「1980年代。かつて、おいらはCPUにV30を搭載したPC-9801VM2を所有していた」
「それで?」
「後継機はCPUにV60を搭載したマシンになるだろうと思って楽しみに待っていた」
「待った甲斐はあった?」
「実際に出てきた後継機は286をCPUとするVX2でガッカリした。VX2は買っていない」
「なるほど」
「でもさ。最近、この歴史に疑問を持ち始めた」
「理由は?」
「Vシリーズの後継CPUを搭載した機種は存在するからだ」
「それはなに?」
「カスタムV50のPC-8801VAシリーズと、V33の98DOシリーズだ」
「VM2と関係ありそうにはみえないけど」
「うん。いろいろな都合で変形を受けた結果、迷走したが本来は違ったのではないか」
PC-9801VA2 §
「PC-9801VM2はグラフィックの色数が8色から16色に強化されている。とすれば、その後継機はもっとグラフィック性能が強化されるのではないか。同時にオーディオ機能も進化するだろう。すると、98互換の88VA的な機種が想定できる。これを仮にPC-9801VA2と呼ぼう」
「VシリーズCPU搭載でAV強化98だね」
「そうだ。しかも、V30の8080互換モードをZ80互換に拡張すればPC-8801互換も実現できる。いわばNECの技術力を誇示する最強の98だ。88と互換性が低いこともこれで解消できる。NECの最終兵器とも言える製品になっただろう」
「なぜ実現していないんだい?」
「そんなものができたら他の製品が売れなくなるからだろう。あまりに万能過ぎる。それにビジネス用機にAV強化は相応しくないという意見も想定できる」
「なるほど」
「結局、AV強化は88でやれということで、98互換機能は大幅に後退して主に88シリーズでやるしかなくなってしまったが、もともとも88互換はオマケレベルだったから中途半端な機種になってしまったのではないか」
「それが君の妄想だね」
PC-9801VD2 §
「88の時代が終わりつつある時期に、88シリーズで88VAをやるのも苦しい。やはり本格的な98互換と88互換が欲しい……ということで、更に後継機はPC-9801VD2と想定してみた」
「VD2のDとはなんだい?」
「DUALのDだ。つまり両互換だ」
「なるほど」
「CPUに286互換のV33と8ビットのμPD70008を詰んで互換度アップ。今度は88VAと違って98互換も本格的に実現した。88互換も性能アップだ。まさに、実現すればほとんどのソフト資産を取り込める最強パソコンになっただろう」
「でも実現していないね?」
「そう。拡張スロットは少なく、98と88の完全な置き換えには使えない中途半端なスペックで発売することになり、しかも、98DOという明らかにメインストリームと隔絶された変な名前になってしまった。明らかにメインストリームの98シリーズの邪魔はさせないという意思表示だろう」
「つまり、仮想上のPC-9801VD2は98DOに化けてしまったのだね?」
「事実かどうかはしらない。しかし、NECの技術力を誇示する最強マシンが誕生する可能性はあったと思う」
NEC帝国の落日 §
「今手元に動く98DO+があるが、これがNEC独自技術の最終到達点だろうなと思う」
「どのあたりでそう思う?」
「98と88との高い互換性。NECの独自CPU。本来あまり似ていないはずの88と98を切り換えられる回路設計などだ」
「98DO+は良いものだと思う?」
「実際に使ってみるとこれはいいぞ。拡張性が制限されているから、そこは問題だが。単にソフトを動かして試すだけなら遊べる。しかも速い」
「そういう技術を活用して未来につなげられなかったのがNEC帝国の没落を招くわけだね」
「そうだ。実際にはこけたOS/2を意識過ぎて286を採用してしまったのが間違いだったのだろう。たぶん、かなり技術センスのない人たちが主導権を取ってしまったのだと思うよ」
オマケ §
「しかし、なぜ君が98DO+にこだわる理由が良く分からない」
「それはね、98DO+がおそらく最後にして最強のN-BASICマシンだからだよ」
「どういうことだい?」
「おそらくN-BASICの最終バージョンである1.8を搭載し、8MHzのμPD-70008をノーウェイトで実行できる。スピードは本家PC-8001より圧倒的に速いはずだ」
「つまり、98DO+は98と88の両互換ではなく。98/88/80のトリプル互換ということだね。しかも速い」
「うむ。これは素晴らしい特徴だ」