緒】という文化にはまるで縁遠い」
「それは大変だ……」
「そして、もっと本質的な問題としてほとんどの時間ヤマトファンは孤立した少数派であり続けた。つまりは、【みんなと同じ】という文化に背を向けたからこそヤマトファンであるわけだ。そこで、全員同じであれという要求はそぐわない」
「強烈な反発を食らいやすいわけだね」
「実はヤマト2199以降【僕達のヤマト】という路線を強く打ち出しているが、そういうみんな同じものを欲しがって当たり前の世界には、当然のように反発が付いてくる」
「それにも関わらず、なんでそんな路線で突っ走るの?」
「俺達はヤマトを分かっている、俺達がヤマトを牽引するという驕りがスタッフにあるのだろうな」
「驕りか」
「ついでに言えば、彼らを支持するファンもいるから、尚更彼らは【なぜ支持しないファンがいるか分からない】という状況にも遭遇するだろう」
「でも、それは画一的な【みんな同じ、みんな仲良く、みんな一緒】という文化がそもそも宇宙戦艦ヤマト的ではないからだね」
「だから、アニメが動く同人誌である限り致命的な問題は引き起こさない。同人誌ならそれは作り手の価値観が出ているだけで、絶対的な尺度ではないからだ」
「でも、プロが作った商品という顔になった瞬間に地獄の釜が開くわけだね」
「もう開いてる気もするがな」
「えー」
「副監督がサンドバックになって少し緩和されている面はあると思うが」
「じゃあさ、君はその状況を解決するために何をする気だい?」
「何もしようとは思わない」
「なんでだよ」
「金も時間も無いからだ」
「なぜ金が無いの?」
「医療費がどんどん増えてな。機材も耐用年数が来て買い換えや修理の出費が増えているとてもじゃないが、見返りのない趣味的な分野に出せる金は無い」
「新たなる旅立ちのEPは買えるのに?」
「あれは500円だったからな。たまに500円なら出せないこともない」
「1800円は?」
「無理だな。そもそも映画館に行くための時間が勿体ない。やることは多いのだ」