2003年06月10日
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物語の体操 みるみる小説が書ける6つのレッスン 大塚英志 朝日文庫

Written By: 川俣 晶連絡先

 この本の面白さは、やはり、後書きで指摘された、物語の作り方を説明したこの本こそが物語であるというメタ構造にあると思います。それから作者が望んでいる「文学というものが本当に存在するかどうか確かめる」という試みにも、実に胸に迫ってくる気持ちを感じることができました。

 内容に関しては、遠野秋彦さんに語らせる方が良いでしょう。この本を投げて渡したら、一気に読み切りました。

 では、遠野さんどうぞ。

 『やは、遠野だ。まず、この本は現実に訳に立つと思った。物語を構築するための構造を分解して構築する訓練は、やる価値があるだろう。いや、時間が取れるものなら自分も基礎体力を付けるためにやる価値があると思ったのだが、「知恵」や「秩序」といったカードに書かれた言葉の意味が明瞭に把握できなかったので、やめておくことにした。遠野としても、古典的な物語の構造を意識的に作品中に持ち込むことはやっているし、それが正しいことだと思っていた。実際、イーネマス!で最初にやったことは、あまりに古くからありがちな構造を骨格に据えたことだったし。だから、この本でオリジナリティに向けられる疑いの視線は、共感する部分がある。実際にはマニュアル化して技術でできる部分というものはあって、それはやる気があれば誰でも修得可能なものだと思うし、完全なオリジナリティなどと言うものがあると思うことも間違いだろう。実際、遠野はアーティストの中にあるセンスやオリジナリティは信じていない。自分も信じていないので、前提条件から理詰めで物語を作っていく方法を取ったりする。そうすると、思いも寄らない何かが出てくることがある。もしオリジナリティなるものがあるとすれば、それはそこから出てくるものだろうと思う』

 『別の話をするなら、文章の書き方を説明することなく、物語の構造を構築する話に終始しているのは、たぶん正しい選択だと思う。実際に、遠野が小説を書く場合、書き始める前に勝負のほとんどは付いているのが経験的真実だ。いくら上手い文章を書いて、良い雰囲気を出しても、骨格の設計がまずいと、書き進めることができずにすぐ挫折してしまう。逆に言えば、文章が下手くそでも、骨格がしっかりできていて、しかも面白い小説は何とか読めてしまうというのも経験的真実だったりする。おそらく、構造がうまく作れるかどうかが、小説家になるための最重要のハードルなのだろう。もっとも、一般人相手の小説ではないとすれば、別の可能性も有り得るかも知れないが。そこは分からない世界なので、何とも言えない』

 『もう1つ付け加えるなら、実際に物語の構造を上手く作るだけで良いのかという問題がある。本の代金分だけ読者を楽しませる水準の物語を作り出すことは、かなりのところまで、技術の問題で解決できるように思う。しかし、本当にそれで良いのか? その段階を目標にして良いのか? ということは遠野には分からない。少なくとも、遠野は、それを書かねばならない熱い内的必然性を持った小説しか書くことができない。そうでなければ、自分が書く必然性を感じられないからだ。他の誰かが書いても同じことだからだ。残された問題は、熱い内的必然性なるものが、マニュアル化できかどうかだ。もし、情熱を駆り立てなくても同等のものを書けるマニュアルが成立しうるなら、実は作家遠野秋彦の存在意義はないのかも知れない』

 『最後にオマケを付け加えるなら。文庫版の後書きに書かれた『物語の体操』は実は『批評の体操』という言葉は重要な意味があると思う。実際、インターネット上には、批評力もないのに批評家気取りで、基礎もできていないのにプロにものを教えるような文章を書く素人があちこちに見受けられる。この本を本当に読むべきなのは、彼らのようなタイプの者達かも知れない。たぶん彼らの大半は読まないだろうけど』

 いや~。厳しいお言葉でした。批判を受けるのは私なのに言いたい放題言ってくれて……。とほほ~。

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2004年01月30日サブカルチャー文学論 大塚英志 朝日新聞社From: 冒険! オータム マガジン

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