2002年04月16日
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ジオン軍小失敗の研究(1) 戦争目的の不一致

Written By: トーノZERO連絡先

 正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。

 1年戦争におけるジオン軍の敗因は、多くの研究者により語られています。しかし、突き詰めていくと、圧倒的に大きな国力のある連邦に戦争を仕掛けたことが敗因と言うことになります。どのような努力を払おうと、連邦の勝ちは変わらないだろうと言えます。つまり、それこそがジオン軍の大失敗であり、そこからは富める者は強いという教訓しか導くことができません。

 しかし、小さな失敗に目を向ければ、話は変わります。十分に改善可能であり、教訓になりうる事例が、ジオン軍の組織の中にいくらでも見いだすことができます。これを1つずつ検証していくことで、現在を生きる我々の糧にできないか。それが「ジオン軍小失敗の研究」というわけです。

 さて、第1回目は「戦争目的の不一致」というテーマを取り上げます。言うまでもなく、ジオンは事実上ザビ家が支配する国家として1年戦争を開始しました。ザビ家とは、デギン、ギレン、キシリア、ドズルの4名を示します。この4名が一致協力することで、ザビ家はジオン国内で絶対的に強力な政治権力を確保していました。

 しかし、この4名は、連邦との戦争は不可避であるという点で一致を見ていたものの、その具体的な内容はといえば、かなり大きな隔たりがありました。開戦までは、この4名は一致協力して準備を進めましたが、緒戦の大勝利の後、決定的に違う方向に目を向けていました。

 デギンは、連邦に対するジオン公国の利権の固定化を意図していました。つまり、小惑星帯の反乱勢力の鎮圧の代償として認められた納税義務の免除と大幅な自治を、反乱勢力の鎮圧後も認めさせるために、デモンストレーション的な実力行使が必要であると考えていました。その意味で、連邦の宇宙艦隊主力を壊滅させたことで、デギンは交渉に必要なカードを既に手に入れており、それ以上の戦争継続は彼にとっては無意味でした。

 ギレンは、ジオン国民こそ選ばれた優良種であるという思想を担ぎ、劣等種族を根絶やしにして、新しい理想郷を築くという思想をバックボーンに持っていました。それが、コロニーに対する毒ガス使用や、コロニー落としの作戦に現れています。しかし、それを本当に心から信じていたかは疑わしく、実際は自分の子飼いのジオン国民を通じて、宇宙と地球に住む人類の上に君臨することが最終目的であったかもしれません。つまり、連邦が降伏すれば、それを受け入れる余地が常に彼にはあったものと思われます。

 キシリアは、ギレンと同じようにジオン国民こそ選ばれた優良種であるという思想を信奉していました。しかし、ギレンと異なり、その思想を方便として捉えず、本当に信じ込んでいた疑いがあります。キシリアは劣等種族を支配することには興味が無く、新しく生まれてくるニュータイプの世を自らの手で用意することを願っていました。つまり、連邦との和平はあり得ず、オールドタイプの人類の殲滅こそが戦争の究極的な目的でした。

 ドズルは、彼らとは異なり、小惑星帯で実績を上げたジオン軍人が連邦においてまったく評価されていないことに義憤を感じていました。ドズルにとっては、ジオン軍人の能力を連邦に知らしめるために開戦に同意したようなものでした。そのため、ドズルの立場から言えば、毒ガス使用や、コロニー落としは納得できるものではありませんでした。ドズルは、連邦がジオン軍の将兵の実力を正当に評価するなら、そこで和平はあり得るものと考えていました。

 このような戦争目的の不一致が、ジオン軍の戦略を迷走させたのは事実と言えます。もし、早期和平を目指すなら、毒ガス使用やコロニー落としは行うべきではなかったと言えます。これらの事件は、ジオンと和平を結んでも、いつもう一度被害を受けるか分からないと言う恐怖心を高め、相手を交渉のテーブルから遠ざけました。逆に、本当にオールドタイプの殲滅を目指すのなら、徹底的に毒ガス、核兵器、コロニー落としなどを継続使用すべきであったと言えます。しかし、ザビ家内の意見の不一致から、どちらの戦略も不徹底となりました。ザビ家の総意としての態度が曖昧な状態のまま戦争は継続されたため、地球上に軍隊を降ろしつつ、再度のコロニー落としを準備するような矛盾行動も見られ、ただでさえ少ないジオンの国力を無駄遣いしたことは間違いないことでしょう。

 せめて開戦前に、この戦争で最終的に何を目指すかの意思統一をザビ家内で行っていれば、より有意義な国力の活用が可能であったでしょう。


ご注意: このコンテンツは、「バーチャルネットライター と~のZERO歳」と呼ばれるサイトに書き込まれた内容を変換して、本サイトに転送したものです。このコンテンツの内容は、「と~のZERO歳」という仮想人格が書いたものという設定であり、謎のアニメ感想家トーノ・ゼロと限りなく近いものの、必ずしも同一人格ではないことをお断りしておきます。

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