2018年12月02日
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銀河鉄道999 ANOTHER STORY アルティメットジャーニー 1感想 あるいは 大統一松本場理論 あるいは ヤマトと999は並んで飛んでも良いのかという問題

Written By: トーノZERO連絡先

「銀河鉄道999 ANOTHER STORY アルティメットジャーニー 1を読んで腰を抜かしたので感想を書こう」

「なぜ腰を抜かしたのだい?」

「Gヤマトが登場し、古代将(すすむ)が星野鉄郎に敬礼したからさ。ついでに古代は相原とじゃれ合ったからさ」

「それだけ?」

「ビッグアースに向かう宇宙移民船団を護衛するGヤマトが復活篇に見えてなあ」

「古代進ではないんだね」

「たぶん権利関係の問題で名前を変えているだけで事実上同一人物と考えて良いだろう」

「それで、君はこの作品に何を見た」

「大統一松本場理論」

「それはなんだい?」

「松本作品は同じ世界観を共有しているはずなのに、実は個々の作品ごとに整合しない世界観を持つという矛盾があった」

「アルカディア号誕生の経緯が作品ごとに違ったりするわけだね」

「そう。実は同じ銀河鉄道という設定を共有しているはずの銀河鉄道999と銀河鉄道物語ですら世界観が整合していなかった」

「なるほど」

「そういう状況下で、ヤマトと999が並んで宇宙を飛んだとして、それは燃える展開と言えるのだろうか」

「言えないね」

「まあ、それを望むファンもいるという話は聞いているが、おいらは全く整合しないからダメだと思っていた」

「それで?」

「でも、この作品はワダチ的なビッグアースに向かう宇宙移民船団も、銀河鉄道物語そのものの世界も、ミー君がいる世界も、コスモウォーリアー零的な機械化人が迫害される世界観も、地球が消滅してしまうエターナル・ファンタジー的な展開も、もちろんヤマトも999もメタノイドも全てを包含して違和感無く作品を成立させてしまった」

「なぜそんなことができるの?」

「作品の軸をきちんと自分で作って、後は全て原作無視さ」

「無視かい」

「そう。もともと地球に戻った鉄郎は戦っていたはずなのに、そういう展開は全て無かったことになり、機械化人のための病院で働いている」

「一部のファンは怒りそうな話だね」

「怒るだろうね」

「君はそれでいいの?」

「おいらはコスモウォーリアー零が好きで、コスモウォーリアー零は迫害された機械化人という展開を含むからいいよ」

「えー」

「そうすることによって、ある種の世界観が整合していく。そのようなプロセスを繰り返して、バラバラだった世界が一つになって行く。その範囲は純粋な松本ワールドだけではない。アニメなどの周辺文化も全て貪欲に吸収して汎松本文化圏の周辺領域まで含めた全てを統合して一つの世界を提示した。この偉業に対して、【大統一松本場理論】の名を贈りたい」

「【大統一松本場理論】とは大きいね」

「もともと大は松本零士世界の定番だがね」

「ぎゃふん」

「実はこれは松本零士本人には作れない理論なのだ。周辺文化は、松本文化の一部とは言いがたいので。あれは、松本キャラが活躍する周辺作品も【松本作品】として親しんで育ったクリエイターにしか作れない」

「統一は初の偉業なのかい?」

「そうでもない。実はワダチにおいて、松本宇宙SFと松本四畳半の統合という野心的な試みが既に行われていて、おそらく短編ではもっと前からある。ワダチはその集大成なのだろう。ワダチこそ、【大統一松本場理論】の前段階に存在する【統一松本場理論】そのものなのだろう。そういう意味で、本作にビッグアースへの移民船団が存在する意味がある」

「【大統一松本場理論】が存在すると何が起きるの?」

「実は、メーテルは理想のヒロインから解放され、星野鉄郎はただの人間になることができる」

「メーテルが理想のヒロインから解放されるってどういうこと?」

「少年の日の幻影から解放されたメーテルはただの思い悩む一人の人間に過ぎない。その人間を助けるために、誰かが旅立つのは自然な成り行きになるのだよ」

「つまりなんだい?」

「新しい物語が語りうる」

旅立ち §

「本作の旅立ちを決意するシーンは非常に秀逸だ」

「どこが良いの?」

「まずエメラルダスが誘いに来る」

「おっさんが誘いに来るのとは違うわけだね」

「そして、最強の女宇宙海賊だったはずのエメラルダスが限界を露呈する。鉄郎がやるしかないとまで言われてしまう」

「それでホイホイ行ったら鉄郎はお子さまだね」

「そう。ホイホイとは行かない。鉄郎ももう大人の世界に足を踏み入れている。しかし、メーテルのために旅立つことを決意する。その不完全性が人間らしさなのだ」

「それだけ?」

「しかも、エメラルダスは鉄郎が行かねばならない根拠を示せない。ただ運命としか言えない。それでも鉄郎は行く。メーテルを助けるのは自分の役目だと本能的に悟っているから」

「つまり、なんだい?」

「超越者から来いと言われたから行くのではない。本当なら行く理由などない。でも、それでも行ってしまう。【愛】がそこにあるから。一言も愛などという言葉は出てこないが、そこには大いなる愛がある」

「理屈じゃないってことだね」

「そう。理屈が一切存在しないにも関わらず、きちんと旅立つ感情的な理由をきっちり揃えて描いている。そこは非常に見事だ。あれは良い旅立ちだ」

「今更もう一度鉄郎が旅立つ理由なんかるのかよ、という突っ込みへの答はそこにあるわけだね」

「そう。もう鉄郎が旅立つ理由はない。あるのは、理由ではなく気持ちだ。ひたすら気持ちの問題として描かれている」

「それが【運命】ということだね」

ヤマトと999は並んで飛んでも良いのかという問題 §

「ヤマト界のお荷物、余計な企画、邪魔者、インチキに思えたGヤマトだがね」

「グレートな感想だね」

「こうして見ると完全に違和感がない。意外なことだ」

「違和感ありまくりのヤマト2199以降のヤマトと比較しても?」

「そうだな。違和感がはるかに少ない」

「それはどういうことだい?」

「きっとね。【ヤマトが来たらあんな敵やっつけてくれるよね】という場合のヤマトは今やGヤマトで敵はヤマト2202なのだと思うよ」

「えー」

「ヤマト2202には、この閉塞したヤマト世界の状況を打破する力はない。というか、閉塞感を作り出している元凶そのものだからね。閉塞感を打破したければ、本来の正しい設定すら無視して我が道を行くアルティメットジャーニー版Gヤマトぐらいの奔放さが必要なのだろう」

「かつては、レッドホーク艦隊のヤマトが担った立場だね」

「そう。でも、レッドホーク艦隊のヤマトは子供っぽ過ぎてインパクトが足りなかった。Gヤマトは、もうちょっと行けることを期待したいところだな。あんなのヤマトじゃないという罵声が飛ぶほど既成のヤマトの概念を壊しながら進んでほしい」

「艦長は古代将(すすむ)だから進んで欲しいわけだね」

「いや、ダジャレじゃないって」

復活篇の重要性 §

「実はこの作品において復活篇が極めて重要な意味を持つと気付いた」

「それはなんだい?」

「大地球への移民船団に護衛の戦闘艦などいない。ところが、ビッグアースへの移民船団に復活篇の移民船団をだぶらせると、急に移民船団の後ろにヤマトがいても良くなってしまう。そもそも復活篇そのものの移民船団がワダチの影響を受けているとも思えるので、合性はバッチリだ。そうすると、999~ハーロック~エメラルダス世界には少々異質な宇宙戦艦ヤマトが自然に入り込めるようになる」

「復活篇は純粋な松本作品とは言いがたいよね」

「そう。本流の松本作品とは言えない。しかし、【大統一松本場理論】においては本流も亜流も関係ない。大きな流れに飲み込まれて全ては平等だ」

古代の立場 §

「古代が現場にこだわって艦長を続けている、本当ならもっと偉い……という設定はいいね。あれは凄く自然に納得する」

「それだけ?」

「表情豊かで人間らしく見えるのも良いことだ」

大の問題 §

「実は、病院の院長の名前が夜森で看護士がミライで病院名に【大】が付いていた。名前に泣いた」

「大泣きしたんだね」

「してないよ。いや、したか」

おまけ §

「ビッグアースは日本語に訳すと何になる?」

「大地球じゃないか?」

「誰のアイデアだよ」

「私」

「バキッ!!☆/(x_x)」

大おまけ §

「ハードカバーのワダチは持ってるよ」

「自慢?」

「自慢できるのはもっと古い最初に刊行された本だろう」

ワダチ

最後のおまけ §

「実は最後に気付いたのだが、本作で死んでしまう機械化人の母親の死に方と、ワダチのヒミコの死に方が似ている」

「メンテナンスされず身体がボロボロになって死ぬわけだね」

「だから、ワダチ的要素はやはり色濃いような気がする」

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