「なぜ見たの?」
「うん。正直、気乗りはしなかったのだ。別にガンダム好きじゃないしガンダムSEEDが好きでもない」
「それにも関わらず見たのはなぜ?」
「メカデザインに禅芝さんがいるのでな。ついでに予告編の宇宙艦の描写が的確だったのでね。宇宙艦は禅芝さんの仕事だろうからね。そこには興味を持てた」
「それだけ?」
「閃光のハサウェイは奇跡的に良くできていたから、あれに対抗するような映画なら見るに値するのかもしれないと思った」
「実際に見てどうだった?」
「宇宙艦の描写は非常に良かった。まあカットによる面はあるが、このクラスの映画では破格に良かったと思うぞ。その部分だけは確かに見に来る価値があった」
「その部分だけは?」
「宇宙艦の描写からモビルスーツの描写になると平凡な2024年のただのロボットアニメになってな。そこは見るのが辛かった」
「人間ドラマは?」
「底の浅いメロドラマでなあ。中学生レベルのストーリーだったよ。登場人物が多すぎて整理が付いていない。誰が誰やら最後は分からなくなった。2時間越えの上映時間があって長いはずなのに、人が多すぎて一人一人が全く掘り下げられておらず、誰も彼も非常に表面を撫でただけで終わっている感がある。まあ、物語の組み立ては素人だな」
「ボロクソだね」
「2024年にもなって、こんな映画しか作れないのが【ガンダム】ブランドの限界なんだろうな、と思った」
「宇宙艦の描写だけ合格点で、後は普通の今どきのガンダムと」
「普通の今どきのガンダムだねえ」
「普通の今どきのガンダムのファンはそれで満足なんじゃないか?」
「おいらは普通の今どきのガンダムのファンではないのでね」
無駄に多い §
「登場人物が多いからダメ?」
「登場人物が多い場合はそれはそれで方法論がある。一概に多いからダメということはない」
「じゃあ何がダメなの?」
「整理が上手くできていない」
「えー」
「【撃った】【当たった】【爆発した】という描写を見てどちらの陣営か分からず、これって喜ぶべき描写か悲しむべき描写か分からなかったり、最後にヘルメットをかぶった結果誰か分からなくなったキャラがいて、途中で突然【ああ、この金髪のボンボンだったか】と気付いたりして、話に入れなかったことがあったよ」
宇宙艦の良いところ §
「じゃあ、メカ的に良いと思った部分を教えてくれよ」
「全般的に宇宙艦の描写はバランス感が良かった。それっぽい生々しさが感じられた」
「たとえば?」
「全体的なバランスや、カメラの位置。格納庫なんかもモビルスーツの手前に棒が立っているのとか、そこは良い描写だったと思う」
「動きのあるシーンで言うと?」
「海から離水するところは、まさに宇宙戦艦ヤマト的な見せ場だったと思うよ。ガンダムSEEDという作品でそこにこだわる意味はあまり見出せないので、やはりやりたかったからやったのだろうな。あと、始まってすぐ、ミレニアムのカタパルトで、下から左右の柱が立っていく描写は非常に良かった。空母の起倒式のアンテナのようでもあるし、モビルスーツを加速させる何かの仕掛けなら説得力があるし、発進直前に多数の柱が順番に直立していく描写は外連味もあって映像的な見せ場に見もなっている。あれは良かったと思うよ」
分からなかったところ §
「分からなかったところは多い」
「君はSEED DESTINYを最初の方しか見てないからね」
「それはともかく」
「何か他に気になることでも?」
「ズゴックに乗って助けに来るアスランって、あれ、みんな嬉しかったのか? 赤いズゴックだぞ。あれ、SEEDのメカか?」
「シャア? じゃなかった、さあ?」
「あとゲルググとかも出てたよな。それでいいのか?」
「さあ?」
「それにしてもモビルスーツ、数が多すぎてぜんぜん分からないな。まあ全て暗記する必要もないと思うが敵か味方かもパッと見て分からないのは問題だと思うぞ。勝ってるのか負けているのかも良く分からない」
ルナマリアとセリア §
「ルナマリアの出てくる映画を見終わって映画館を出てエスカレーターを降りたらそこにセリアがあった」
「ダジャレかよ」
パンフ §
「一応、映画のパンフを買おうかと思ったら売り切れだった。まだ上映開始から一週間も経ってないのになあ」
「超人気? それとも入荷数が少なかった?」
「そこまでは……」
「そもそも、劇場に人は入っていた?」
「TOHOシネマズ府中の大きなスクリーン2でやっていたが、それほど多くはなかった。まあ、平日の午前中だから少なくて当然だがな。こういう映画は初動が大きいはず。あとはガクッと減るはずだ」