2004年08月18日
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Linuxの真の普及率とは? 海賊版Windowsに即座に置き換えられるプレインストールLinux?

Written By: 川俣 晶連絡先

オープンソースの未来について悩む §

 最近、オープンソースの未来について真剣に考えこんでしまっています。

 まず、オープンソースという思想そのものの怪しさというものが、「頭で考える理屈」のレベルで出ていたわけです。しかし、この手の話は、ある製品が普及するにあたって、さして重要な話ではありません。要するに、一定の満足感が得られた上で安ければ、それだけで普及する訳であって、そこで思想など大した意味を持ちません。

 しかし、いろいろな事情から実際に話題のオープンソースのソフトを動かしてみると、実はユーザーが期待する最低限の満足感を与えられないのではないか、という気がしてきました。詳細をくどくど書いてもしょうがないので略しますが、ソフト動作可能にするだけで、Windowsで同じことを行う何倍もの時間を取られ、しかも一般ユーザーにはちょっと敷居が高いと思われるトラブル対処も必要とされました。確かに、SUSE Linuxなどはインストールすると綺麗なGUIや様々なアプリが付いてきて、一見してWindowsのライバルのように見えますが、目立たない基礎体力の部分はかなり脆弱という印象です。

 そこから考えると、世間とマスコミがいかにオープンソースをもてはやそうと、一般ユーザーはオープンソースブームに踊れないのではないか。踊りたくても、ハードルが高くて踊れないのではないか、という気がしてきました。もちろん、インストールの問題はプレインストールマシンがあれば解決しますが、それが問題の全てというわけではありません。

ユーザーはWindowsの方に価値を見出している? §

 そんな状況で読んだのが以下の記事です。

パソコンOSシェア:2位はマックではなくリナックス?

 上記記事より引用

 ガートナー社のアナリスト、アネット・ジャンプ氏は、4日に公表された報告書の中で、「中国やロシア、中南米のような新興市場では、地元で組み立てられた数多くのパソコンがOSなしで、あるいはリナックスと共に売られている」と述べている。「これらのパソコンの90%~95%には、購入後数日のうちに米マイクロソフト社のウィンドウズの海賊版がインストールされる」

 仮に、この指摘が正しいとすると、かなり悩ましいことになります。

 海賊版だって無料ではないでしょう。それなのに、LinuxプレインストールマシンのLinuxを消して、別途買ったWindowsを入れていると言うことは、彼らは海賊版の価格を加味してすら、LinuxよりWindowsの方が良いと考えていると言うことでしょうね。

 まあ、実際に使ってみると、ユーザーがそう思うのももっともだと思いますが。

 もし、一般ユーザーにアピールしないとなると、Linuxのユーザー層は「ブランドに忠実な顧客層」となります。これは、この記事の見出しに「Linuxの未来は市場におけるMacintoshのライバル」に含まれるキーワード、Macintoshのユーザー層と性質が似ることになります。(少なくとも、自らが信奉するOSを絶対に正しく世間に普及させるべきであるという強固な信念を持ち、周囲がまるで見えなくなっていることに当人達が気付いていない、というよくある状況には類似性が見られます)

未来予測 §

 仮に、Linux(あるいはオープンソース)が、Macintoshのパターンをトレースしていくとすると、Macintoshの辿った歴史を繰り返す可能性があります。

 Macintoshの場合、世間に大きなブームを引き起こした後、多くのビジネスユーザーがどっとMacintoshの世界に流れ込んできました。しかし、実際に業務に耐えるものではないと分かると、さっと潮が引くように彼らは去っていき、最終的にブランドに忠実なユーザーだけが残ったという感じになると思います。もちろん、印刷業界など、Macintoshがデファクトスタンダードになった世界はあり、そこではMacintoshは強いブランド力を維持しました。しかし、それは特定業界だけの例外的な傾向であり、多数派のユーザーはWindowsに流れました。その後、iMacのようなヒット商品が生まれましたが、ユーザーからは「WindowsのiMacがあればいいのに」といった声が聞こえ、デザイン力によるヒットであって、パソコンとしてのヒットとは必ずしも言えない状況を残しています。

 これを同じようなパターンをLinux(あるいはオープンソース)が辿るとすると、現在、上記のストーリーのどの段階にあるでしょうか。おそらく、そろそろビジネスユーザーが引き始めた、という段階に当たるのではないかと思います。Macintoshのブームの時には、Windowsという明確なライバルが出現して、ユーザー層を連れ去った感じがあるため、一気に注目度が下がった感じがあります。しかし、Linuxに対してそのような強力なライバルが出てくるような状況ではないため、一気に注目度が下がることはないような気がします。しかし、注目度の低下傾向は、しばしばマスコミの報道などに感じられます。また、WIRED NEWSまでが、このようにLinuxに否定的なニュアンスを持つ記事を載せるようになったことが、(根拠はありませんが)ブームの旬が過ぎたような気分にさせます。

更にその先は? §

 このシナリオの通りに進むとすれば、その後Linuxはいろいろな意味でMacintoshの後継者としてシェア2位を占めるようになり、そこで忠実なブランドの信奉者の支持を得て、長期的に安定してシェア2位を維持することになりるのでしょう。しかし、いかに信奉者が声を枯らしてLinuxの素晴らしさを訴えても、圧倒的大多数ユーザーはLinuxを使うことはないという状況が続きます。Macintoshでデザイン、印刷業界が聖域として残ったように、インターネットサーバやスーパーコンピュータなどの領域で、圧倒的にLinuxが強いという聖域が残る可能性も考えられますが、聖域はそれに特化した聖域と化して、そこを起点にしてシェアを拡大するような形にはならないことが予想されます。

 以上の予想は、あくまで予測であって、当たると考えるのはとても甘いと思います。未来は常に不定であって、人に見通せるものではありません。とはいえ、Linux(あるいはオープンソース)の未来として、完全勝利でも完全敗北でもない、シェア2位安定というMacintoshスタイルの未来があり得るというビジョンはとても悩ましいですね。

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