概要 §
【劇場版イナズマイレブンGO vs ダンボール戦機Wの研究】は2012年12月1日より公開された劇場用の映画作品である。
人気テレビアニメであったイナズマイレブンGOおよびダンボール戦機Wのクロスオーバー作品である。
イナズマイレブンGOは時空を越えてサッカーを行う超次元サッカーアニメである。歴史上の偉人とサッカーを行って、その力を得る(ミキシトランスという)というとんでもない内容である。
ダンボール戦機Wはガンプラのような小さなロボット(LBXという)を遠隔操作して戦わせる内容であるが、このLBXには殺傷力があり危険である。これを用いて世界を揺るがす大陰謀と戦うというとんでもない内容である。
とんでもないサッカーアニメと、とんでもないロボットアニメがクロスオーバーした結果、想像を絶するとんでもない世界に行ったのがこの【劇場版イナズマイレブンGO vs ダンボール戦機Wの研究】である。どのあたりがとんでもないのかといえば、普通に見ても結末を解釈できないのである。
そこで、ただ単に【結末を解釈したい】という理由だけで研究に取り組んだ。(フランというキャラに異様に魅力があるという点も大きい)
メカ一覧 (数が多いのでLBXについては割愛) §
イナズマTMキャラバン §
空飛ぶマイクロバスでタイムマシン。
飛行中はタイヤが水平になる。
イナズマチームの移動メカ。
世界が崩壊する時にワンダバとフェイが助けにこれで来た。
ダックシャトル/ダックシャトル改 §
ダックシャトルなのかダックシャトル改なのか一定しない。
ダンボールチームの移動メカ。
厳密には、NICS (Neo International Cosmic Section、次世代国際宇宙局) の所属機。NICSそのものはエピソード0(後述)で崩壊していると思われるので、ダンボールチームは事実上ダックシャトルに乗り込んだ者達だけである。
フラウ・ア・ノートリアス §
フラン達の事実上の基地。花の形をしている。
小説版の設定との情報もあるが、実際には初回限定ブルーレイ付属の設定資料集にも名称が載っている。名前が出てこないだけでアニメでもあれはフラウ・ア・ノートリアスという名称である。
フランが小さい時に父親からもらった花がフランの心を包み込む巨大な花形の要塞になっている……ということらしい。
反物質爆弾 §
フラン達のいる未来世界を滅ぼした最終兵器。都市が消え去りみんな死んだがフランだけは生き残った。反物質そのものは実在の物質である。反物質は我々を構成する正物質と接触すると質量の全てがエネルギーに変換される。この時、膨大なエネルギーが放出され、爆弾として機能する。1円玉サイズの反物質で広島の原爆並の爆弾になると言われている。我々の世界が反物質爆弾で消えていないのは、ただ単に反物質を作るのがもの凄く大変で、反物質爆弾などは作れないからに過ぎすぎない。
キャラ一覧 §
フラン §
本作オリジナルのラスボス。花を愛する優しい少女であるが、戦いを憎んで魔女になる。最終的に恐ろしい魔女になっている状態はミキシマックス状態らしい。
アスタ §
フランの手下その1。サッカー担当。実は既に死んでいた。フランが作り出した。【ディメンションストーム】【アスタリスクロック】【サンシャインストーム】という必殺技を使うが、【アスタリスクロック】は名前がアスタっぽい。最終決戦では彼のチーム・デストラクチャーズ(後述)を率いる。
サン §
フランの手下その2。LBX担当。実は既に死んでいた。フランが作り出した。戦力の出し惜しみをして押し切られて負ける。
デストラクチャーズ §
アスタのサッカー・チーム。彼らはハイ・デュプリ(一人の人間が別人の分身を複数作る)であるらしい。だから、特にそのような人物達が存在するわけではない。しかし、みんな個性豊かである。
ただし、アスタの分身なのかフランの分身なのかは分からない。
サッカーの勝負に決着が付いたあたりでいつの間にか消えている。
フランの父母 §
カプセルに入った花をフランにプレゼントするが、フランの特殊能力に気付いてフランを未来世界の研究所に入れる。
研究所員 §
フラン、アスタ、サンが収容されていた研究所の所員。みんな同じに見えるが複数いる。それぞれ別個の登場人物扱いされている模様。
LBXの戦士9人 §
バン、ヒロ、ラン、アミ、カズヤ、海道ジン、灰原ユウヤ、ジェシカ、古城アスカの9人。
このうちリーダーはバンなのか海道ジンなのか良く分からない。アミ、カズヤは途中で消えるので最終決戦に挑むのは7人ということになる。
山野淳一郎 §
山野バンの父親であり、LBXの開発者でもある。事実上、バンに新型機を渡すためだけの登場。
宇崎拓也 §
テロ対策ユニットのシーカーの指導者だが、事実上ダンボールチームの総司令官である。
オタクロス §
アキハバラの帝王デヨ。
事実上、中盤の状況解説で画面を空中に投影して説明を行うだけデヨ。
アキハバラがないので、活躍がないのはある意味で止むを得ないデヨ。
黄名子に迫って「やんね」と「デヨ」の応酬も見たかったデヨ。
コブラ §
山野淳一郎のエージェントの男の1人。ほとんどいるだけである。
大空遥 §
ヒロの母親。眼鏡の女科学者である。
大空遥が本作の登場人物であるかのように扱っている情報もあるが、実際には登場を確認できなかった。(カットされたシーンに出ている可能性もある)
少なくとも、エピソード0には登場している。しかし、ダックシャトルには乗っていないので、本部の消滅に伴い消えた。ことのとき、一緒にカイオス長官(ジェシカの父)も消えている。一緒にではないが、レネトン大統領も消えているが、それらの人物に関する情報はないので、情報が一貫しているわけでもない。
消された母親をヒロが心配している描写はない。(ジェシカが消えた父親を心配している描写もない)。一般的にエピソード0はないものとして映画は演出されていると思われる。
大人雷門11人 §
左から円堂、豪炎寺、鬼道、佐久間、不動、風丸、綱海、ヒロト、吹雪、染岡、壁山。不動は後期のふさふさ髪型版、赤い髪はヒロト。各自の名前は映画の中では明示されず、「黒い髪の男は誰なのか? 赤い髪の男は誰なのか?」と思うがノベライズ版には全員の名前が明記されている。
子供雷門11人(12人) §
松風、剣城、神童、西園、霧野、錦、狩屋、菜花黄名子、雨宮、雪村、白竜の11人。
大人雷門との試合のあと、雪村が消されて最終決戦ではフェイ・ルーンが入る。
フェイ・ルーンはイナズマTMキャラバンに乗って助けに来るので、大人雷門との試合にはまだいない。
空野葵 §
イナズマの女性マネージャーその1。イナズマイレブンWのメインヒロインであるが、本作では事実上いるだけである。
瀬戸水鳥 §
イナズマの女性マネージャーその2。少し不良っぽい。最初の戦闘でLBX相手にモップで戦って止められる。
山菜茜 §
イナズマの女性マネージャーその3。いつもカメラを持っている気弱な少女。本作では事実上いるだけである。
角馬王将 §
サッカーの試合を実況している。フランからいきなり呼び出されてもすぐ実況を開始できる豪傑。
クロスワード・アルノ §
時空のうんぬんの専門家。中盤の状況説明の後半部分を担当する。
クラーク・ワンダバット (ワンダバ) §
イナズマTMキャラバンの運転主にして偉大なる大監督(自称)。通称ワンダバ。
移動中のイナズマTMキャラバンの運転席に彼の姿が描かれているが出番は多くない。
アイテム一覧 (LBXやサッカーボールは除く) §
本作は花がモチーフであり、繰り返し様々な形で花や花の形をした物体、花をモチーフにしたマークが登場する。フラン、アスタ、サンが来ている服に入っているマークも花の模様である。
カレーライス §
中盤のキャンプでカレーライスを作っているが、どう解釈してもカレールーを現地調達で作ることは難しい。米も難しいだろう。小さなイナズマTMキャラバンのトランクに非常用の食料がいつも入っていたとも考えにくいので、ダックシャトルの倉庫に備蓄されていたものかもしれない。
テント【第3版で内容更新】 §
実はテントは2タイプある。丸っこいタイプと三角っぽいタイプである。
丸っこいタイプはイナズマイレブンTVシリーズ第41話「デザームの罠!」で、秋と円堂が話をしているイナズマキャラバンの隣に設置してあるので、イナズマキャラバンの女性用テントとして使用されていると思われる。(男はバス内で雑魚寝)。従って、丸いタイプのテントは雷門中の備品ではないかと思われる。頭頂部と入口にイナズマのマークも入っている。ちなみに、イナダンではテントが3つ存在するが、これは男もみんなテントで寝たことを意味する。理由は、割と大型のイナズマキャラバンに対して、イナズマTMキャラバンのサイズがやや小さいためではないかと思われる。
消去法で三角っぽいタイプはダックシャトル搭載と思われる。三角っぽいタイプは2個しかないが、これはダインボールチームの方が人数がやや少ないことに対応するものと思われる。特にダンボールチームを意識させる意匠などは見当たらない。
テーブル【第3版で内容更新】 §
テーブルは海道が降りるときに横に抱えている。ダックシャトルに搭載されていたものであろう。
使い捨ての紙皿には見えない。立派な陶器またはプラスチック製に見える。ダックシャトルはこんなものまで搭載していたのだろうか。
スプーン §
銀色のスプーンである。プラの使い捨てではない。ダックシャトルはこんなものまで搭載していたのだろうか。
飯ごう【第3版で内容更新】 §
寝床の確保ぜよと言われて信助が「はーい」と言って走っている時に飯ごうを運んでいる。ダックシャトルから勝手に持ち出したとは思えないので、イナズマTMキャラバンにあったのだろう。飯ごうはTVシリーズのイナズマイレブン第31話「伝説のストライカーを探せ!」のキャンプシーンにも登場するので雷門中の備品かもしれない。ただし、この時に作っているのはおにぎりなので、飯ごうは使うが鍋は使わない。
鍋【第3版で追加】 §
飯ごうと違って鍋はダックシャトルを降りるカットでランが持っている(上記テーブルの解説の画面写真参照)。これはダックシャトルに搭載されていたのだろう。
(つまり、カレーはイナズマチームとダンボールチームの合作である)
CCM §
LBXを制御するコントローラ。カズとアミのCCMをテントに入れることで、イナズマチームとダンボールチームを不仲にさせることができたので、映画では上手く活用されている。
グッズ §
通常版ブルーレイ/DVD §
レンタル版もこれと思われる。本編は全て見られるがオマケ映像は多くない。オーディオコメンタリーは含まれているので、声優の裏話、宮尾佳和監督による作品解説、日野晃博さんの説明も聞ける。
初回限定版ブルーレイ/DVD §
2枚組である。1枚目は通常版と同等と思われる。2枚目は様々なオマケが入っているが大きいのは後述のエピソード0と、宣伝用に放送されていたギャグ編だろう。
また解説書と設定資料集が含まれている点も大きい。
可能なら初回限定版を中古で探したい。
サントラCD §
サントラCDである。本作は参加ミュージシャンが多いのでどの曲が誰の担当か気になるかもしれないが、全て明確に名前が記載されている。
ノベライズ §
小学館ジュニア文庫で上下巻として出ている。雷門の部室に響木が訪問するところから話が始まっていて、映画本編にないシーン、展開、説明がかなりある。しかし、結末の解釈、描写はかなり違っていて映画本編の解説という感じでもない。
フィルムコミック §
完全に映画のフィルムに沿って進行するフィルムストーリーであるが、完全にフィルムの進行とシンクロして同じ台詞が展開する。聞き取りにくい台詞の確認にはもってこいである。ただし、細部ははしょり気味である。たとえば、釣りのシーンは丸ごとない。本当に大ざっぱなあらすじをなぞっているだけである。割と読んで不満が残る。
フィルム絵本 §
フィルムの映像に説明を付けた絵本である。しかし馬鹿にならない。綺麗な映像が大きく印刷されているからである。研究、鑑賞にはたいへん有用である。
個別トリビア編 §
BDの特典ディスクはDVD §
初回限定版ブルーレイ/DVDの2枚目の特典DVDはあくまでDVDである。1枚目がブルーレイでも2枚目はDVDである。
エピソード0 §
テレビで放送された前日譚であるエピソード0がダンボール側にのみ存在する。
これはダンボール本編のブルーレイ/DVDには収録されていない(別映像に差し替わっている)
本作の初回限定版ブルーレイ/DVDに収録されている。
謎の敵に攻撃され、世界が崩壊していき、ダックシャトルだけが辛うじて脱出するところまでが描かれていて、フラン、アスタ、サンは出てこない。
ノベライズ著者の謎 §
ノベライズの著者は、上巻が【村松哲治/冨岡淳広】、下巻が【冨岡淳広】となっていて食い違っている。おそらく上巻執筆中に何らかの理由で著者が村松哲治から冨岡淳広に交代したものと思われる。実際、上巻は最初と最後で文章の質が違う。最初はちょっと文字を多く書きすぎの濃厚なものだが、最後の方は映画に沿った展開以外にはあまり脱線しない軽い読みやすい感じに変化している。
なお、冨岡淳広は【構成協力】としてクレジットされているが、事実上脚本チームの一人と考えられる。
絵本独自のカット? §
絵本のこのカットは本編中にないように思えるが実はある。イナズマTMキャラバンがダックシャトルを追いかけて飛び去るカットの数コマだけこういう映像が存在する。
他媒体に見るカットされたシーン §
全てのコマを精査したわけではないが、フィルムコミックのこの角馬王将のカットはアニメ本編に存在しないことを確認した。
ライディング捜索隊とは何か §
最初の戦闘で海道ジンが【ライディング捜索隊発進】と言っているようにも聞こえるが正しくは【ライディングソーサ部隊発進】である。
【ライディングソーサー】ではない。
【ライディングソーサ】である。
一見、フライングソーサーのソーサー(Saucer)に思えるが、そうではなくソーサ(Sousa)である。(典拠、ライディングソーサのバンダイのプラモデル)
ライディングソーサはLBXの飛行メカである。ガンダムでいうドダイにあたる。
ライディングソーサ隊とは自力で飛行できないLBXがライディングソーサに乗って出撃したということである。
ピクシブ百科事典のオタクロスによると、ライディングソーサはオタクロスの発明品でかつ【余談だが、ライディングソーサのアルファベット表記は「RIDING SOUSA」であり、円盤を意味する「ソーサー」から理系あるあるネタで「-」を略す行為と「操作」をかけたネタになっている。】とのことなので、ソーサのSOUSAという綴りは日本語の【操作】に由来するものとして考えて良いだろう。つまり、RIDING SOUSAは【騎乗操作】である。馬やバイクに乗る感覚でLBXを飛行メカに乗せるものと考えられる。
【じゅうけいのぶき】とはどんな武器か §
海道ジンが全機に【じゅうけいのぶき】に換装と命じている。具体的に何に換装させているのか。【重系の武器】だろうか。確かにみんな持っている武器が大きそうだ。しかし実際は【銃系の武器】である。つまり、剣や槍や素手ではなく、飛び道具を持てと言っているのである。
クロスワード・アルノ博士とは何者か §
作中では【時空のうんぬんの専門家】を名乗っているが、イナズマTMキャラバンの開発者。未来人。つまり、イナズマチームとは既に顔見知り。ダンボールチームは「お前誰だ」という顔になるが、イナズマチームは実は正体を詮索していない。
謎の半頭キャラは誰か §
初回限定版ブルーレイ/DVD付属設定資料集の表紙に頭髪が半分の謎の人物が数名描かれているが、これは未来の研究所の職員である。回想シーンで確認できる。
ラストシーンの謎の人々は誰か §
ラストシーンで花畑に立っているのはフランの両親だけではない。
彼らは何者か。
おそらくアスタとサンの家族である。
解釈編 §
結末の解釈の方針 §
本作の結末は解釈が難しい。
フランの能力でフランが望む通りに世界を創造したという解釈はちょっと悲しいので、フランの介入で未来が変わったという解釈を取りたい。
そうすると、以下の2点が重要になる。
- フランは過去の何を変えたのか
- 過去の変化が未来にどう影響したのか
このような影響の連鎖があるとすれば、フランの世界はイナズマ世界またはダンボール世界の未来である。どちらの未来だろうか。
もっとストレートに言えば、フラン、アスタ、サンは事件に巻き込まれたサッカープレイヤーまたはLBXの戦士達の誰かの子孫であると考えられる。
誰の子孫だろうか。
もしこの仮説が正しいなら何かのヒントがさりげなく作中に埋め込まれているはずである。
バンの子孫=サン説 §
最初に得たのがこれである。
名前も似ているし、キャラの性格付けも似ている。
何より、最後にバンは【俺達ももっとLBXを愛さなくちゃな】と言っている。この事件で【もっとLBXを愛する】という意識を得たバンは変化し、その変化が子孫のサンにも影響を与えたのではないだろうか。
ランの子孫=フラン説 §
次に考えたのがこれである。ともかく名前が似すぎている。
実は本作でのランの重要度は高い。
ヘリオローザ戦でのランの【やっぱ無理】はある意味で本作最大の山場である。
これは、フランが掲げる【戦いは醜い】を真っ向から否定する行為である。
子孫の暴走を祖先が否定したと思えば意味がある。
ちなみに、本作のダンボールチームはほぼバンとヒロで話が進行するが、自己紹介の時にランだけはバン、ヒロに続いて自分を紹介している。ランの扱いはいろいろ特別なのである。ほとんど消える係でしかないアミとは違う。
カズの子孫=アスタ説 §
難題はアスタの祖先であった。
最初は目の形が似ているので剣城京介ではないかと思ったのだが、実際に見ると四角形と三角形で違う。(目つきが悪いことは共通しているがそれだけだ)
いろいろ考えた結果、ドレッドヘアー、バンダナという共通点からカズ(青島カズヤ、ワイルドカズ)の子孫ではないかと考えた。
名前も【あ行音+スっぽい文字+あ行音】とすれば、カズヤとアスタは似ている。
カズの立場はアミとほぼ同じであり、同じタイミングで消えているのだが、実は二人の扱いは違う。最初に出撃に際して、カズだけ【アキレスディードもいるぜ】と単独のコールを行っている。出撃時に単独のコールを行っているのはバン、ヒロ、ラン、カズだけである。存在感を独自にアピールしている。
フランの世界はダンボールの未来説 §
以上からストレートに、フランの世界はダンボールの未来説が出てくる。
そうすると、エピソード0で先にダンボール世界から崩壊を始めた理由も分かる。フランは最初に自分達の過去に手を出したのだ。
体が光るフラン §
実は花畑が出現する前にフランの体が光っている。この演出は、小説、フィルムコミック、絵本では反映されていない。映画本編のみの演出である。
従って、花畑、背景の都市、両親が出現したことに関してはフランの能力が関係していると思うべきだろう。
逆に、生きていたアスタとサンという部分は、フランの能力は関係していないかもしれない。アスタとサンの生存は未来改変の結果起きたことなのかもしれない。
結末の解釈 §
以上をまとめると、以下のような解釈が成り立つ。
- フランは過去に介入した
- ダンボール世界の戦士達はイナズマ世界のサッカープレイヤーと交流して大切なことを学んだ
- 未来が変わった
- アスタとサンが死ぬという未来は変化し、二人は生きていた (しかし、荒野と廃墟は変わらず)
- フランは自らの能力を発動し、世界を組み替えた。過去の世界から街と人々を呼び出し、もっと過去の世界から花畑を呼び出した
この解釈で本当にハッピーエンドであるかは分からない。
また、この結末は一つの解釈に過ぎず他の解釈も有り得る、
おそらく、意図的に曖昧さを残した結末である。
否定された結末 §
既に死んだアスタとサンが待っている未来は天国である、という解釈はオーディオコメンタリーで監督自らにより否定されている。この解釈はないものとして考えたい。
神話としてイナダン §
反物質爆弾の不自然さ §
仮に一発ないし少数の反物質爆弾で地球の地表面が全て砂漠になるような状態になったとすれば以下の2点で不自然である。
- 地球そのものは残っている
- 地下だけの廃墟とは言えフランのいた研究所は原形を保っている。(他の施設は跡形もなく消えている)
これはフランの超能力(ノベライズ版でいうセブンスの能力)が、フラン自身と地球を保護したと考えれば辻褄が合う。
世界を組み替えられるほどの力があれば、地球を保護することも可能だろう。
ただし、フランが好きではなかった地表の都市は保護されていない。
研究所そのものも保護の対象になっていないので破壊されているが、フラン自身を保護する関係上完全な破壊は免れたと考えれば良いだろうか。
その結果として、フランは新世界を創造する神になった。
フランは過去世界を全面改変して、戦いを消去した新しい世界の創造を試みるが、これは天馬、ヒロ達の尽力で失敗する。
改めてフランはもう一度世界の創造を試み、花が溢れ家族もいる世界を生み出す。
この解釈において、世界の創造に一度失敗するというのは日本神話の国産みにおいて、イザナギとイザナミの2神が最初に失敗することと同じパターンである。イザナギとイザナミは当初女のイザナミの方から声をかけたがこれは正しい手順ではなかったので正しい世界ができなかった。改めて正しい手順で行うことで、島々を産み出すことができた。
つまり、【劇場版イナズマイレブンGO vs ダンボール戦機W】という1本の映画そのものが、世界を生み出す創世神話そのものを描いたと言える。
フランと天岩戸 §
当初、この映画を見たときに連想したのは天岩戸である。
日本神話の天岩戸の逸話において、天照大御神は天岩戸に隠れてしまうが、一計を案じて彼女に扉を開けさせ、天手力男(アメノタヂカラオ)が力尽くで引っ張り出してしまう。
この映画において、天手力男の手に相当するのが天馬が使うゴッドハンドWの巨大な手である。
つまり、ゴッドハンドWに全ての仲間達、サッカープレイヤー、LBXの戦士、アスタとサンが協力したことにより、閉じていたフランの心をこじ開けて引っ張り出すことに成功したのである。
そのように解釈するなら、この作品は天岩戸の逸話をイナズマ、ダンボールという現代的な手段を用いて語り直した作品ということになる。
神話としてのイナダン §
神話、特に創世神話は全ての始まりの物語である。それ以前の物語は存在しない。
そして、アルノ博士がタイムマシンを作成する未来よりもずっと未来の世界からフランは来たと設定することで、イナズマ/ダンボール世界のこれ以上先は描けない究極の未来を描いたとも言える。
つまり、あり得る最大のスケール感を持った物語を描いたと言える。
そもそもイナズマイレブンWは時間旅行と宇宙旅行を実現しており、それ以上遠くまで行くには神話の世界に行くしかない状況であった。
そして、神話の世界に行くことは物語の終着点になることを既に考察している。
事実として、劇場版ダンボール世界はこれが最初で最後である。続きはない。そして、イナズマイレブンにはこのあともう劇場版がもう1作【イナズマイレブン 超次元ドリームマッチ】として存在するが、これはイベント用の特別映像集のようなものであり、通常の意味での映画ではない。
つまり、イナダンの世界で知り合った天馬とヒロが再びタッグを組んで難事件に挑むような方向には進まない。
それはどういうことか。
フランが新しい創世神になったように、天馬とヒロもやはりそれぞれの神になってしまったのだ。もちろん、彼らは人間であるが、神話の登場人物としての神になってしまったのだ。
だが、バンは違うかもしれない。バンは人間のまま神話の傍観者として現場に参加することを許されただけであり、ヒロに対して「フランを受け止めるんだ」とアドバイスすることはできても、一歩引いた立場なのである。
神話の登場人物になってしまうには大人でありすぎたとも言える。
であるから、フラン、アスタ、サンは天馬、ヒロの子孫とは考えにくい。むしろ一歩引いた立場から見ていたバン、ラン、カズの子孫の方が相応しいような気がする。
……とすれば、ダンボール世界Wの次がストーリー的に連続していないダンボール世界WARSになってしまうことも、イナズマイレブンの再開がアレスの天秤、オリオンの刻印になってしまい、天馬たちの存在感が消えてしまうことも理解できる。あの世界はこれ以上先にもう進めないのだ。
だからこそ、オリオンの刻印の結末でスタジアム上空に飛来するのはフラウ・ア・ノートリアスではなく、サッカーを支配しようとするラスボスの飛行メカである。オリオン、アレスと神話を意識させる言葉を使っていても、神話的な要素はない。イナズマイレブンをリブートするには、一度、神話となってしまった【劇場版イナズマイレブンGO vs ダンボール戦機W】をなかったことにして語り直す必要があったのだ。
これを逆から言えば、【劇場版イナズマイレブンGO vs ダンボール戦機W】の完成度は極めて高い。一つの世界の始まりと終わりを語っているようなものである。ここには全てが詰まっている。
たとえていえば、ルパン三世における【カリオストロの城】のような存在だと言える。確かに【カリオストロの城】は圧倒的に優れているがそれに囚われていたら他の世界に行けないのである。だから、新ルパン三世もルパン三世パートIIIもカリオストロの城とは別の場所にある。だが、それで【カリオストロの城】の価値が減るわけではない。同じような意味で、アレスの天秤、オリオンの刻印が【劇場版イナズマイレブンGO vs ダンボール戦機W】と無関係の展開であろうとも、それによって【劇場版イナズマイレブンGO vs ダンボール戦機W】の価値が減るわけではないのだ。
念のために言えば、筆者はダンボール戦機WARSは大好きであった。アレスの刻印、オリオンの刻印も大好きであった。だが、【劇場版イナズマイレブンGO vs ダンボール戦機W】はもっともっとずっと好きである。
おわり