2004年5月27日から28日にかけて、以下のイベントが行われました。
これは、今現在、この世でいちばん面白いと思うイベントです。
これまで、京都とIBM大和で交互に行われています。京都は遠すぎますが、せめてIBM大和でやっているときぐらいは参加しようと思い、頑張って第2回と第4回の1日目だけ行ってきました。
第2回は1日だけでしたが、第4回は2日間に渡り、両日参加することはできませんでした。しかし、1日目だけの参加でも、とても有意義でした。
どういうイベントか §
XML関係の研究者が集まって発表を行うものです。
基本的に、学術的な研究者の集まりですので、ここで行われることを適切に理解して把握するには、それなりの基礎的な素養が必要です。少なくとも一般の開発者が知らないことも多いような情報工学の基礎的な用語が説明されることなく飛び交う場だということは言えます。
XML開発者の日のような、基本的に誰が来ても楽しめるイベントとは全く違う性格のものであり、XML開発者の日が行われない埋め合わせとして行くようなものではありません。
とりあえず、本来は私のような人間が行くべき場ではないと思いますが、面白いのでお願いして入れさせてもらっています。
なぜ面白いと思うのか §
なぜこれが面白いと思うのか?
その理由は、リアリティの問題にあります。
いわゆるビジネスピープルが無責任に放言するXMLの未来像、たとえばBtoBであったり、Webサービスであったり、SOAであったり、そういうものは「物語」としての整合性と説得力を持っているだけで、具体的に実現するための実像に乏しく、しかも語られる物語の枠組みそのものは泣けてくるほど古いものです。これらは、未来の夢、未来の希望を見るには全く不適切なものです。
それに対して、このイベントで語られる内容は学術的です。学術的であるというのは、説得力があるだけでは認められないことを意味します。様々な批判的な検証を経なければ認められない世界です。そのため、発表者は批判に耐えるだけの手順や形式を踏まえねばなりません。ただ単に、誰もが納得してくれる、というだけでは駄目です。一方で、聞く側も、そのような手順と形式を理解した上で、正しくリアクションしなければなりません。批判もまた、言葉で納得させるだけは不十分になります。
このような対比からすれば、どちらがよりリアリティのある内容を語っているかは明らかだと思います。
もし、そうであれば、学術的な意見の方が主流になりそうなものですが、実際にはそうではありません。なぜなら、厳密さを高めるためには、様々な知的ツールの援用を必要としますが、それは基礎訓練を必要とするものだからです。
そのため、多くの人は、ビジネスピープルの放言の方にリアリティを感じます。
それが世の中の大勢というものです。
しかし、その大勢に逆らって、あえて学術的な場から未来への希望を見て取る行為こそ、実に面白いと思うわけです。
内容 §
1日目には以下の発表を聞きいたと思います。
純作用型XMLカーソル 稲葉 一浩 (東京大学) §
XML文書にアクセスする方法として、特殊なカーソルを使う方法でした。
カーソル位置の上位と下位でデータを分けてしまうもので、元の文書は一切変更しない、という特徴がありました。
具体的に何に使えるのか突っ込み切れていないところがあるように感じられましたが、面白い内容でした。
非バックトラック・トップダウン式ツリーオートマトン包含判定アルゴリズム 須田 忠宏 (東京大学) §
すみません。良く分からなかったためか、あまり記憶に残っていません。
Deriving XML Stream Processors from XSLT programs 中野 圭介 (東京大学) §
XML文書は、文書を全て解析してツリーなどを作るDOM的な方法と、ストリームから読みながら解析する方法があります。XSLTの変換スクリプトを、ストリームで処理可能な形式に変化するという研究でした。まだ制限がありますが、上手く行けばXSLT処理のスピードアップにつながるかもしれません。
WebサービスとWebサービスセキュリティの逐次処理による軽量実装 寺口 正義 (日本IBM東京基礎研)山口 裕美 (日本IBM東京基礎研)西海 聡子 (日本IBM東京基礎研)伊藤 貴之 (日本IBM東京基礎研) §
Webサービスは重いから、取得したデータをキャッシュしておこう、という内容でした。その際、できるだけオーバーヘッドを減らすために、アプリケーションオブジェクトのレベルでキャッシュすると良い、という話でした。また、オブジェクトは変更される可能性があるので、ただオブジェクトを保存しておくだけでは不十分と言うことでした。
Schemas as types, reconsidered 村田 真 (日本IBM東京基礎研) §
RELAX NGの開発者の一人がXML Schemaを暗に想定して吠える内容でした。
質疑応答時間に、かなりずっこけさせるような意見を述べてすみませんでした。