「劇場版若おかみは小学生!を見て考えたこと」
「それはなんだい?」
「仮に50歳を過ぎた若くない大人がアニメを見るために映画館に行くなら、年齢相応の映画というものがあるな、ということ」
「劇場版若おかみは小学生!は50歳を過ぎても見て良いもの?」
「結局、森雪にときめいた世代は、一龍斎春水(麻上洋子)さんが声優として出ているこういう映画こそ本当は相応しいのではないだろうか。明らかに作りが子供向けのヤマト2202などよりも、こっちの方がずっとマッチするはずではないだろうか。そんなことをふっと思ったよ」
「ヤマト2202は子供向きなのかい?」
「そりゃそうだろう。善し悪しの評価は別としても、若い人に合わせて感性をアップデートしてしまったからな。古いファンには合わない面が多々ある」
「じゃあ、小学6年生の女の子が主人公の映画が50歳を過ぎた年配が見ても良い映画と言えるのかい?」
「そう。主人公こそ小学6年生ではあるが、中年も年寄りもみんな年齢相応の風格で描かれていて、いくらでもそういう切り口から入っていける。実は全く子供向きアニメの作り方をしていない。実は子供向けではなく、子供が主人公のアニメなんだよ」
「ヤマト2199や2202は違うのかい?」
「ペンギンハイウェイも違う。あれらの作品には本当の意味での大人がいない。万能の子供が大人の役割を担ってしまうが、その結果として大人を大人として描くことができなくなってしまう世界だ」
「それが子供向きってことだね」
「子供向きが全部そうだというわけでもないが、割とよく見るパターンだね」
「で一言で要約するとなんだい?」
「ヤマト2199に無いと言われた危機感、あれが劇場版若おかみは小学生!にはある。まあ地球の危機はないけどね。個人レベルでは通常の生活ができなくなるほどの激しい危機感というものが描かれる」
「そっちの方が良いわけだね」
「地球の危機などというものはそう簡単には発生しない。そのことをある程度の年齢に達すると分かってしまう。しかし本物の危機はいくらでも世の中に転がっていて、それらは意識が消し飛ぶほどのインパクトを人間に与える。この世界の片隅にで、すずさんの片腕が吹っ飛ぶのも同じような表現だね。だから、そういう危機を上手く描ければ、それは説得力や魅力に化ける」
「それは設定の整合性という意味かい」
「実は、劇場版若おかみは小学生!も設定の整合性という意味ではけっこう甘い。問題にされているのはそういうことではない」
「じゃあ何だ?」
「さてなんでしょう」
「教えてくれないのかい?」
「教えちゃうと必ず解釈を暴走させる人がいて危ないから教えない。さすがにおいらも学んだ」