「一晩明けてみると、もうちょっと違う側面が見えてきたので、追加の感想を書こう」
「何に気付いたんだ?」
「この作品におけるハサウェイあるいはマフティとは、私的に正義を振るう者であり、テロリストとしての側面を持つ。勝てば革命家、正義のレジスタンスという名前に変わるけどね」
「建前上の公的な正義に属する伝統的な連邦軍のアムロ的な世界観ではないということだね」
「そう。むしろ、ガンダムOOに近い。ソレスタルビーイングがあればハサウェイはそこに参加していたかもしれない」
「そこが決定的なんだね」
「しかし、ガンダムOOが圧倒的な技術優越で話が進むのに対して、ハサウェイはそういう感じでもない。むしろ、メガゾーン23パート2に近い世界観を持つ」
「バイクに乗った都市ゲリラの蜂起に近いわけだね」
「マフティの秘密のアジトは、メガゾーン23パート2で暴走族の溜まり場になっていた地下室に近いノリになっている。実はキャラクターのデザインもちょっとそれっぽい感じを受けた」
「では、メガゾーン23パート2があったら閃光のハサウェイは余計だったのかい?」
「いや、実はこの2つの作品には決定的な違いがあって、閃光のハサウェイは問題の捉え方が2021年現在の【現代的】なんだ」
「ふむふむ」
「そもそも、メガゾーン23は1980年代的な【今がいちばん良い時代】という価値観の上に成り立っているが。閃光のハサウェイは2020年代的な社会の閉塞感の上に成り立っている」
「閃光のハサウェイは社会階級の二極化も激しいね」
「そして、【閃光のハサウェイ】は現代日本における希望として存在するのかもしれない」
「どう意味で希望なんだ?」
「この映画が若者にも支持されていると言うことは、ハサウェイ的な価値観が肯定されているということであり、それは破壊的な未来への創造の肯定を意味する」
「これから死んでいく年寄り達は未来を作る必要はないが、若者は自分たちが生きていく時代を作り出す必要があるわけだね」
「そうなんだが、年寄りの言うことを従順に受け入れるのが良い若者という風潮もあってな。あれはよくない。問題を全く解決しない。結局、年寄りの秩序に抵抗しまくるハサウェイは割と歳を取って落ち着きを得た無謀人間なのだが、それが主人公をやれるとしたら未来への希望は存在する」
「手遅れにならないで済むと思う?」
「手遅れにはならないさ。遅れれば遅れるほど、単に未来を取り戻すのに時間と手間が掛かるだけだ」