「2日限りのオリジナル版の上映」
「それって、円盤に入っていたものと同じではないの?」
「同じはずだ」
「ではばぜ見に行ったの?」
「単なる物好き」
「えー」
「まあ、限定上映だった完結編の70mm版を見に行くようなものだよ」
「なるほど」
「本当は12/30に行こうかと思ったが予定が入ってしまった。もういいかと思ったが弾みで席をポチってしまった」
「それで?」
「12/31にも用事が入って大焦りだが、まあ見ることができた。すぐに急いで帰る羽目になったがね」
「それで劇場はどうだった?」
「ほぼ満席。みんな、これを見たかったのだと思う」
「みんなって誰?」
「1977年組」
「そんな用語聞いたこともない」
「そうだろう。今自分で作った用語だ」
「えー」
「劇場内には、たぶん複数の知り合いと複数のヤマト界の重鎮がいたのだろうと思うが、特に探していない」
「どうして?」
「ここは、各自が1977年と向き合う場だと思ったからだ」
「その場はどうだった?」
「始まってすぐは劇場内はバタバタしていたが、終わったら拍手が起こったよ。おいらも拍手しちゃった。ライブ感覚満点」
「実際に見てどうだった?」
「まあ、最初から全部分かっているものを改めて見ても、それで何がってこともないんだけどね」
「やはり、自分の中の1977年と対話するってこと?」
「それもあるんだけど、実は1977年のあの時、映画に含まれる情報の多くを取りこぼしていたことを思い知ったよ」
「たとえば?」
「死んだスターシャと対面する一同のシーン、最後に森雪の顔だけがずっとアップで残るんだけどあれは何かとか……」
「それは何か意味がありそうだね」
「実は、これからもこの映画と対話していかなければならないという始まりかもしれない」
「具体的になにをするんだい?」
「新作台詞、新作カットはほとんどないと思っていたが、けっこう多いかも知れないと気付いたよ。じっくり見ていると明らかにテレビと台詞が違うところが多くある」
「そこまでの記憶と注意力は1977年にはなかったんだね」
「TV放送した1978年にもなかったと思うよ」