SONYがインターネット経由で遠隔地からもリアルタイムでTVなどの視聴が可能な携帯型液晶TV「エアボードLF-X1」という実に興味深い製品を発表したようなので、ついこんな文章を書いてみました。
深夜アニメのビジネスモデル §
数年前から、深夜に放送されるアニメ番組が「深夜アニメ」というジャンルを構成しています。
なぜ深夜かというと、放送料が安いからということらしく、特に深夜ならではのエッチな内容というわけでもありません。
深夜アニメで特徴的なのは、ビジネスモデルです。それは、関東地方でのみ放送し、そこで話題を喚起し、インターネットなどを通じて興味を持った地方のマニアにDVDなどを売りつけるという仕組みなのだそうです。(全部がそうかは分かりませんが)
ここでポイントになるのは、マニアのコミュニティがインターネットを通じてボーダーレスになっているにもかかわらず、テレビ放送は局地的であるというギャップです。これがあって初めて成り立つビジネスモデルと言えます。
では、テレビ放送をグローバルにすることはできないのか。これは可能です。たとえば衛星放送は、日本全国同じ番組が見られます。インターネットで配信されるテレビ番組(厳密にはテレビではないかも知れませんが)というのも、どこでも同じものが見られます。技術的に言えば、局所性があるのはVHFやUHFの地上派放送に限られると言えます。そして、なぜVHFやUHFの地上派放送が局所的であるかといえば、電波の直進性が高く、かつ、電離層で反射して遠くに届かないからです。だったよなぁ、電話級/電信級アマチュア無線従事者免許証を取得したのは20年近く前なので、もはや記憶が曖昧です (汗)
そうえいば、スポラディックE層が発生したときは、遠隔地のテレビ放送が見えたりするんだろうか……。などという話は関係なくて。
今日見つけて、驚いたのは、遠隔地の地上波のテレビを見ることができてしまう手段が製品化され、しかもそれが大家電メーカーのSONYの製品だったということです。
インターネット接続可能なエアボード §
問題の記事はこれです。
エアボードという製品は昔からありました。大ざっぱに言えば、本体と画面が分離できるテレビということになると思います。今回の製品は、本体と画面の間をインターネットで通信可能にした点が画期的です。つまり、インターネットに接続可能な場所に両者を置くことができれば、その間の距離はいくら離れても構わないということです。実際、記事中では実際に大阪の模様を東京のエアボードに映し出すデモが行なわれたと書かれています。つまり、東京の知人の家に本体を置くことができれば、遠く離れた地方から東京のテレビを見ることができてしまいます。
これは、地上波テレビ放送の局所性を前提にしたビジネスモデルへの大胆な挑戦のように思えました。しかも、名もないチャレンジングな海外企業ではなく、SONYブランドで行われたことが、かなりショッキングに思えたのです。
もちろん、画質に限界があるし、ベースステーションと液晶ディスプレイは、1対1で機器認証されるようになっているため、自分の液晶ディスプレイを他人のベースステーションに接続することはできないといった制限が課せられていて、無制限にテレビ放送の局所性を破壊するものではありません。
しかし、それでも無茶で大胆な製品だという気がします。
こんな面白いものを商品化できるダイナミズムがまだ残っていたのかと、SONYを見直しました。
