久々にアニメの最終回で泣いたので感想を書きます。
カードファイト!! ヴァンガード外伝 イフ-if- イフ25 「みんなの心をコネクテッド」です。
さて、カードファイト!! ヴァンガードにおけるエミさんとは、基本的にアイチお兄さんの付属物でした。自立的にヴァンガード入門者として振る舞うこともあったものの、それはあまり明瞭ではなく、一時的なものでした。基本的にアイチお兄さんに依存する存在であり、キャラクターとしてはあまり出来の良いものではありませんでした。まあはっきり言って初期のヴァンガードで特にダメなキャラクターだったと言って良いと思います。声優の演技も含めて、描き方がただの萌えアニメです。他のキャラクターの描き方より数段落ちていました。
ところが、イフに入ると、状況がガラッと変わります。
アイチお兄さんが敵、あるいは助けるべき存在になり、エミはアイチお兄さんに頼れなくなります。息吹コウジはギャグキャラであてにならないし、立凪スイコはエミには深く立ち入ってこないし、花摘みのシュカは同格の友達です。むしろ、シュカは妹タイプで引っ張っていく必要があるぐらい。しかし、エミには自立できるだけのキャラクターがありません。だから、シュカと二人三脚で戦うしかない。だが、シュカがエミにも秘密にしていることがあると明らかになったあたりから、本格的にエミは自立という問題に晒されます。エミはどうするのか。誰も決めてくれません。自分で決めねばなりません。
途中でカイくんが参加しますが、カイくんは全く役に立たない迷える子供でしかありません。あれはもうアイチお兄さんが憧れたカイくんではありません。
完全にエミは精神的に孤立無援になり、自分が自律的に判断して行動することが迫られます。
そして、エミは、シュカと二人三脚で戦う魔法少女から、シュカの救済者に変化します。まず、アイチお兄さんの前にシュカを救済する必要がでてきたのです。
そして、エミはシュカを救済し、シュカが去った後でアイチと一人で対峙する状況に追い込まれて一人で戦います。エミはシュカがいない分を補って自分一人で戦います。
ここで、完全にエミは自立した一人の人間になります。記号的な誰かの付属物から、人間味のあるキャラクターに変化します。
これが象徴的に描かれるのが、最後に行われるカイくんとのカードバトルです。
ブラスターブレードにライドするエミは完全に自分の人生の主人公です。
もうアイチお兄さんの付属品ではありません。
それを象徴するのがブラスターブレードにライドするエミさんですね。カイくんを相手にブラスターブレードにライドするのに、そこにアイチお兄さんはいません。
見事な成長物語です。
泣けますねえ。
最初はカムイちゃんから「エミさんエミさん」言われる係でしかなかったのに。アイチお兄さんとカムイちゃんがいなければキャラクターとして無いに等しかったあのエミさんがここまで一人の独立した人間になる日が来るとは。
そして最後に、実は自立した自分を最後に放棄してしまうのですよ。
正しい歴史に戻ったとき、エミはアイチの付属品に戻っています。本来ならこんなに急速に自立するはずではなかったから、長いモラトリアムを経験しながら徐々に自立していくことになるのでしょう。それもまた人生。
ヴァンガード雑感 §
しかしまあ、見てないようで意外とヴァンガード見てたのね、と思いますよ。
やっぱり利害関係が全くないアニメを、ただの客としてダラダダ見るのは楽しいなあ。
それから、コロナ禍で再放送が挟まったとき、アイチお兄さんがサイクオリアでカイくんと戦う話を放送した理由がやっと分かりましたよ。イフとは最終的にアイチお兄さんとサイクオリアが問題になる話だったわけですね。
新右衞門編、イフと来てヴァンガードはもう別の段階に進んだような気がしますね。
特に、最初は3人ワンセットだったはずのウルトラレアの3人が全員バラバラの独り立ちしたキャラクターになって単独で物語を支えられるのは大きい。
逆にいえば、最初の設定とキャラクターを愚直に守っているので、物語に深みが出る。
実際、新右衞門編でニンジャマスターがレギュラーで出てくるなんて感涙ものでしょう。
そもそも、このイフにしてもヴァンガード最初の問題であるカイとアイチとブラスターブレードの問題に立ち返っているわけで、凄く問題が古い。しかし、新キャラのシュカが引っかき回して新しい問題にしてしまう。リメイクと違う形でアニメが再生するモデルと言えるのかも知れませんが、たぶん真似をするのは凄く難しい。自称プロがやろうとしてもずっこけると思いますよ。