正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。
ジオン軍が中距離火力支援構想により開発したモビルアーマーとしては、ビグロの他に、MA-04ザクレロもありました。
ビグロが中口径砲を複数搭載していたのに対して、ザクレロは大口径砲を1門だけ搭載するという設計方針の違いがありました。このような、似て非なる機体が同時進行で開発されたのは、ジオン軍内での小型ビーム砲の開発の遅れに原因があります。モビルスーツで運用可能な小型ビーム砲は連邦軍が先んじて実用化し、ジオン軍でもそれを追いかける形で研究開発が進められていました。ビグロが装備するビーム砲とは、まさにそれだったのです。ということは、そのビーム砲開発が転けると、自動的にビグロの開発も転けるという構図になります。
このような状況を回避するために、実績ある艦載砲を1門だけ搭載するモビルアーマーも同時並行で開発すると決められたのでした。
さて、確かにムサイなどの主砲として実績あるビーム砲はありました。しかし、モビルスーツよりもはるかに巨大とは言え、巡洋艦から見ればはるかに小さいモビルアーマーに搭載するように設計された砲ではありませんでした。そのため、エネルギーの伝達や充填、制御機構など、小型の機体に収まるように様々な機器の配置を変更する必要がありました。砲身長も切りつめられ、サイズだけは小さくまとめることができました。
しかし、サイズは小さくなったものの、あちこちに脆弱な部分が剥き出しになってしまいました。特に砲身部分の加速整流器へのエネルギー伝達系のパイプが剥き出しになったのは、実戦では危険すぎる構造でした。
そこで、ザクレロでは、大型の機体内部に砲全体を納め、機体前方に開口部を設けて、そこを通して射撃するような構造が採用されました。
結局、このような紆余曲折のために、本来ビグロよりも迅速かつ確実に完成するはずだったザクレロは、ビグロと同時期に完成することになりました。
完成したザクレロは、砲を発射するための開口部とコクピットの窓が、まるで口と目のように見え、各方面より失笑を買いました。まるで子供向けの漫画のようなセンスのないデザインだと、第1印象の評価は最低でした。
実用試験の結果も、ビグロより大幅に劣るものでした。加速力も機動力もビグロよりも劣っていたのです。
それはある意味で、当然の結果といえました。艦載砲をモビルアーマーに積むというのは、それだけで精一杯。その上で、優れた機動性能を与えるというのは、明らかに無理な注文でした。
その結果、モビルスーツと連携して中距離支援を行うには無理という結論となり、ザクレロはそのまま葬り去られようとしました。
ところが、ひょんなことから、ザクレロは生き返ります。
星一号作戦を発動した連邦軍が送り出した膨大な数の宇宙艦に対抗するには、ジオン宇宙軍はあまりに非力でした。すぐに戦艦や巡洋艦を増産することも不可能です。そこで、足りない艦艇の火力を補うために、まがりなりにも艦載砲を持つザクレロを量産してはどうかというアイデアが出されました。
ザクレロの設計を簡素化し、移動砲台に徹した特殊なモビルアーマーとして生産するというアイデアはすぐに採用されました。これは、MA-04G ザクレロ・ガンボートと称されました。しかし、量産開始の直前に宇宙要塞ソロモンが陥落し、ジオン軍は本土決戦に向けて背水の決戦体制に移行しました。全ての資源は決戦機ゲルググ生産に集中されることになり、本機が量産に移されることはありませんでした。
ア・バオア・クーの戦いには、2機のザクレロ・ガンボート試作機が参加していますが、実際には一度も砲を撃つことなく戦闘は終結しました。大メシぐらいの大型砲のために大量のエネルギーを充填しているうちにア・バオア・クーのどこもかしこも乱戦状態になり、機動性の低いザクレロ・ガンボートは出撃するタイミングを失ってしまったのでした。
なおザクレロの名前は、移動する要素(The Cruising Element)を縮めたものです。要素(Element)とは本来艦を構成する一部であるはずの砲を意味します。砲だけが単独で取り出され移動するということを意味した名前と言えます。
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