大正のスポーツ万能の男勝り【御子柴初子】・実在した【はいからさん】が通る: 水泳選手、陸上選手、映画女優、割烹女将、アサヒグラフの水着表紙を経験した少女
「この本はなんだい?」
「新刊だ」
「こんな本を書きたいぐらい【はいからさんが通る】が好きだったのか?」
「全く違うのだ」
「じゃあ、なぜ書いた」
「プールの歴史を書いただろう? その過程で金子の婦人専用プールのことがどうしても分からずに残った。その後、ヒントが得られたがそれとセットで女子水泳界の御子柴なる人物の名前が出てきたがこれがまた難物で良く分からない。調べているうちに1冊の本になってしまったよ」
「じゃあ、【はいからさん】って何だよ」
「【はいからさんが通る】に似ている箇所があるということは書いている途中で気付いた。【はいからさんが通る】の方が年代が少し早いから、そこに相違点がある。実は相違点を理解すると時代がより分かりやすいことに気付いた。だから、比較の補助線として【はいからさんが通る】の話題も少し入れたのだが、最終的に営業的な理由でタイトルに【はいからさん】という言葉を入れることにした」
「なぜ入れたんだ?」
「お客さまは全く知らないものには手を出さないからさ。誰も御子柴初子なんて名前は知らない。そんな名前が前面に出てくる本を買うはずがない。というわけで、最初に作成した表紙は【御子柴初子】推しだったが、作り直して【実在したはいからさん】を押すことにした」
→
「作り直したのか!」
「タイトルも変更した。手間が掛かったよ」
「えー」
「でも読まれないよりはマシだ」
「そもそも内容はどんなことが書いてあるんだ?」
「1907年生まれの御子柴初子の生涯を分かる範囲で」
「簡単に言うとどんな生涯?」
「水泳選手になって陸上選手になって映画女優になって割烹女将になる生涯。アサヒグラフの水着表紙も経験している」
「それ本当に一人の人間の経歴?」
「そう思うだろう? だから調査を要した」
「ところで表紙にHERO HATSUKO, GO! GO!と書いてあるのはなぜだ?」
「単語の先頭がH2回G2回リピートしているからなんだ。語尾は全部Oで統一されている。(4つのO)」
「でもさ。HEROじゃなくてHEROINEじゃないのか?」
「なぜHEROと書いたのか、その理由は読めば分かる」
「えー」
「さあ。その辺の百合が好きと言っている緩いマニアが真っ青になるような真に危険な世界がここにあるよ」
「ふわっとした捕まえどころのない何となく素敵なムードだけの百合とは違う世界があるってことだね」