「ヤマト2199において、もっとも理解できないトンデモ思想は波動砲を悪とする考え方だ」
「なぜ悪ではダメなんだ?」
「ヤマト一隻で大帝国に立ち向かえる根拠そのものだからさ。もし波動砲がなかったら、ヤマトは数で圧倒されて沈む」
「波動砲抜きのヤマトはそもそも話が成り立たないわけだね」
「そうだな。だから波動砲抜きのヤマトの反乱も成立しない。明らかに阻止されて終わる」
「ははは」
「しかし、問題はなぜそういうトンデモ思想が描かれてしまうのか。なぜ受容されてしまうのかだ」
「そっちの方がむしろ問題ということだね」
「そう。大問題。というか、非常に大きな社会病理と接続していることが見えてきた」
「それは何の問題だい?」
「トンデモ核兵器忌避思想だよ」
「トンデモ核兵器忌避思想とは?」
「核廃絶だよ」
「いいことじゃないか」
「もちろんそうだ。だが、現実に核保有国は核保有国であり続けている。数は減らしてもゼロにはしない。あれは民意なんだ」
「なぜ民意なんだい?」
「核兵器を持っていると、それだけで国際的に有利に立ち回れるからだ」
「じゃあ核兵器忌避思想ってなんだ?」
「要するに、国家間の序列を永遠に固定しようとするための思想だ。核を持たざる国には【核は悪いものです】【持つべきではありません】……と思い込ませた方が良い。そうすれば、自発的に核武装しようとは思わなくなる」
「核武装しなければ永遠に序列を固定できるわけだね」
「そうだ。格下の国家は永遠に格下だ」
「でもさ。核兵器って使ってしまったら終わりじゃないか」
「そうだ。実際に使ったら終わりだ。あれは恫喝兵器だからな。使える状態を維持することが重要なのであって、使ってはだめだ」
「で、それがどうしたんだ?」
「要するにね。波動砲忌避思想は核兵器忌避思想と同じ。それが善であり正しいという思想性は、要するに国家の序列の固定化を意味する」
「つまり、宇宙戦艦ヤマト世界で言えば永遠に地球はガミラスの格下として扱われちゃうわけだね」
「そうだ。そういう思想性だ」
「つまり、現在の日本が持っているトンデモ思想性がストレートに反映したものがヤマト2199と思えばいいわけだね?」
「そうだと思うよ」
オマケ §
「まあ、【現在の日本が持っているトンデモ思想性がストレートに反映したもの】と言える映画等はけっこう多いがね。たまに酷い映画を見るよ」
「たとえば?」
「原発にヘリを墜落させるというトンデモ映画があったな」
「なんだそりゃ」
「あと、シン・ゴジラも怪獣要素を除外しても変な思想性に凝り固まっていて、見ていて苦痛だったな」
「なるほど。シン・ゴジラとヤマト2199の距離感の近さを考えるとうなずける話だね」
「しかし、距離感の問題では無いと思う。おそらくマスコミや映像製作の世界は、トンデモ思想で一杯だ」
「えー」
「テレビ見てればそれはよく分かるし、嘘か本当かトンデモ意見に賛成しないと業界でやっていけない……というツイートを見た記憶もある」
「まあ確かにテレビは変な意見を伝えすぎるね」
「だから、それを普通だと思って受容してしまった人たちも割とそういう思想性を持つ」
「昔からよくあるパターンだね」
「たぶん、良心的な製作者はそういう話題を避けて通っているよ」
オマケ2 §
「で、君がトンデモを語る根拠はなんだい?」
「子供の頃はUFOマニアだったからな。真実がどのあたりにあって、人がどういうメカニズムで騙されていくのかはよく分かったぞ」
「どんな子供だよ」
「UFOを体験しようと待ち構えている冷静な子供の前にはけして出てこないUFO。これはおかしいと思うだろう?」
「えー」
「そういえば、さらば宇宙戦艦ヤマトも初期の企画は敵がUFOだったな」