浦沢直樹のMONSTERは、どんな内容か全く知らず、読んだこともなかったので、好奇心で1冊買ってみました。某店には2巻からしかなかったので、2巻を購入。
しかし、かなり面白かったので全巻セットをゲットして読破しました。
これはかなり面白い、良くできた作品だと思います。
殺人鬼の兄を射殺した妹と兄を助けてしまった外科医の話で18巻もどう成立させるのかと思ったら、実はそれは話の入口に過ぎず、511キンダーハイムの謎に魅せられた多くの人物の話が複雑に絡み合って。読者は複数のキャラクターが徐々に解き明かしていく謎の答えを見せられることになるわけですね。
ラストはしょぼくなって終わりかと思いましたが、街1つを巻き込んだ大殺戮に発展して終わったので、かなり読み応えがありました。
物語の構造としてのMONSTER §
それはさておき、1つ興味深かったのは、物語の組み立てが山田ミネコ最終戦争シリーズに近かったことです。
最終戦争シリーズからSF的要素を除去するとMONSTERになるのかもしれません。
具体的に持ち味が似ている箇所は以下の点です。
- 複数のキャラクターが1つの謎に気付き、それを追う (デーヴァダッタ、511キンダーハイム)
- 個別のエピソードはわりと独立しているが、エピソード間で共通するキャラクターがいる
- あるエピソードのキャラクターが別のエピソードに再登場して、更に別のエピソードのキャラクターと絡む展開が多い
- 敵側に協力者がいる (デーヴァダッタにも味方がいる、511キンダーハイム出身者にも味方はいる)
- 主要キャラクターが最終的に集まる場所がある (カトマンズ、ルーエンハイム)
最後になって仲間に合流してくるルンゲは、最後になってカトマンズに合流する西塔小角に近いと言えば近いような気がします。
つまり話をまとめると、なぜMONSTERが18巻という長大シリーズを成立させ得たのかと言えば、最終戦争シリーズと同じような物語構造を持ち込んだからと言えます。
具体的に言えば、多数のキャラクターからなる細切れの小さな物語の集合体です。互いに無関係に思えた物語が最終的に1つの物語を浮かび上がらせます。これはビックリマン的と言ってもよいでしょう。小さな物語のカケラを集めているうちに、そこにより大きな物語を発見してより深く入り込んでいけます。