Windows XP Media Center Editionを起動するのが遅いから、10秒で起動するLinuxベースのOSを作ったぜ、という記事を見かけました。
PCを“ほぼ瞬時に”ブートする新技術
これを読んで、直接関係はありませんが、たかがTVを見るためのパソコンを立ち上がるまで延々と待たされるなどナンセンス、という話を思い出しました。だから、本命は家電なのだ、という話につながったりするわけですが。
この話にはどうも違和感があります。実体験と一致しないように思えます。
それについて書いてみます。
パソコンはブートが遅い §
あなたは、たかがTVを見るためにパソコンをブートする時間を待てますか?
私なら待てません。たぶん、待てる人は、極めて少数派でしょう。
しかし、それをもって、パソコンでTVを見ることが駄目であると断言するのは正しいことなのでしょうか?
でも毎回ブートする必要なんてないんだ §
うちではVAIOの録画パソコン、RXシリーズを使っていますが、もちろんバリバリのパソコンです。
正確に言えば、TVはモニタ内蔵チューナーで見てしまうことが多いので、パソコンでTVを見ているとは言い難い状況ですが。見るとしても、待ち時間は気になりません。
なぜかと言えば、パソコンは常にスタンバイ状態になっているからです (録画スタンバイ状態だから、ある意味で当然)。いちいち、ブートはしません。もっと新しい世代の製品なら休止モードでも行けるでしょう。これなら、ほぼ完全に電源が切れるので、消費電力もかなり小さくなるはずです。
実際、録画した番組を見るために、日常的にスタンバイから復帰させていますが、耐え難い程遅いということはありません。
その点から考えれば、パソコンをブートするのが遅いというという1点を取り上げて、パソコンでTVを見ることが実用的ではないかのような主張には首をかしげます。
フロントパネルの電源スイッチを押してスタンバイから復帰させて、リモコンでTVソフトを立ち上げて、そのまま全ての操作をリモコンでやれば、さして面倒なことにもならない感じです。
もちろん、TVを見ることだけが目的なら、パソコンを使うのは無駄 §
もちろん、TVを見ることだけが目的なら、パソコンを使うのは無駄の極みです。普通のテレビを買ってくれば、もっと安く、もっと楽にTVを見られます。
しかし、何かの特別な事情がある場合、たとえば、テレビとパソコンを両方置くためのスペースがないとか、VAIOのような録画パソコンでTVを見るだけでなく録画データも見る場合などを想定した場合、パソコンでTVを見るという選択が非現実的であるほど使いにくいものであるとは思えません。
とりあえず乱暴に一般論として要約すると §
パソコンは、常時使えるように起動しておくのが基本。いちいち、電源を入れてコールド状態から起動するのは、パソコンを不必要に不便化しているだけのこと。
とはいえ、騒音や消費電力などが気になる場合もあるでしょう。その時は、スタンバイや休止を活用。
今時のパソコンは、休止モードに入れれば、ほぼ完全に電源が切れて、しかも作業途中の状態にすぐ復帰できます。メモリが多いとHDDへの読み書きで待たされますが、システムが新しくなるとそれも速くなります。
ですので、パソコンをコールド状態からブートする方法しか知らないからといって、そういうものだと決めつけないことが必要です。
また、パソコンも進化しています。たとえば、Windows 2000とWindows XPを比較すると、休止モードの速度、安定性なども向上しているので、古いパソコンで何の問題もない、などと決めつけないことも必要です。Windows 2000で休止モードの利用に難があったケースでも、Windows XPなら問題ないこともあります。
余談1・故近沢隆光氏の思い出 §
かつて、1980年代後半ぐらいの時期に、故近沢隆光氏がこんなことを言っていました。
「パソコンって便利なんですよね、と言いながら電源を入れる奴は何も分かってない。電源はずっと入っていて当然。すぐ使えないといけない」
余談2・レドモンドの思い出 §
レドモンドのMSHQに行ったとき、既に帰ってしまった社員のパソコンの電源がみな入ったままになっていて、スクリーンセーバーが走っていたのが印象深い思い出です。使い勝手から言えば、電源は入れっぱなしが当然という割り切りがあるのでしょうね。資源の節約には貢献しませんが、だからこそ、パソコンの省電力機能が進化し続けているのだ、とも言えますね。つまり、省電力機能とは、バッテリの駆動時間を延ばすためだけでなく、電源がずっと入っているデスクトップパソコンの省電力という側面があるようです。